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〈22〉 漱石帰朝そして五高辞職

最終更新日:2023年4月1日
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留学始末書

〈22〉 漱石帰朝そして五高辞職

  明治35(1902)年12月5日、漱石は、2年間のロンドン留学を終え、日本に向かう船に乗ります。長崎に寄港したのが1月20日。22日長崎を出港して23日神戸に上陸、24日には東京に着きました。


 五高に残る「留学始末書」(文部大臣宛に出す留学の報告書)は1月26日の日付で提出されたものですが、そこには「一月二十日長崎港着同二十一日熊本着」とあります。また、五高の「職員出欠調」にも「二十一日帰校」と記されています。長崎到着から出発まで2日半あります。その間、これらの書類にあるように五高に帰校したのかどうか、いまだ確証はありません。


 帰朝した漱石を待ち受けていたのは、生活の立て直しでした。留守家族には月々25円の支給がありましたが、それでは到底足りず、鏡子の実家の援助を当てにしていたのですが、鏡子の父・中根重一は事業に失敗し、負債を抱える始末。鏡子は着物も布団も着破って漱石の着物を女物に仕立て直して着ていたそうです。家は畳替えもできず、荒れ放題でした。むろん、熊本に帰れば以前と同じ生活が保障されていました。しかし、東京を離れて西へ、西へと住居を移し、およそ8年経っていました。


 友人たちの多くは東京に集まっており、漱石が熊本に帰りたくなかったのも無理はありません。漱石は、ロンドンから友人たちに向けて、東京で職を見つけてほしいと頼んでいました。しかも漱石はロンドンで、「英文学」とは何か、という壮大な研究に取りかかっていました。精神をすり減らしてひたすら研究に打ち込んできた漱石は、できればそうした生活を続けたかったのでしょう。


 第一高等学校の校長だった狩野亨吉は、一高講師として招こうとしますが、五高への義理もあり、すぐに一高に呼ぶのは不都合だとして、東京帝国大学の講師の口を世話します。しかし、五高でもなかなか漱石を手放したがらず、漱石の五高辞任は3月まで決まらなかったようです。3月9日、菅虎雄に宛てた手紙で漱石は「熊本の方愈辞職と事きまり候」と報告しています。


 辞職願が3月14日提出され、31日をもって退職となりました。明治29(1896)年4月に赴任してから丸6年たっていました。五高では漱石の後任人事を急ぎ、3月24日に神奈川県第一中学校の教諭だった名須川良を五高教授として任命するよう文部省に願い出ています。漱石の退職後、できるだけ早く任用してほしいと訴えたのですが、少々遅れ4月7日に辞令が下りました。五高の校長はすでに桜井房記に代わっていましたが、漱石がいかに五高で必要とされたかがわかります。


 4月30日、五高在職6年以上で退職したため、年俸の3か月分、300円が漱石に支払われました。これが家計に苦しんでいた夏目家を助けることになったのはまちがいありません。東京での新しい生活が始まりました。

 

                                 (くまもと漱石倶楽部会員・熊本大学五高記念館客員准教授 村田 由美)

                                 

留学始末書

留学始末書(熊本大学五高記念館所蔵)


 

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