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〈12〉漱石、ボートを漕ぐ

最終更新日:2023年4月1日
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大正13年頃の江津湖でのボートレース

〈12〉漱石、ボートを漕ぐ

 明治30年(1897)2月16日の「九州日日新聞」に「画湖の短艇競漕」と題する記事が掲載されています。そこには、五高のボートレースの勝利者の名前が書いてあって、その中に夏目金之助の名前が挙がっています。漱石が、2月14日に行われたボートレースの中の職員の部で大差をつけて勝ったという記事です。


 当時の画図橋下流竹島と江津村の間600メートルを往復する1200メートルの航程で、レースは午前11時に開催。午後3時45分まで、11レース行われました。漱石が出たのは第7レース。群衆およそ400人が両岸に立ち並び、あるいは舟を出して観戦し、大変な賑わいでした。


 意外に知られていませんが、漱石は五高短艇部の部長だったのです。ちょうど29年8月に前任の大幸勇吉が転任したため、その後を引き受けました。漱石が、学生時代、夏になると毎日のように水泳場に通い、友人たちと「ブラック・クラブ」というグループを作ってボートを漕いでいたことを、同級生であった太田達人が回想しています(「予備門時代の漱石」)。ボートを漕ぐことは漱石にとって得意なことだったのです。


 短艇部では、このボートレースの前、1月4日から筑紫近海を航海するという初めての遠航が行われています。これは校長・部長の許可を得なければなりませんから、漱石が部長として許可したはずです。さらに5月にはこの短艇部拡張のために、生徒の保護者から寄付金を募る文書も出しています。


 しかし、この短艇部部長の期間はわずか1年でした。漱石の同級生でもあり、同僚でもあった篠本二郎の回想によると、その原因は政府払い下げの2艘のボートを佐世保で修理し、熊本まで運んでくる際、生徒が百円の赤字を出したことにあるそうです。その中心的な人物の日頃の行いがよくなかったため、職員の誰もが相手にしなかったというのです(「五高時代の夏目君」)。漱石は、父親が亡くなったため、鏡子夫人と上京中の出来事でした。


 漱石がこのことを知ったのは新学期になってからのことでしょう。篠本によると、事情を知った漱石が、一言の愚痴も言わずすべて弁償し、部長を辞任したというのです。篠本は漱石の「責任を重んずる点と思ひ切りの良い」例は、ほかにもたくさんあったが常人とはちょっと変わっていたとも述べています。


 漱石は、教室ではなかなか厳しい先生でしたが、生徒のこのような点に関しては意外に寛大でした。大江村の家でも、坪井の家でも、金銭的に苦しい生徒を家において面倒を見ましたが、生徒がほかの生徒を連れてきて飲んだり食べたりしても怒ることはなかったと言います。漱石と深い関わりを持った生徒ほど、人柄の温かさを感じたようです。
                              (くまもと漱石倶楽部会員・熊本大学五高記念館客員准教授 村田 由美)

 

大正13年頃の江津湖でのボートレース
                   大正13年頃の江津湖でのボートレース(五高記念館所蔵)    


 

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