熊本市動物愛護センターには、市民の皆さんから、猫に関する様々な相談が寄せられています。
その多くは、飼い主のいない猫(以下「ノラ猫」という)に関する相談です。無責任なエサやりによるノラ猫の急増が原因となることが多く、猫のフン尿やいたずらによる周辺環境の悪化に困っている方と猫のお世話をしたい方との間で、近隣トラブルが深刻化することがあります。
このようなノラ猫問題解決のための方法として、「TNR活動」「地域猫活動」といった活動があります。
TNR活動
TNR活動とは、捕獲して(Trap)不妊去勢手術をしてサクラ耳カット(Neuter)元の場所に戻す(Return)活動のことです。
ノラ猫の不妊去勢手術を行うことで、猫の数が爆発的に増加するのを防ぐことができます。それによって、発情による鳴き声、フン尿被害を軽減することができたり、病気や交通事故で命を失う猫を減らすことができます。
不妊去勢手術が済んだ猫は、手術済みの目印として、耳先をさくらの花びらの形(V字形)にします。目印があることにより、同じ猫が再度捕獲されて、手術をされてしまうことを防ぐことができます。一見痛そうに見えますが、麻酔が効いている間にカットと止血の処置をし、手術後の出血もほとんどありません。
注意点:猫を捕まえる際に使用する捕獲器の設置は、設置場所の管理者の許可が必要です。また、捕獲対象の猫が飼い猫ではないことを十分に確認する必要があります。
地域猫活動
地域住民でノラ猫による困りごとを解決し、「住みよいまち」を作るための活動です。ノラ猫問題を地域の環境問題として捉え、住民同士が話し合い、活動することで、環境美化だけでなく、地域コミュニケーションの活性化により住民トラブルの解決につながることが期待できます。
具体的には、不妊去勢手術をして、これ以上猫が増えないようにするとともに、トイレの設置、エサやり・清掃などのルールや役割分担を地域で決め、活動します。これらの取り組みにより、フン尿・いたずらなどの被害が軽減されることが期待できます。
TNR活動と地域猫活動の違い
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TNR活動
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地域猫活動
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目的
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ノラ猫を増やさないこと
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ノラ猫をめぐる住民トラブルを解決すること(「ノラ猫ゼロ」ではなく、「ノラ猫による困りごとゼロ」を目指す)
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メリット
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個人でもすぐに実行できるので、爆発的な数の増加防止に効果的
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地域全体で活動することで、環境美化や地域コミュニケーションの活性化につながる
ノラ猫の数や生息場所などの情報を地域全体で共有できるため、迅速に困り事への対応ができるようになる
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デメリット
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費用や労力の面から、個人でできる活動には限りがある
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住民の了承や、ルール決め・活動者の確保に時間がかかることが多い
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活動にかかる期間
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短期的
(個人などが単発的に行う活動のため)
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長期的
(地域住民が継続的に見守る活動のため)
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不妊去勢手術の必要性
猫は生後約6か月で性成熟して、繁殖できるようになります。メス猫は、年に約3回、約3か月の間隔で発情します。1回の出産で3~8頭(平均5頭)もの子猫を産むため、不妊去勢手術をしないと、1組の猫から1年で20頭以上、2年で80頭以上に増える計算になります。
ノラ猫のお世話をしている方へ
猫にただエサをあげるだけになっていませんか?「お腹をすかせた猫を助けたい」という思い自体は、優しい気持ちであり、決して悪いことではないでしょう。
しかし、エサをもらっている猫は、栄養状態が良くなり、子猫をたくさん産むようになります。その結果、狭い地域で猫が密集し、病気をもらったり、交通事故にあったりする危険性が高くなります。
また、その猫たちのフン尿やいたずら、夜中の鳴き声などで近所に迷惑をかけてしまうと、猫が嫌われる原因になってしまいます。
お世話をする場合は、無責任なエサやりになっていないか、近所に迷惑をかけていないか、以下について確認してみましょう。
▢エサをあげることについて近隣の理解を得ている
▢道路上や他人の土地など、不適切な場所でエサやりをしていない
▢トイレの場所を作っている(自分の敷地内にトイレになるような場所を複数作ることで、他人の土地での排泄の機会を減らす)
▢エサやりのルールを決めている(エサを与える場所、時間、置きエサはしないこと等)
▢エサやフンの掃除等をし、周辺環境の悪化を防いでいる
▢不妊去勢手術を受けさせている(これ以上猫が増えないようにする)
▢ノラ猫の新しい飼い主を探す取り組みをしている
すべてにチェックがつかない方は、猫のお世話の方法を見直しましょう。
猫を飼っている方へ
飼い猫を外に出したり、外で飼ってはいませんか?「近所の飼い猫が敷地内にフン尿をする、いたずらをして車や家を傷つけられて困っている」などの相談が増加しています。これらは、飼い主の責任ある飼い方で改善できます。無責任な飼い方では近隣の方に迷惑をかけるだけでなく、動物虐待を誘発したり、大切な飼い猫を交通事故や病気の危険にさらしてしまうことになります。また、飼い主が知らない所で繁殖することにより、ノラ猫を増やしている可能性もあります。
飼い主としての責任を自覚し、近所に迷惑をかけていないか確認してみましょう。
▢完全屋内飼育をしている(庭やベランダにも出さない)
▢不妊去勢手術を受けさせている
▢首輪や迷子札、マイクロチップを装着している
▢適切に管理できる頭数を飼っている
▢最期まで大切に面倒をみる覚悟がある
すべてにチェックがつかない方は、猫の飼い方を見直しましょう。
最後に
熊本市にはノラ猫で困っている方から、猫を処分してほしい、遠くに連れて行っていいか、などの相談が多く寄せられます。
過去には、熊本市でも、市民が持ち込んだ猫を引き取り、止むを得ず殺処分をしていましたが、一時的にノラ猫の数が減っても無責任にお世話をする人がいる限り、また猫が増えてしまい、根本的な解決にはなりませんでした。
現在熊本市では、自活可能なノラ猫の引取りは行っていません。ノラ猫問題解決のためには、猫自体を排除するのではなく、人が猫との正しい関わり方を考えることが重要です。ノラ猫のお世話をしている方、猫を飼っている方は、今の方法で本当に猫が幸せになれるのか、近所に迷惑をかけていないか、考えてみましょう。
なお、動物愛護管理法で、猫は「愛護動物」とされており、捨てることや遠くに連れて行くことは遺棄にあたる可能性があり、遺棄は犯罪です。困っている方は、まず追い払い方法などを試してみましょう。→https://www.city.kumamoto.jp/doubutuaigo/hpKiji/pub/detail.aspx?c_id=5&id=41231&class_set_id=23&class_id=3602
猫に関するご相談がありましたら、熊本市動物愛護センターまでご連絡ください。