【記者】今回の予算案では、子育て世帯の負担軽減や子どもを核としたまちづくりを大きく打ち出されていますが、その理由を教えてください。
【市長】私の3期目のマニフェストでも重点的な項目ということで掲げておりましたので、そこに向けての予算を重点配分したということです。特に、新年度からこども局を設置し、こども施策に関する予算を非常に充実・拡充させるということで取り組んでおります。前年度から11億円の増加となります552億円を(こども局の関連予算として)計上しております。子育て世帯も含めて、子どもへの様々な支援というものが、働き盛りの皆さん方のいろいろな環境、特に現在は物価も高騰しており、経済的な支援に対する要望が非常に強かったということもありますが、国においても、こういった若い世代の皆さんへの支援を強化し、非常に深刻な少子化・人口減少を何とか食い止めていきたいという非常に強い危機感を持った政策をこれから実行されようしておられます。それに先立ちまして、全国の各自治体でも(様々な取り組みがなされており、)兵庫県明石市の泉市長も非常に熱心に取り組んでおられますが、こうした事例で分かるように、住民の皆さんからのニーズも非常に高いものがございます。ここに予算を投入していくということで、熊本市は子育てのしやすい自治体だということを改めて皆さんに認識していただけるようにすることによって、働く若い世代の皆さん方、例えば、熊本市に今お住まいの方、それから新たに転居・移住をされる方々などに対しても大きなインセンティブになるだろうと思っています。また、近隣の市町村の子ども支援施策は、(例えば、子ども医療費助成については、)これまで、熊本市は中学校3年生までが助成対象なのですが、(近隣の市町村では)高校3年生まで支援をされている自治体が多く、こういった自治体間の格差(の是正を目指し)、完全に無料ということには至っておりませんが、今回調剤の負担額を無料化したり、高校3年生までを助成対象としたりすることで、熊本市としてもかなり拡充しております。予算も相当な規模に上るということですので、この点については積極的に力を入れたということをぜひ市民の皆さんにもご理解いただきたいと思います。そして、皆さんの非常に大きな期待感がありますので、これから出生数の減少や少子化への対応と、それがさらに地域の活性化に繋がっていき、働く人たちが熊本で充実した生活を送ることができるということ、また、未来に希望ある若い子どもたちの世代において今貧困やいろいろな問題が取り沙汰されている中で、社会で子どもたちを育てていくという強いメッセージを熊本市はこれからさらに発信していくことによって、この地域社会というものがより充実したものになるのではないかと考えております。特にこども施策に関しては重点化し、充実させたということです。まだ、これからスタートということですので、またいろいろな他の項目についても、マニフェストに掲げておりますので、これらの実現に向けて引き続き努力していきたいと考えております。
【記者】DXの推進に力を入れているなという印象を受けたのですが、この点に関してのご説明をお願いいたします。
【市長】DXの推進については皆さんも御承知のとおり、これまで私たちもいろいろなデジタル化の取組というものをやってきました。例えば、記者会見では、私が就任した頃は全部紙でやり取りを行っておりました。分厚い想定問答を作り、そして報道機関の皆さんとやり取りをしていました。皆さんにも、山のように資料が配られており、そこには、それを印刷する人、資料を作成する人、配る人といったいろいろな人手がかかっていました。こういったことは、新しいツールを活用することによって、もっと効率的に、また、本質的な仕事に集中できるようになるのではないかという、ある意味ではビジネスプロセス・リエンジニアリング(に通じる取組で)、仕事のやり方を変えていき生産性を高めていこう、より良い仕事ができるようにしようということが非常に重要だということで、私も市長に就任してからかなり積極的に取り組んでまいりました。
今後こうした資料(お手元に配付した資料等々)も含めて、報道機関の皆さんもパソコンでいろいろな記事を書かれていますが、こういった素材が使いやすいように報道機関の皆さんにも、リアルタイムで提供していくということも考えていくべきだろうと私は思っています。それが可能になることによって、より早く(情報提供ができるとともに)熊本市の作成した資料を活用していただきながら、効果的に皆さんに熊本市政のあり方をお伝えすることができると考えますと、このデジタル化という動きは、これからいろいろ進んでまいりますが、行政のあり方を根本的に見直す大きな良いきっかけになると思っています。
窓口に関しても、私が市長に就任してから窓口改革を掲げ相当取り組んできました。これはアナログなやり方を(変えていく、例えば、)書き方ガイドの型をつくったり、事務処理の効率性のために人の配置を変えたりといろいろなことを行い、繁忙期に窓口に数時間並んでいたものを数十分程度まで抑えることができました。ただ、何より、例えばそういった手続でも、これから全国各自治体でのデジタル化が進み、また、マイナンバーも普及していきますと、もっと簡潔なシステムを提供することによって、市民の皆さんの利便性が非常に高くなり、市民の皆さんにお時間をとらせることなく様々な手続ができるようになると考えています。そのことによって、市民の皆さんの利益に繋がり、それ以上に今度は行政が効率化していきますので、そこで生み出された人員・リソースをもっと人手が必要なところに振り分けていくことができます。これは行政の生産性の向上に非常にプラスになると思っております。本市では、既にデジタル部を新設しておりますが、その取組をさらに加速化させるために、こういった形であらゆる申請手続を電子化させていき、また、申請等のキャッシュレス化を推進していくために必要な事業をかなり盛り込んだ内容となっています。
一方で、マイナカードをお持ちでない方や、あるいはスマートフォンでの手続きに慣れてない方々も多くいらっしゃいますので、そういった方々も不利益を被らないように、しっかりサポートしていく体制をとっていきます。(申請手続きの電子化等により)省力化ができれば、(電子での手続きに慣れてない方々を)アシストするような人たちがしっかりサポートすることも可能になって、より全体の対応力が増していくということになりますので、こういった新しいツールを上手に賢く使うということが、デジタルトランスフォーメーションの真髄だろうと私は思いますので、こういった形で進めていきたいと思っています。
【記者】マスクの着用について伺います。国は、卒業式等において児童・生徒及び教職員はマスクを基本的には着用せず、また3月13日からは屋内外を問わず個人の判断に委ねるといった方針も出ています。これまでのマスク着用を前提とした生活スタイルが少し変わってくるような印象もあるのですが、この点について、市長のお考えをお聞かせください。
【市長】マスクについては、全体的に緩和しようというような動きがあります。医学的に、また、感染予防のために効果的であると思われるところに関しては、政府も推奨するということで、明確に対応しようということになっています。マスクについての考え方は、人それぞれだと思います。今は、相手に対しての配慮ということで着けておられる方もいらっしゃいますし、自分の感染予防のために着けておられる方もいらっしゃいます。したがって、これは、皆さんのいろいろな考え方のもとで尊重されるべきだと思っています。
ただ、いつでもどこでも着けていれば良い、あるいはどこででも外して良いということではなく、感染状況や場面に応じて皆さんがご判断されるということをより尊重する社会になると考えれば良いのではないかと思っています。新型コロナ感染症の流行前の状況を考えますと、例えば、冬にインフルエンザや風邪が流行している時期で咳込む場合には、皆さんエチケットとしてマスクを着けておられました。私は口の中が非常に乾燥するものですから、移動中の飛行機の中などではできるだけマスクを着用したりと、いろいろな場面によって適宜対応しています。
これから、お子さんたちの卒業式等の時期に、ある程度距離が離れていて、一定程度の感染が抑制されるということであれば、国のいろいろな対処方針の中で、それらを参考にしながら、現場で状況に応じて考えていくということが、非常に重要かと思います。したがって、3月の中旬以降は他者への配慮と同時に、そういった比較的自由に緩やかに対応していただくことで、マスクをする・しないで対立を生むようなことがないように、本市としても、例えば学校現場や地域の集まりといったところでも、注意喚起の仕方やアナウンスの仕方については、十分に丁寧な説明をする必要があると考えております。
【記者】10分・20分構想について伺います。新年度予算に検討経費を計上されていますが、今後どのように進めていきたいかをお聞かせください。
【市長】10分・20分構想については、既に国・県・市が連携してこれまで取り組んでまいりましたが、いよいよ実現に向けての具体的な方向性を検討する第一歩が、新年度だと思っております。特に概略ルートや構造案といったより具体的な検討熟度を高めていくことによって、市民の皆さんからいろいろなご意見をいただきながら、将来どういった道路が皆さんにとって有効なのかということを検討し、また、ルートについてもいろいろな話があると思いますので、皆さん方のご要望やご意見を聞きながら、多くの皆さんに「このルートだと将来にとって非常に明るいものになるな」と思っていただけるようなものにしていきたいと思っています。そのためにも市民の皆さん、企業の皆さんや有識者の皆さん方のご意見をしっかり伺いながら進めていきたいと考えております。これは、県も市も一緒に調査予算をつけておりますので、そういった中で一緒に取り組んでいきたいと思っています。県とも十分な調整を現在行っているところであり、人事交流もしておりますので、これは極めてスムーズに展開していけるのではないかと思います。
また、ルートについていろいろご関心があるのではないかと思います。報道等でも、20を超えるルート案が浮上しているということで、私も承知しておりませんでした。報道を見てルート案の数を知りました。要は、今事務局で相当いろいろな検討をしているということだと思います。私も、まだ詳細を個別には聞いておりませんが、これから幅広く検討していくということで、(ルート案は)この計画において一番関心が高い事項だと思います。例えば、今既に渋滞しているところに高架を作るとなると、その間の渋滞がもっとひどくなるのではないかといったいろいろな不安の声もあると思いますので、そういったことに対してきちんとお答えして、先々の見通しをつけていくといった検討をできるだけ広く行うことによって、熟度が高まっていくと思います。そうすると多くの方が利用されますので、例えば、「有料道路制度の活用を選択した場合には、特に費用対効果が大きく出るようなルートはこういったものだろう」といった検討結果も出てくると思いますので、早く検討していけば道路の完成は早くなっていき、また、その分メリットも大きくなってきますので、しっかりやっていきたいと思います。
有料道路制度の活用を念頭に入れるということは、私のマニフェストでも既に掲げており、また、そういった手法についても具体的に協議を始めております。この点については、財源確保の面からも非常に優位であるということ、それから道路の完成が早く見込めるということ、そして、利用する人が恩恵を受ける仕組みであって、なおかつ利用する人がきちんとその分のお金を払うという受益者負担の原則に基づきますので、非常に有効な手法ではないかと考えております。しっかりスピーディーに取り組んでいきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【記者】ルートの公表に関して、発表時期や目標などはありますか。
【市長】今申し上げましたとおり、私はまだルート案も見ておりませんので、まだこれからというところです。ルート案をお示しすると、(各方面から)賛成や反対、別のルート案などの様々なご意見が出てくると思いますので、よく精査してから公表するべきだろうと思います。これから新年度の予算を審議していただいて、それから今はおそらく素案という形で考えていると思いますので、これは当然国や県とも調整しながらになりますので、新年度に入ってからどのくらいの時期になるのかわかりませんが、ある程度の段取りをもって発表していくということになるのではないかと思いますので、もうしばらくお待ちいただければと思います。
【記者】公表は新年度中を目指すということで良いですか。
【市長】私は新年度中には当然お示するべきものだと思っておりますが、詳細は事務局よりお話しします。
【事務局】できるだけ早くお示ししたいと思っております。作業や検討に一つずつ丁寧に取組んでおります。今、新年度中にとはお答えできませんが、可能な限り早く公表できるようにと考えておりますので、ご理解ください。
【記者】先ほどのお話しの中で、子ども施策やDXなど重点施策に関してお話がありましたが、あらためてこの予算編成全体に関しての市長の意気込みや評価などを教えてください。
【市長】1つは、予算案のテーマを熊本の未来へつなげるとしました。新年の会見で、私の今年の漢字一文字を「道」という字にして、将来に対しての道筋をしっかりつけていくということをお話ししましたので、そういう意味では、未来をキーワードに子ども施策への重点的な配分を含め、今回は「熊本の未来へつなげる」というテーマを設定いたしました。同時に、子ども施策をこのように拡充し、皆さんに対して生活基盤をしっかり支え、安心感につなげていくということが非常に重要です。また、TSMCの進出によって、県も過去最大の予算を編成されたということでありますが、(熊本全体に)大きな動きが出てきます。そういったものにしっかり対応できるようにするということが(重要だと考えます)。新型コロナ対策については、少し感染の収束やある程度の落ちつきを見せており、2類から5類へ変化をしていくという中で、これまで3年間にわたって重点的に投じてきた新型コロナ対策の予算は減らし、かつ、熊本地震からの復旧復興についても、熊本城はまだ残りますが、様々なものが概ね復旧してきました。そういったことで、随分支出の削減ができるということですので、それらを今度は未来に向けてシフトさせるというのが、今回の予算としては非常に大きな転換になります。新型コロナ感染症や自然災害からの脱却ということから、市民生活の充実、そして未来への安心といったことに対する投資をさらに進めていくということです。これは道路のこと等も含めて、速やかに進めていきたいと思います。
これは特に、TSMCのような大企業が熊本市に隣接する都市圏内に進出してきますので、当然、熊本市は大きな影響を受けることになります。この隣接した場所とは当然交流があり、熊本市内に住んでそのエリアに働きに行かれる方も非常に多く、また逆もあると思います。この大きな企業が進出してくるという国家プロジェクトをより豊かなものにすると同時に、今までの大きな社会課題であった交通渋滞問題の解決にしっかりつなげるということも非常に重要だと思っていますので、そういったことをかなり意識した予算案になっていると思います。
【記者】先ほどお話しされた自治基本条例改正の見送りに関して、見送られた理由や経緯、今後の取り扱いについてなど、もう少し詳しくお聞かせください。
【市長】前回の記者会見でもお話させていただきましたとおり、自治基本条例の改正の素案をお示しし、パブリックコメントを募るという段階に入って、非常に多くの皆さんから不安の声や反対の声、あるいは、これで外国人参政権を認めてしまうのではないかといった誤解も含めた非常に多くのご意見をいただきました。この部分については、外国人の方々にも市民の一員であるという認識を持ってもらうことによって地域とのつながりをより深めてもらったり、地域コミュニティー活動が活発化したりすることを本来の目的として、こうした条例改正案を学識者や自治会長をはじめとした(委員会の中で、)多様な市民の皆さんのご意見を受けて、その委員会の中で素案を審議していただき、それをもとに条例の改正素案をお示ししたわけです。しかし、不安や反対それから誤解も含めていろいろな情報がかなり多く、かえって市民の皆さんが戸惑うことや混乱をすることがあってはなりませんし、また外国人の方々に対する反感というものが強くなってもこれは本末転倒であります。まずは、市民の皆さんに安心していただくということが非常に重要ですので、そういった意味では、条例改正案の内容を慎重に検討するということで、今回の議会への提案は見送り、市議会からのご意見もしっかりいただいた上で、それからまた対応を検討しようと考えたということです。
したがって、パブリックコメント等でいただいた様々な意見等については、現在集計しておりますので、結果を議会にお示しし、議会の本会議や委員会等でもご議論いただき、適切に進めていきたいと考えております。今の段階で、その後どういった形で、どれくらいのスケジュールで改正案を提出するか、どのような内容にするかについては、特段今決めているものはございません。
【記者】先月慈恵病院が出された内密出産や「こうのとりのゆりかご」の赤ちゃんについての出自を知る権利の検討会について、メンバーの選定を進めているということでしたが、メンバーが決まる日時や検討会が立ち上がる時期について、目途がついているのであれば教えてください。
【事務局】現在慈恵病院と調整中ですので、具体的なスケジュールについてはこれから調整するということになります。
【記者】熊本乳児院への調査について、調査の終了時期やその目途は立っているのかを教えてください。
【市長】熊本乳児院に関しては、私からも、しっかり聞き取り調査を行い事実関係を適切に把握するようにという指示をしております。現在までの調査に関しては、全ての職員や関係者の皆さんに聞き取りを行っているところであり、まだ調査は完了していないと思いますが、現時点で明らかな虐待事件を把握できているということではありません。
ただ、過去にいろいろな虐待が疑われる養育があったとされる時期から、時間も経過しており、いろいろな事実関係を認定したり確認したりするということは、この間にお辞めになられた職員の方等もおられ、丁寧に調査を行わなければならないと思っております。まずは、そうした事案の実態を徹底的に解明するということを優先し、もちろんスピーディーにやるということは重要なのですが、それ以上に、丁寧に調査を行うことで事実関係を明らかにしなければならないと思っています。
それと同時に、今この施設にいる子どもたちの安全が何よりも最優先であり、最も重要なことですので、この点については既に改善勧告を行った事案がありましたが、そういったいろいろな虐待や不適切な養育が行われないように、熊本市としては徹底的に指導をしていきたいと考えております。
【記者】村上宗隆選手の市民栄誉賞の贈呈式を神宮球場で開催するということで予算を計上されていますが、これはどのようなイベントになるのか教えてください。
【市長】村上宗隆選手は、ご承知のとおり3月に開催されますWBCへの出場が決定しており、ヤクルト球団と日程調整をしたのですが、熊本にお越しいただくのがなかなか難しいということになりました。授与式があまりにも遅くなり、例えば来シーズンなどになると、せっかくのご功績を称えるという目的が薄れてしまう恐れもありますので、ヤクルト球団側と調整を行った結果、ヤクルトスワローズの本拠地での主催試合が行われる際に神宮球場にこちらが伺うならば、市民栄誉賞の授与の機会をご調整いただけそうだということがわかりました。それであれば、せっかくの機会ですので、熊本市出身の村上選手に対し新たに創設した市民栄誉賞の授与を行うならば、本拠地である明治神宮球場でのヤクルトスワローズの主催試合の際に、セレモニーを行うことが非常に有効であると、ヤクルト球団と熊本市との間で確認をとらせていただきました。
日程は、4月下旬から7月頃までの間になるかと思います。これは、試合の関係もあり、ヤクルトスワローズ主催の試合の日程にある程度合わせて、授与式を行いたいと考えています。その時には、せっかく明治神宮球場に伺い、また、いろいろな方々がたくさんいらっしゃいますので、少し図々しいですが熊本市のPRもさせていただこうということで、球団にもご相談し、今検討しているところでございます。詳細な日程につきましては、これから調整していきます。
【記者】夏目漱石第6旧居の取得について、今後の活かし方と、また、文化の関連で、新たに置かれる文化顧問がどういったものになるのかを教えてください。
【市長】先日、坪井の漱石旧居がオープン(再開)いたしましたが、夏目漱石の第6旧居というのは、夏目漱石がこの熊本の地で執筆をした、あるいは五高の教師として指導するに当たってそこに住んだということで、様々な歴史的・文化的に非常に重要な拠点であると考えております。ところが、ここが民間の方の所有の旧居であり、ここをどうするかということで課題がありました。熊本市としても、文化資源・観光資源として価値が高いものと判断をいたしましたので、これは公の所有が望ましいという判断のもとで、今回取得をするということになりました。
取得後は、第6旧居が新たに加わりますので、(第6旧居を含めた)3つの旧居を連携させた取り組みをこれから行っていくとともに、県内に点在する漱石にまつわる文化遺産というものについても活かして、広域的な連携で漱石の振興につなげていきたいと考えています。将来的には、登録有形文化財を目指していきたいと考えております。ご承知かもしれませんが、有名な作家の村上春樹さんからも、この旧居の保存に対してご寄附をいただいておりますので、例えば、皆さんが集まって漱石について語るような場ができるなど、いろいろなきっかけにしていき、熊本と漱石の縁というものをしっかり後世に伝えていきたいと考えています。
文化顧問については、私のマニフェストにも既に掲げておりました。これは、上質な生活都市そして上質な文化を持つ都市であるということをしっかり目指していく(ために必要だと考えています)。暮らしと文化芸術を結びつけるための核となる人材として、文化顧問を設置し、単にこの文化芸術ということだけではなく、いろいろなアプローチの中で、例えば、福祉の面やいろいろな熊本市の政策の面においても、文化や芸術を結びつけるということで非常に大きな効果を生むだろうと思っています。各局のいろいろな政策立案に対しても、そういった視点を活用していくということが非常に重要になると考えておりますので、そうしたことをこれから設置できればと考えております。どういった方に任を担っていただくのかについては、柔軟な発想でいろいろな物事をとらえるだけでなく、いろいろな市が抱えている課題を解決に導くことができるような人物というものを想定して、これからお願いをしていきたいと思います。議会でもご審議を踏まえて、人事については、あらためて公表させていただければと考えております。
【記者】今後の財政運営のことについてお尋ねします。まず、新年度の当初予算の規模でみると過去2番目、新型コロナ関連や熊本地震関連を除くと過去最大ということで、中身を見ていくと、先ほどおっしゃった子育て関連に意識的に重点配分されたりしていると思うのですが、一方で、いわゆる公共施設の長寿命化関連も避けざるを得ない支出として今回もかなり膨らんでいると思います。今回、これだけ予算が大きくなっていることについて、市長はどのようにお考えであるかをお聞かせください。
【市長】まず、行政の需要としては、子ども政策に対してこれだけのお金を投じるという部分、20億近いお金を子どもの医療費等々について投じるということになれば、それだけ他の支出に対して圧迫することになりますが、先ほど申し上げたように、新型コロナの予算がある程度落ち着く、また、災害復旧対応の予算もある程度落ち着くといった中で、いろいろとやりくりをしながら、できる範囲の中で、財政においても将来的に持続していくということが非常に重要ですので、バランスをとって今回予算編成を行いました。
特に、当初予算を編成するに当たっては、各局にシーリングをかけました。そのシーリングの中で2億円ぐらいの効果を出して、各局もかなり努力しながら予算編成ができていると思います。一方で、貯金に当たるといわれる財政調整基金についても、取り崩すことなく、同じ水準で予算編成ができることになりましたので、一定程度やりくりはできていると思います。今後、扶助費が増えてくる、先程おっしゃった長寿命化も含めたメンテナンスの予算もありますので、こういった点はしっかり見極めながら、学校施設の長寿命化の予算なども今回入っていますが、そういったものもしっかりやっていくことが非常に重要だと思っています。しかし、貯金に当たる財政調整基金をどんどん減らしていいというわけでもありませんし、当然、必要なときにはそういった財源を活用するということはありますが、一方で、借金を増やせばいいということでありません。実際に今回の予算の中では、新しい市債の発行も抑制をし、マイナスになっております。したがって、概ねそういった意味では市債の発行額は、平成29年度からずっと毎年概ね減少させておりますので、一定程度そこは膨らまないような形でバランスをとりながら、そういった未来への投資、また、未来に向けたリスクがあることに対して早めに対処するということで、予算を振り分けたということです。
例えば、学校関係の施設や市営住宅の長寿命化は結構お金がかかりまして、増額の要因としては30億円程ございます。それから、子ども医療費の拡充や障害者の自立支援給付金等を増やしたということで、ここは大体25億円程増えていますので、こういった点が非常に大きく増えた要因ということになりますが、そこは借金を増やさずに貯金も減らさずにそういった調整で何とかできたということは、一定程度安定した財政運営ができるのではないかと思います。
ただ一方で、これから庁舎の建て替え問題をはじめ、これから先にいろいろなことをやっていかなければいけない中、皆さんから「本当に熊本市の財政は大丈夫なのか」といったご懸念の声もあり、また議会からもそういった声が出ていますので、中期財政の見通しを毎年出しておりますが、これを今年度中にしっかりお示ししたいと思っております。
【記者】TSMCが一つの柱だと思いますが、不足している産業用地の増設の予算が見受けられなかったのですが、その点はどうしてなのか、産業界などから懸念の声もあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
【市長】TSMC関連については、いろいろな分野で予算は上げておりますが、産業用地等に関しては、民間へのサウンディングを行い、実際に半導体関連産業が立地する産業用地の開発を検討しているような事業者さん、また、半導体関連産業の皆さんが集積する産業用地に関する条件等といったものをお聞かせいただきました。これを通して、1月末までにいろいろな話がありましたが、あらためて産業用地整備に対して非常に関心が高いということがわかりました。また、開発基準や農地の活用等の具体的な課題も、このサウンディングで把握できましたので、それをもとに今後の産業用地の確保にしっかり取り組んでいきたいと思っております。これは、民間の開発を促すということが主体になっておりますので、本市が工業団地として予算を確保して土地を造成するという形ではありませんので、こうしたニーズといったものを十分に把握できた段階で、きちんと対応できるように、補正も含めて予算措置は検討していきたいと考えております。