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令和5年(2023年)5月31日 臨時共同記者会見

最終更新日:2023年5月31日
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    1 報告
     ・「緊急下の妊婦から生まれた子どもの出自を知る権利の保障等に関する検討会」の共同設置について

    2 質問
    (1)幹事社代表質問(熊日・共同)
    (2)各社質問




会見録


発表

【大西市長】
本日、本市と慈恵病院との間で覚書を取り交わし、出自を知る権利の検討会を共同で設置しましたので、ご報告いたします。
検討会の正式名称は緊急下の妊婦から生まれた子どもの出自を知る権利の保障等に関する検討会です。
座長は、児童家庭福祉や里親養育を主に研究しておられる森和子元文京学院大学教授にご就任いただき、合計20名の委員(ヒアリング対象の2名含む)の皆様により構成します。
検討会は、真実告知で悩まれる方々への支援に繋がること、そして、いわゆる内密出産ガイドラインで求められております、妊婦の身元情報の保存等に関する規程の制定に寄与することを目的としております。
会議においては、子どもに対する真実告知の在り方等に関することをはじめ、子どもの出自情報の範囲に関することなど、子どもの出自を知る権利に係る課題を整理し、必要な対応について意見交換を行っていただきたいと考えております。
今後のスケジュールといたしましては、7月上旬に第1回会議を慈恵病院で開催する予定で調整しており、令和6年12月末までには検討会の意見を報告書として取りまとめたいと考えております。
私からは以上です。


【蓮田理事長】
出自を知る権利というものは、私たちが16年間ずっと、こうのとりのゆりかごで悩んできたところです。
考えてみますと、出自と呼ばれるものは空気のようなもので、ほとんどの人が意識しないまま生きています。ところが、そこがない状態のお子さんがいらっしゃいます。本当は出自を知る権利というものは大事なものであり、これは誰にでも共通する考えだと思うのですが、私たちの世界では、どうしてもお母さんが、自分の身元情報を明かしたくないとおっしゃってお越しになる。それがゆりかごであり内密出産です。親子それぞれの希望をどうやって両立させるかということについていつも悩んでいます。
出自を知る権利、私は産婦人科医として、無事なお産まではお手伝いできるのですが、その先は全くわからずに今まで生きていました。日本では、世界的にもそうかもしれませんが、この件についてはあまり触れたがらない。時々学会でセッションがあると、出自を知る権利のことが挙げられたり、またはドキュメンタリーのドラマで出ることはあるんですが、今まで踏み込んだ議論はありませんでした。
(検討会の委員は)非常に重厚な先生方ですので、活発なご議論をいただけると思いますし、私も勉強させていただきたいと思います。この検討会はお母さんと赤ちゃん(のそれぞれの希望)を天秤にかけるような作業ですので、非常に難しいところですが、きっとお力添えいただけると思っています。
また、この検討会の場に行政の方に入っていただくことが初めてですので、画期的なことだと思っています。これまで大西市長に色々なお力添えをいただいてきて、ご理解をいただいてきた賜物だと思っています。ありがとうございます。
私からは以上です。


質疑応答

【記者】検討会の設置の目的に関してお伺いします。病院による規程の制定に寄与するとのことですが、検討会の報告書は病院に向けて出されるものなのか、または子どもを育てている養親や里親の方や施設職員に向けても出されるものなのか、教えてください。

【大西市長】まだ出自の情報をどのように扱うかに関しては、現在我が国においては全く想定をされていないことであり、制度化もされていません。どこに向けて報告するのかという事に関しては、私どもは内密出産の制度化について、法制化も含めた様々な制度について国へ要請している最中であり、国の方でも報告書がまとめられた場合において、ガイドラインの中ではこの部分に関して示されておりませんので、こういったものを反映していただきたいと思っています。
それから、養親や里親の方々についても、先日行われた児童相談所のアンケート調査によって、どのように対応していいかわからないといった悩みや葛藤があることがわかりました。ですので、この議論の中でいろいろ課題が検討されていく事によって、どういう在り方が望ましいのかという事に、少しずつ理解が進んでいくことを期待していますし、またそのことによって最終的に子どもの権利を守るという事であれば、生まれてきた子どもが社会に必要とされている存在であるということを感じて健全に育っていけるようになるために、出自を知る権利をどういう形で保障するのかという事が検討会の中で導き出されると思いますので、そういう意味では、あらゆる関係者に対しての報告書になるのではないかと思っています。
しかし、議論の進み方の中でいろいろと変わってくる部分もあるかと思います。様々な課題もありますので、例えばどういう形で真実告知の在り方というものがあるべきなのかという事がまず1つあると思いますし、いつ頃から真実告知をするのが望ましいのか、これはケースによって違いがあると思います。また出自情報の範囲に関して、どこまでを定義するのかということもあります。様々な論点を一つひとつ検討していく事によって次のステップへと繋がっていくものだと感じています。


【記者】課題の出方や結果如何によっては、国に対して報告書を提出されたり要望されたりということに繋がっていくという理解でよろしいでしょうか。

【大西市長】その通りです。

【記者】ゆりかごの運営を検証する専門部会に関して伺います。市の要保護児童地域対策協議会の一部という位置づけですが、今回設置される検討会は、どういった位置づけになるのかを教えてください。

【大西市長】今回、出自を知る権利と真実告知の在り方については、熊本市と慈恵病院とで色々な意見を交わす中でご要望もいただいてきたものです。
まずは各分野の専門的な立場から検討していただく必要があるという認識が一致したこと、そして本市としては、先ほど申しましたように真実告知に対する養親等への支援が課題であるという事が明らかであり、また昨年9月に国が示したガイドラインの中では、「都道府県、政令指定都市等は、医療機関が作成した規定の確認、それから妊婦の身元情報を管理するための規定の明文化及び当該規定に基づく身元情報の管理等、周知・指導を行う」とされていますので、出自を知る権利や真実告知の在り方に、熊本市が慈恵病院とともに関与するという事は公益性があると判断し、今回覚書を交わし共同で検討会を設置するに至りました。

【記者】今回の検討会の設置が令和5年5月という事ですが、「こうのとりのゆりかご」の設置から16年が経過しています。改めて検討会の設置がなぜこのタイミングになったのかをお聞かせください。

【蓮田理事長】昨年国から出されたガイドラインには、出自に関する言及がなされておりませんでした。これを放置するわけにはいかず、私ども慈恵病院は民間(の医療機関)ですので、今後も続いてこられる内密出産の施設についても、また行政の方々や熊本県外の方に安心してこの問題に取り組んでいただける為には、やはり公的な、行政の方のお力添えが必要だと判断し、私からお願いをしました。(ゆりかごの開設から)16年経過してしまったという事もありますが、昨年国から発出されたガイドラインが大きなきっかけでした。

【大西市長】これは非常にセンシティブな問題でもありますので、その取扱いに関しては非常に悩まれたと思います。特に「こうのとりのゆりかご」設置に関しても、賛否いろんな角度での議論がある中、まずは、母子の健康・命を最優先に守っていくという事で「こうのとりのゆりかご」を設置され、設置後も賛否両論ある中で苦悩しながら現場でご対応いただいてきたと思います。
市としても検証を行ってきたわけですが、これまでの間に内密出産が一つの大きなきっかけとなったその後、国からガイドラインが示されました。ですが、その中でも解決できない、まだ示すことができないという部分に関して、現場により近い我々が検討を行い、そういった事例に基づいた対応を行うことが、時期的に重なったのだと思います。
そして、子どもの出自情報に関しては「こうのとりのゆりかご」が開設されて16年という期間を考えますと、預けられた子が思春期を迎える時期に差し掛かるという事もありますので、検討を行い一定程度の結論を導き出すことが、急がれるべきではないかと私自身考えておりました。そういった事が重なって、今の時期になったと考えております。

【記者】出自情報の取り扱いについて伺います。国からガイドラインは発出されましたが、具体的には定めておらず、結果的に医療機関や自治体任せになってしまっている部分があると思うのですが、改めて現時点での考えをお聞かせください。

【大西市長】出自情報はこどもの権利に関わる非常に重要な部分であり、国としても今まで制度化されているものではない中で、これはこうですという形で明示することは、なかなか困難な事だろうと思いました。そういう意味ではなんでも国で決めてくださいというわけでなく、現実に今、慈恵病院と熊本市の自治体の中で起こっていることですので、これに関しては我々の現場での向き合い方など、国へもきちんと情報提供を行い、共有しながら一緒に考えていく事が非常に重要なことだと私は受け止めています。

【蓮田理事長】私どもは公的機関に保管していただきたい立場ではありましたが、これまでに社会調査という問題がありました。こどもの出自を知る権利のために得た情報を基に、出自保持を模索していかなければならないという葛藤の中で、行政の方が身動きを取れないような状況になってしまいましたが、大西市長からのご助言もあり、内密出産が進めていける状況になりましたので、理想は公的機関で保管していただくべきだと思っています。

【記者】児童相談所が行ったアンケートにおいて、多くの養親の方などが出自情報を伝えるべきかどうか葛藤する中で、こうのとりのゆりかごや内密出産で生まれた子どもの出自情報そのものについて、大西市長、蓮田理事長のそれぞれの考えをお聞かせください。

【大西市長】生まれてきた子どもの立場からすると、いつの時期に(自分の出自情報が)どういう形で伝えられたか、どういう情報があるかも含めて、自分が生まれてきた意味やなぜ生まれてきたのか、どういう形で誰から生まれたのかといったことを、成長の過程で必ず求める時期が来ると思います。
先ほどいみじくも蓮田理事長がおっしゃられましたが、普通の環境であれば余り感じない部分といいますか、出自に関して当たり前のように父親と母親から生まれたのだと認識することが、実際にそういったいろいろな境遇で生まれてきた子どもたちからすると、自分の存在をどのように肯定していけばいいのか、色々な葛藤があると思います。
そういう意味では、例えばゆりかごで、お子さんと母親の色々な情報が全く分からない時は、非常に厳しい状況があるのだと思います。そんな時に情報が少しでもあることによって、その子がどういう形で育っていくかということがあると思いますが、自分が生まれてきて命をつないで成長してほしいと願いを込めて内密出産という形に至ったのか、また、ゆりかごに関しても、止むを得ない事情がある中での預け入れという事に至ったのかというような、ほんの少しでも情報があることによって、子どもの成長、そしてその後の社会的活動の中で自分をどう肯定していくのかという事に大きく繋がるものだと思いますので、出自情報の取り扱いに関しては、極めて重要なことであると認識しております。

【蓮田理事長】(児童相談所のアンケート結果の)18%という数字は、私は養親や里親さん達が可哀想な出自だと思っているからではないかと推測しました。今回設置する検討会における議論では、タブーなくそういったところにも踏み込んで、日本の社会の中でどうあるべきか、一定の方向性を導いていただきたいと思っています。
確かニュージーランドかオーストラリアの方のお話では、「自分の国では、職場でも自分がレイプによって生まれた出自だと本人が話しますよ」という話を伺ったり、アメリカのベビーボックス創始者のモニカ・ケルシ―さんも、自分がレイプで生まれたということを堂々と言われていて、何がかわいそうなのかという事に関して、日本の社会の価値観や人生観に照らし合わせると、欧米とはちょっと違うかもしれません。
ですので、かわいそうな出自だと思われているかなという印象を私は持っていますが、そこをいろんな経験者の方々にお話を伺いながら、どう受け止めるかということに方向性をつけていただきたいと思っています。

【記者】資料の中に検討会委員の施設関係者の欄があり、こうのとりのゆりかご当事者で調整中との記載がありますが、どのような方が委員として入られるのでしょうか。また、当事者と一言で言っても様々な立場があると思いますが、その当事者たちの声どのように拾い上げていきたいと思われているのかを教えてください。

【蓮田理事長】昨日私に蓮田真琴新生児相談室長から、今ご質問いただいたゆりかごの当事者に関して、具体的に申しますと養親の方から了解をいただいたとの報告を受けました。ゆりかごに預けられた子どもさんは、宮津航一さんを除くと16歳ですので、そういった話を本人から伺うのはいかがなものかという事で、今回一組のご夫婦である養親の方に了解をいただきました。

【記者】委員構成に関して伺います。ヒアリングの項目とヒアリング対象者はどういった形を想定されているのか、また委員の施設関係者がヒアリング対象者も兼ねることになるのでしょうか。

【蓮田理事長】委員構成に関しましては、委員の数が多くなると予定が合わなくなってしまうことが予想されますので、経験豊富な方に就任をお願いしております。
委員名簿欄のNPO法人Babyぽけっとさんと、田中病院さんはヒアリング対象であり、委員ではありません。その下の日本国際社会事業団の大場亜衣さんは委員の方です。

【大西市長】ヒアリング対象については、議論の過程の中でおそらく検討されていってこういう方からお話を聞いた方がいいのではないかというようになっていくと思いますので、今の段階では委員の方に関しては、慈恵病院と我々行政とで調整しながら、委員就任に関して依頼をしているところです。

【記者】では、委員として検討会に必ず参加されるのは常時18名という理解でよろしいですか。

【事務局】先ほど蓮田理事長からお話がありましたとおり、2名の方はヒアリング対象の方ですので、委員は18名です。

【市長】現時点では18名の委員構成ということで間違いありませんが、今後委員の方々との議論の中でヒアリング対象については、変わる可能性があります。

【蓮田理事長】検討会のイメージとしては、各委員の方にも1時間半から2時間程度、色々な報告やご説明をいただく、ヒアリングを行います。ですので、委員ではないがヒアリング対象なのがNPO法人Babyぽけっとさんと、田中病院さんです。

【記者】蓮田理事長が以前「広く社会の中で議論していただくためにも、発言者が許す限りメディアも参加を許してほしい」と発言されていましたが、今回設置された検討会は、傍聴は可能なのでしょうか。

【蓮田理事長】Zoomを設定しております。会場が病院で広いスペースが確保できませんので、記者さん全員というのは難しいかもしれません。
日本子ども虐待防止協会やいろんな専門家の方にお声かけをして、オンライン配信を通じてたくさんの方に視聴していただきたいと思っています。

【大西市長】会議の中で個人情報を扱う場合には、報道関係者には頭撮りの後にご退席いただき、終了後に記者レクチャーでお知らせするという形になると思います。皆様にお話を聞いていただける部分に関してはできるだけオープンにしていこうという事です。

以上。


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