清正はろう城に備えて城内に１２０本以上の井戸を掘ったと伝えられる。朝鮮出兵の苦しい籠城経験で水の大切さを痛感したためという。深いもので約40メートルに達し、17本が現存する。
桧垣は、平安時代の女流歌人である。清少納言の父とされる当時の肥後国司清原元輔との親交などエピソードは多い。桧垣が庵を結んだ蓮台寺は桧垣寺といわれ、寺のそばに桧垣の井戸はある。
英語の教師として熊本に赴任した文豪・漱石の内坪井旧居に残る井戸である。長女筆子の産湯を使った井戸としても有名。「やすやすと 海鼠のごとき 子を産めり」は、筆子誕生を詠んだ句。
明治国家の設計図を書いたといわれる井上毅。大日本帝国憲法の草案や教育勅語など新国家の運営に尽力した。伊藤博文内閣の文相も務めた。井上が産湯を使ったとされる井戸は、熊本市立必由館高校の中にある。
近代ジャーナリストの草分けである蘇峰。「不如帰」で知られる小説家・蘆花。兄弟が過ごした旧大江義塾である徳富記念館にいまも井戸が残る。
山頭火は、泥酔して市電を止め、報恩禅寺に連れて行かれ出家得度した。境内の壺井はつぼの形をした井戸で、この辺りの地名の由来という。山頭火も壺井の水を飲んだかもしれない。
勝海舟が「はしごを掛けても及ばぬ」と評した幕末の思想家。坂本竜馬など維新の志士に大きな影響を与えた。内坪井町の熊本中央高校そばに小楠産湯の井戸が残る。