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〈19〉『草枕』『二百十日』の旅

最終更新日:2017年10月30日
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前田家別邸

〈19〉『草枕』『二百十日』の旅

 明治32(1899)年9月、同僚の山川信次郎は、第一高等学校へ転任が決まります。山川は明治30(1897)年4月、漱石の紹介で五高に赴任し、英語科の教授として漱石と共に尽力した人ですが、小天温泉、阿蘇への旅行に同行した人でもあります。これらの旅行が素材となって、のちに『草枕』『二百十日』という作品ができました。


 小天温泉は旧小天村湯ノ浦地区(現玉名市天水町小天)にあった温泉で、前田案山子の別邸でした。漱石は熊本での最初のお正月、年始客の多さに懲りて、正月は留守を決め込んだのでした。その最初の旅行が小天温泉でした。明治30(1897)年の暮れ、山川と連れだって、金峰山の麓の道を上り、鳥越、野出の二つの峠を越えておよそ22、3キロの道を歩いて行きました。漱石たちはこの宿で年を越します。「小天に春を迎へて」という前書きのある句があります。
  温泉や水滑かに去年の垢


 漱石たちが泊まったのは別邸の離れで、2階の6畳間でした。現在は、この離れも漱石が入浴した浴室も修復され、「前田家別邸」として公開されています。


 明治39(1906)年9月『新小説』に発表された『草枕』には不思議な言動をする志保田 那美が描かれましたが、案山子の次女ツナ(卓子)がモデルと言われています。小天の長閑な風景だけでなく、温泉でのさまざまな体験が作品に生かされています。


 漱石は明治33(1900)年7月、英国留学のために熊本を離れます。ロンドンから狩野亨吉、山川信次郎など4人に宛てた手紙で「帰つたらだれかと日本流の旅行がしてみたい小天行抔を思ひだすよ」(明34・2・9付)と書いていますが、漱石の心に深く刻まれた旅でした。


 阿蘇登山旅行は、山川との最後の旅行となりました。明治32(1899)年8月末から9月にかけて3泊4日の旅です。その時作った俳句が30句ほどあります。それによると戸下温泉、内牧温泉に宿泊し、阿蘇神社を参拝したあと阿蘇登山に向かいました。しかし、火口まであと少しのところで道に迷い、薄の原をさまよい、やっとのことで立野の馬車宿にたどり着いたようです。


 前年、阿蘇には新たな噴火口ができ、2本の煙が立ち上っていました。阿蘇山の活動が非常に活発な時期でした。この旅から帰った山川はすぐに、第一高等学校赴任のため、東京へ出発しました。この山川との別れは、漱石に寂しさをもたらしました。


 『二百十日』(『中央公論』明39・10)には、この時の漱石の体験が描かれています。圭さんと碌さんという2人の青年の軽妙な会話による短編小説は、これまでの日本の文壇にはない新しい小説でした。


 朝日新聞社の鳥居素川は『草枕』に感心し、漱石を朝日新聞社へ招こうと交渉が始まります。漱石はやがて新聞社に入ることを決意します。『草枕』は、漱石が専業作家へ転身するきっかけとなった作品です。 

 

                                 (くまもと漱石倶楽部会員・熊本大学五高記念館客員准教授 村田 由美)

前田家別邸(漱石が泊まった部屋)
                        前田家別邸(漱石が泊まった部屋)


 

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