【記者】4月16日に行われる防災パークについてお伺いします。防災ヒーロー入団試験や市長と若者たちとのトークセッションなど、若い世代に力を入れている印象を受けたのですが、この事業に対する市の狙いをもう少し詳しくお聞かせください。
【市長】熊本地震の発災からちょうど7年経過します。あの当時、幼くて地震の記憶は余りないようなお子さんたちが、ちょうど小学生になるぐらいの時期ではないかと思います。特に今回は、私も若い世代の皆さんとのトークセッションを行いますが、高校生の方であれば熊本地震当時は10歳ぐらいですので、鮮明に記憶していると思います。こういった若い世代の皆さんに熊本地震の記録・記憶というものを次の世代に伝承していってもらいたい、そういう願いを込めてこうした企画を立案しました。
「防災」や「訓練」に関しても、若い世代やお子さんたちにもう少し気軽に、身近に感じてもらえるようにということで、防災ヒーローの入団試験は、あそびを通して防災の知識を吸収してもらおうという意図がございます。
【記者】熊本地震に関連してお伺いします。市長が市長選の際に、熊本地震に加え新型コロナの影響で孤立化が進んでいるとお話をされていましたが、例えば市内で確認されている孤独死の件数など、統計的な数字でそれを裏づけるものがあるのか、またそれに対する現状の対策などあれば教えてください。
【市長】孤立死・孤独死ということに関しては、ちょうど熊本地震の後に皆さんから非常に注目されたものであり、その都度都度に発表をさせていただいておりますが、熊本地震では東日本大震災や過去の震災の際に起こったようなことがないようにということで、相当見守りを行いましたので、そうした事象は確認されておりません。ただ、例えば災害公営住宅などで、地震後に具合が悪くなって亡くなる方も確かにいらっしゃいますので、そういった方が熊本地震に関連した孤独死としてカウントできる方かどうかについては、担当局から、後ほどまとめてお知らせしたいと思います。(熊本地震から)ちょうど7年経ちますので、どうだったのかということについて、皆さんにご説明できるようにしたいと思います。
ただ、私が把握している限りにおいてですが、震災の直後より、仮設住宅から災害公営住宅に入るときにマッチングを相当念入りに行いました。当時は熊本市民病院が被災し、再建の途上でしたので、ここで雇用しておりました看護師あるいは医療専門職をそれぞれ被災者のもとへ派遣し、マッチングやいろいろな寄り添いを行ったことによって、熊本地震においては過去の震災と比較しても、そうした孤立化というものが防げたのではないかと私自身は考えております。一旦そうしたことも含めて、ちょうど7年という節目ですので、皆さんにわかりやすくお示しできるように、担当局で取りまとめた上で結果をお知らせしたいと思います。
実際私も、災害公営住宅の入居をする方々の入居前の交流会に、地域の皆さんや自治会の皆さん、看護師・保健師などスタッフと一緒に参加させていただきました。その交流会で顔見知りになることによって、孤立しがちな災害公営住宅においての地域コミュニティを醸成することが出来たのではないかと思っております。
【記者】熊本地震の日に関連してお伺いします。若い世代への伝承というお話がありましたが、地震から7年という月日を経て、今課題に感じられていることはどういったことか教えてください。
【市長】まず多くの皆さんの中で、地震で厳しい状況だったことに対する記憶がかなり遠のいている、記憶が薄れていると思います。私自身も地震直後の少し興奮したような状態、そして余震が次々にあっているような緊張感の中で過ごしてきたわけでありますが、一定程度、街のインフラも復旧し、被災した住宅家屋や建物等々も復旧をしていく中で、徐々にそうしたつらい記憶というのは、やはり薄れていくものだなと私自身も実感しています。
(記憶が)薄れていくことは必ずしも悪いことだとは思いませんので、厳しい状況にあった中で復興していく最中に、前向きに次の未来に向けてスタートを切るという意味では、過去にとらわれずにということは必要なことでもあるかと思いますが、逆に言えば、災害のときに「これが出来なかった、あれも出来なかった」という事があると思います。
例えば皆さん方が当時、水や食料をあまり備蓄していなかったということがありまして、前震後に熊本市の備蓄倉庫から水や非常用の食料等々、あるいは毛布などいろんなものを各地でお配りしましたら、そこで尽きてしまい、本震後にそれ以上の方々が避難所へ殺到されたときに、水も届かなかったし食料も届かなかったという事がありました。我々も熊本地震の教訓から、最大で11万人の皆さん方が避難されたという実績を基に、避難された方が数日間過ごせるようにということで備蓄物資を揃えてきたところですが、やはりそれでも不十分ですので、ぜひ市民の皆さん方にはローリングストックという形で、御自宅で備蓄物資を普段から食べながら、飲みながら、使いながら備蓄を進めてくださいということをお願いしました。
発災直後は確か8割以上の方が「3日間以上の備蓄をしている」とアンケートでお答えになられていたと思います。もし今、そのアンケートを行うならば、恐らく賞味期限が切れていることを忘れてそのままになっている備蓄物資が眠っていたり、(賞味期限の)確認が出来ていなかったりということは少なからずあると思いますし、そういったものは今、用意していないという方もいらっしゃるかもしれません。
ですので改めて、(災害が)いつ起こってもおかしくないという気持ちで、是非この機会に「熊本地震の日」という日をあえて条例で定めたということをご理解いただいて、毎年毎年皆さんには確認をしていただき、そして備えを強化していただきたいと考えています。
【記者】防災ワークショップの際に行われるトークセッションについてお伺いします。先程、次世代への伝承というお言葉がありましたが、対話方式で開催することで若い世代からのどのような発言や気づきを期待されているのか、教えてください。
【市長】対話をすることによって、あまり型にはまらずに自由に思ったことを話してもらいたいと思っています。当時から7年も経過しており、子どもさんたちも成長されていますので(小学生が高校生になっていますので)、その時の記憶がどのように自分たちの中で教訓として生かされたか、ということを率直に話してもらうのと同時に、若い人たちの感覚というのは非常に合理的な考え方をすると思うんですよね。ですので、我々が発想しないようなことを思いついたり、こういうふうにすればいいじゃないかという新たな気づきがあったりと、若い人たちの目線で防災対策を考えるという事は非常に重要だと思っています。
また熊本地震の時には、避難所で活躍をしてくれた中学生や高校生がいました。彼らは、災害があったときの避難者としての行政サービスや地域防災の受け手ではなく、一緒になってその地域の防災力を高めていくための、一種のプレーヤーとして参画できるだけの力があると私は思っていますし、それが地域の防災力を支えていくことにつながっていくだろうと思いますので、そういった対話の中でいろんな若い皆さんの考え方を引き出しながら、これが次の防災対策に活かせることになるのではと、大変期待しているところです。
【記者】一昨日発災した花火大会の火災についてお伺いします。熊本市消防局管内での火災であり、1回目火災の鎮火後に消防局職員が現場に残って花火を再開しましたが、再び火災が発生してしまいました。この件についての市長の受け止めをお願いします。
【市長】まず主催者側の皆さんが、しっかりとした安全対策を取っていただくというのが大前提であり、花火は皆さんが楽しまれるものでありますし、しかもエリアを区切ってできるだけ安全対策をされたということですが、これは主催者側が警察等々と事前対応を行って、計画書等をきちんと出さないといけないはずなので、まずはそういった取り組みをしっかり行っていただかなければならないと思います。
また、このような火災が起こったということは、今後のいろいろな花火大会に影響を及ぼすものであると私は思います。ですので、主催者の皆さんには再発防止も含めてですが、今回はたまたま人的な被害等はありませんでしたが、ドライブスルー花火という車で皆さんが近くまで行って花火を見るという、これはコロナ禍の中で考えられた苦肉の策だったと思いますし、アイデアとしてはすばらしいものだと思いましたが、車で近くまで行くということになりますと、一歩間違えれば車に引火をしてしまいかねないという危険性も私はあると考えますので、今後はこういったことを開催するにあたっては、関係機関と事前に念入りに対応していただきたいと思います。
私自身も報道でしか知り得ていない部分もありますし、消防からの報告も一部ありますが、消火活動の後に鎮火したということで恐らく再開したのだろうと思いますが、それが不十分で再び引火したということになれば、それは非常に大きな問題だろうと思います。なぜその時点で中止が出来なかったのかということも含めて、消防局にも十分話を聞いて、現場の検証はしっかり対応していると思いますので、原因が明確になった時点で注意喚起を、私からも行っていきたいと思っております。
【記者】企業立地件数についてお伺いします。過去最多という事に対する市長の受け止めと、資料を見ますと令和2年から過去最多を更新し続けていますが、市の方で要因として分析しているものがあれば教えてください。
【市長】企業立地が、コロナ渦を含めた厳しい経済環境の中でこれだけ進んでいるということは、やはりこの熊本の土地の持つポテンシャルを経済界の皆さん、また進出される企業の皆さんが非常に好意的に受け止めていただいている証だろうと思います。
実は、政令指定都市に移行後から(企業立地は)ずっと増え続けており、平成28年の熊本地震の際と新型コロナの最初の年であります令和元年は落ちていると思うのですが、ほぼ右肩上がりに増えているということを考えますと、昨今TSMCの影響はここからまた乗ってくると私は考えています。そういう意味では期待感もあり、また、政令指定都市に移行したことで都市としてのブランド力といいますか、そういったものが高まったということは、立地に関して熊本という街に対する皆さん方のイメージが大きく変わったのだろうと評価をしています。
交通アクセスに関しては、九州新幹線が開業して以来福岡や鹿児島を初めとする九州各地への移動が非常に円滑になった事も好調の要因の一つだと思います。一方で皆さん御承知のとおり、渋滞等の問題によって非常にネガティブなものにもなりかねませんので、ここに対する対策はしっかり検討している最中であり取り組んでいるところですが、熊本の評価がさらに高まるように努力していきたいと思います。
特に現在はオフィス系企業の立地が好調であり、製造や物流系企業も非常に立地が進んでいるということでありますが、今後はTSMC進出に関する生産拠点は、合志や菊陽などのTSMCの工場に近いエリアであっても、オフィス機能は熊本市内に持つという企業も恐らくいらっしゃると思いますので、そういったいろいろなニーズに答えられるようにしたいと思います。それから、昨年の4月に熊本駅前のくまもと森都心プラザにクロスポイントというスタートアップの支援拠点をオープンしましたが、実はここにスモールオフィスを設置しました。ここへの入居というのも非常に増えておりますので、そうした複合的な要因で今進んでいるということです。さらにトップセールスも含めてこの誘致を加速させたいと思っていますので、これからまた来年度にいい報告ができるよう、今年1年頑張っていきたいと思っています。
【記者】3月31日から半導体関連産業集積に向けて、4つの推進エリアで民間事業者さんの公募を始められていますが、これについて市としてどういった点をアピールしたいかという事と、先ほどTSMC周辺自治体では工場などの製造系、熊本市内ではオフィス系といった棲み分けのようなお話がありましたが、示された4箇所の集積地においてどういった立地、または業態を期待しているのかを教えてください。
【市長】公募に関しては3月31日に始めたばかりですが、3月2日にこの4エリアということを議会の場で答弁をさせていただきましたし、皆さんにも公表させていただきました。その後、産業用地の整備を検討している民間事業者、それから公募エリアの住民の皆さんを含めた皆さんから問合せを多数いただいており、今後同様の事業者からの問合せがさらに寄せられるものと思われますので、非常に期待感が高い案件だと我々も考えております。
具体的な広報の流れは、6月末までに企画提案書を提出いただくように期限を設けておりまして、その後の外部審査会などの審査を経て、8月頃に市と事業者による協定締結を予定しております。
立地の場所については、いずれも高速道路のインターチェンジに近いということもありますので、当然期待をするのは半導体関連も含めた製造の拠点がぜひ来てほしいとは思いますが、製造拠点がTSMCの工場の近くであることが多いということになりますと、立地性から言えば物流拠点である倉庫などのストックヤードというようなことも十分考えられるのかなと思っております。熊本の高速道路のインターチェンジにつながるということは、九州各県の主要都市に非常に短い時間で移動できるということですので、そういう意味では皆さん方から多くの可能性を持った提案がなされるのではないかと期待をしているところです。
いずれにしましても、たくさんの応募がある中で熊本にとってよりよいものを採択できるように、ぜひ多くの皆さんに参加をしていただいてご提案をいただきたいと考えております。
【記者】地震からの復興・復旧に関してお伺いします。道路が整備されたり空港がリニューアルしたりと、復興のフェーズもステージが変わってきていると思います。現在の状況とこれからの復興に対する市長の考えをお聞かせください。
【市長】熊本地震の発災から7年を経て、まず皆さん方の住まいに関しては、既に2年前に全ての仮設住宅等にお住まいの方々の恒久的な住まいの確保がほぼ完了し、仮設住宅等に入居している方々がいらっしゃらない状況ですので、そういう意味では第1段階の復興というものはある程度進んだなと思っています。
その上で先程ご質問がありましたとおり、孤独死や孤立化の問題に関しましては、被災した方々で経済的に非常に苦しんでおられる方々に対する福祉的な支援など、そういった寄り添った支援をかなり進めてきましたので、こういったものがどのぐらい皆さんに有効なものになっているのか、そしてきちんと寄り添えてるかどうかということを、しっかり確認することが非常に重要だと思っております。さらに皆さん方が生活を再建されて、また未来に向けて希望ある生活を送っておられるのかどうかというのが、非常に大きなポイントになってくると思います。
そうした中でのコロナ禍による影響も大きく、熊本地震で被災しいろんなところで経済的な負担もありました。例えば飲食などの御商売をなさってる方が、地震からの復旧に多額の費用がかかり、借入金などの返済がちょうど始まる頃にコロナになって、またそこで借入れを行うなどして、(返済の金利も3年間据置きでゼロということにしておりましたが)その返済がこれから始まってくるという中で、やはり資金繰りが思うようにいかないなど、いろいろなことが出てくることも予想されます。熊本地震からコロナと、この7年間の間で非常に大きな災いがあったわけですので、それぞれの影響をしっかり捉えながら次のステージに向かっていくことが必要だと思っています。
【記者】新型コロナの感染対策に関してお伺いします。市電の車内では非常に狭い空間の中でたくさんの方が密集されますが、基本的にはマスク着用を呼びかけないとのことでした。そうすると、感染リスクの高い方が市電を利用出来なくなるのではないかと懸念されますが、市として弱い立場の方を守るために、マスク着用を強く求めていくような考えではないのでしょうか。
【市長】基本的には、国の対処方針に基づいてこれまで対応してきました。現時点でいろいろなリスクも含めて考えますと、今取っている措置が直ちに課題があるとは思っておりません。ただ、マスクの着用に関しても皆さん方にそれぞれ気をつけていただくという点に関しては、用心するに越したことはありませんので、政府の方針でもそうですし、厚生労働省のチラシにも記載があったと思いますが「(電車やバス等で)移動する際はできるだけマスクを着用するように推奨します」というアナウンスを今までもされていたと思いますので、そうした呼びかけはしていきたいと思っています。
やはりマスクにしても、相手のことを考えて着用するということは非常に重要なことではないかと思いますので、そうしたことも考慮しつつ、マスクの着用を強制したりするといったことは、今の状況の中でよろしくないと思っています。ですが、思いやりのためにそういった配慮をするということは、非常に重要なことではないかと私は考えております。
【記者】妊娠内密相談センターについてお伺いします。4月1日から開設されましたが、現在の運用状況を教えてください。
【市長】(妊娠内密相談センターは)4月1日に開設いたしまして、おかげさまで24時間体制でメールや電話で受け付けをさせていただいており、既に御相談はあっております。御相談者のプライバシーに配慮し、相談内容等については発表を控えさせていただきますが、トータルの件数についても、現時点では何十件・何百件というわけではないですが、電話やメールで複数件あるということはお伝えさせていただきたいと思います。
利用状況については、妊娠内密相談センターにご相談を寄せていただいている方々は、いろんな状況があって内密にしたいということで相談なさっている方が非常に多いので、スタートしたばかりの現時点では申し訳ありませんが、詳細なことは控えさせていただいて(相談者の方々も、今取っかかりで相談したばかりなのに「私のことを言っているのではないか」ということになりますと、不安が広がってしまって相談がそこで途絶えてしまうということにもなりかねませんので)、例えば、1ヶ月から2ヶ月など一定の時間が経過した後に、状況等については可能な範囲の中でまとめて公表をさせていただきたいと思っております。
ただ、スタートしてもう翌日には御相談があっているような状況ですので、そういう意味では反響がしっかりあり、またそのニーズに対してしっかり対応していく必要があるということは、よく理解できたと思っております。これからいろいろお話をしていく中でどういった支援が必要なのか、これは相談者のプライバシーに十分配慮しながら適切に対応していきたいと考えております。
できれば(報道等で流れるかどうかわかりませんが)センター開設後にすぐ相談をいただいていますので、相談をすればいろんな形で必ず誰かが助ける、あるいはサポートすることが出来ますので、是非今お悩みの方には積極的に、この妊娠内密相談センターを御利用いただきたいと思います。そのことが命を救う、あるいは皆さんの状況を改善するきっかけになると思いますので、よろしくお願いします。