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緑を通じて育むまちの未来(都市政策研究所第39回講演会講演録)

最終更新日:
(ID:58628)

概要

講演の様子


開催概要
【日時】令和7年(2025年)2月14日(金曜日)
    14時30分~16時30分(14時 開場)
【会場】熊本市国際交流会館6・7階大ホール(受付は7階)

講演
【演題】緑を通じて育むまちの未来
【講師】千葉大学大学院 園芸学研究院
    教授 柳井 重人 氏
【講演録】
研究員報告
【テーマ】熊本市における自然災害への対応に関する一考察
【報告者】熊本市都市政策研究所 研究員 羽廣 正樹



講演要旨


都市の緑を巡る最近の動向


 都市環境に係る課題として、気候変動への対応、生物多様性の保全、Well-beingの向上といった課題があり、国内でも対応がなされています。また日本では、人口減少・少子高齢化という基盤となる課題があり、国、都市、さらにはコミュニティレベルで様々な課題があるのが現状だと思います。
 近年、都市の緑を考えるときに、グリーンインフラという言葉が使われます。緑は様々な役割を果たしており、それを活用した地域や都市づくりに取組むという考え方です。グリーンインフラのよい点は、やり方次第で様々な波及的な効果が期待できる点や、誰もがつながりやすいという点があります。
 さらに緑には管理が必要ですが、そこから生まれる恵みもあります。例えば、森は成長するため管理します。そこで剪定枝等が出てきて、薪ストーブ、工芸等に使うことができます。
 このように様々な課題を考えるうえで、緑は可能性を秘めています。そのような中で2024年「まちづくりGX」の一環として都市緑地法が改正され、2027年GREEN×EXPO2027(国際園芸博覧会)が開催されます。緑への取組が重要視されつつあり、主流化の動きがあっています。


都市の緑の量×パブリックオープンスペース   


 2021年のOECDの各国首都における緑の量を比較すると、昔から東京は平面的にみても人口を加味しても少ないです。
 都市の緑の量や質を考えたときに、これまでは都市公園などの公有地の緑を整備してきましたが、一方で民有地の緑は減少しており、これからは民有地の緑も重要になると思います。
 このような背景から国も都市緑地法の改正で、主に民有地の緑地を保全する「特別緑地保全地区制度」に力を入れています。また民間事業者が都市開発時に優良な緑地をつくることを後押しする「優良緑地確保計画認定制度」を創設しました。
 都市の緑の位置づけとして、土地所有で分けると公有地と民有地があります。基本的にはどちらも、それぞれで所有・管理しますが、今は公有地の緑に民間が入って質の高い緑をつくろうとしています。一方で民有地の緑では、公開していくという方向性が顕著であり、利用や官民協働管理の側面で公共性を帯びる時代になってきたと思います。このように行政も民間も関われる、あるいは考える必要性のある緑があると思います。


都市の緑の質×プロセスとマネジメント


 緑の質の向上を考える際には、どのようなプロセスがあり、どのような人たちの関わりが重要なのかを考えざるを得ません。これに関して、私が1番長く関わっている「都市近郊の管理放棄樹林地の再生(松戸市)」を例にお話しします。

【管理放棄されたかつての里山】

 松戸市の里山は、ごみの投棄場所になっており、かつての里山のように使いながら循環させることができていませんでした。

【里山としての管理】

 そこで、まずはよく手入れされた綺麗で清潔な里山を目指しました。廃棄物の除去や下草刈り、危険な枝の除去、貴重な植物を保全して、緑地の質が担保されました。この時点で、担い手はどうするのかが重要になります。また活動の参加者は、樹林地にはたらきかけることで、里山の恵(楽しみ)を得ることができます。この状態が再生の初期段階かと思います。

【新しい里山としてのマネジメント】

 次の段階として、外に活動を開いていく、周知する、賛同者を得る段階になります。公開を前提とすると、その場所が地域にとってどのような存在なのか考えます。またもっと管理の担い手が必要で、土地所有者・行政・企業などと連携して地域の財産にしていくことになります。そうすると、維持管理の担い手のみならず、行政や企業は、それぞれの担い方を考えることになります。
 この段階で地域に開かれた公共性のある緑地として意味を持ちます。また活動を続ける過程で人の輪が形成されます。さらに担い手が増えると担い方も多様になります。

【新・里山を通じた地域づくり】

 これまでの段階を経て、民有樹林地の保全活動を公開する取組「オープンフォレストin松戸」を始めました。この取組は、市民団体、土地所有者、行政、企業等が連携して実施しており、主に民有樹林地で音楽会や森の恵みを楽しめる企画を実施しています。地域に向けて「森が綺麗になり、公共性のあるイベントの実施や様々な人とタイアップして活動して、それを地域に広げていく」という趣旨で10年ほど続いています。
 なおこの話を公園に置き換えると、公園を再生するためには公園を基軸にして様々な分野とつながることが重要であり、これからのまちづくりを考えたときに、これが重要なのだと思います。


緑を通じたネットワーク×まちの未来


 ネットワーク(場所のつながり)も重要であり、様々な切り口があります。このつなぐ場所に、公共性の高い民有地の緑も入れるべきだろうと思います。また緑をマネジメントする際には、様々な人と手をつなぐ必要があり、緑には様々な人と手をつなげる素地があると思います。またつながることで様々な分野での可能性が考えられます。このように緑からまちづくりができるのではないかと思います。
 「緑は緑」と縦割りになっていないでしょうか。分野や主体ごとで縦割りにならずに考えると、緑はこれらをつなぐ場になる。そういった社会が来るといいなと思います。


※講演会要旨の文責は都市政策研究所にあります。
※内容の詳細は講演録をご覧ください。

    【アンケート結果】
     当日参加者の皆さまにご協力いただいたアンケートの結果を掲載します。
     (自由記述の回答などの一部は除いています。)





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