熊本市は水道水源のすべてを地下水でまかない、「日本一の地下水都市」といわれています。
この豊かで良質な地下水を育むしくみは、世界有数のカルデラ火山・阿蘇と土木の神様・加藤清正が深く関わっています。
阿蘇火山は約27万年から9万年前にかけて4度にわたる大火砕流噴火を起こしました。この火砕流が厚く降り積もって、水を通しやすい熊本の大地を形成しました。これが地下水を育む土台となります。
それから約420年前、加藤清正が熊本に入り、白川中流域に堰や用水路を築いて水田を開きました。白川中流域の水田は通常水田の5倍~10倍も水が浸透するという特徴を持っており、この水田から大量の水が地下に供給されます。
阿蘇の生み出した「自然のシステム」と、清正はじめ、先人の努力による「人の営みのシステム」が絶妙に組み合わさって、熊本の地下水はできているのです。

熊本地域の地下水かん養量は約6億4千万立方メートル、うち約2億1千万立方メートルが水田からのかん養によるもので、全かん養量の約3分の1を水田が担っています。(熊本地域地下水総合保全管理計画:平成20年9月)
特に、白川中流域の水田は、県市共同で行った調査により、他地域に比べ約5~10倍のかん養能力があることが判明しており、約9千万立方メートルの地下水をかん養するなど、熊本地域の大きなかん養域となっています。
しかし、宅地化や転作により、水田の作付面積は年々減少し続けており、地下水減少の大きな要因となっていることから、地下水を守るために水田を守っていくことが必要です。

白川中流域水田において実施している水田湛水事業の継続を行うにあたり、令和6年2月熊本市と大津町、菊陽町及び水循環型営農推進協議会は「白川中流域における水田湛水推進に関する協定」を更新しました。
協定書には、平成16年度より実施してきた水田湛水への助成をはじめ、白川中流域農業及び地下水かん養機能の重要性に関する住民の相互理解の促進、関係地域の住民等の交流促進、環境保全型農業や農産物の地産地消の普及啓発等が盛り込まれています。
この事業は、白川中流域の転作水田で、営農の一環として行われる湛水に対して、熊本市が助成金を交付し、地下水のかん養を推進するものです。
事業のしくみは、まず、熊本市、大津町、菊陽町、白川中流域土地改良区協議会、JA菊池大津中央支所、JA菊池菊陽中央支所、JA熊本市東部支店で構成する「水循環型営農推進協議会(以下、営農推進協議会)」が、農家に対して転作水田での湛水の普及・指導を行います(水循環型営農推進運動)。湛水が、農地の地力向上や害虫の駆除など、営農上効果があるからです。この湛水が結果、地下水かん養に大きく貢献するため、下流の熊本市が助成金を交付しています。
具体的には各農家は営農推進協議会に湛水の申し込みをし、営農推進協議会がとりまとめて、市に助成金交付を申請します。市は一括して営農推進協議会に対して助成金を交付し、営農推進協議会を通じて助成金が農家に支払われます。
地下水を育む白川中流域の水田

【助成の対象】
■白川中流域の6堰(畑井手堰、上井手堰、下井手堰、迫・玉岡井手堰、津久礼堰、馬場楠堰)から取水される白川の
河川水によってかんがいされる水田であること
■大津町・菊陽町・熊本市に所在すること
■湛水が営農の一環であること
■5月から10月までの期間に実施される湛水であること
■連続して0.5ヶ月以上4ヶ月以内の湛水であること
【助成対象となる湛水の方法】
■大豆作付け前、収穫後の湛水
■人参作付け前、収穫後の湛水
■飼料作物作付け前、収穫後の湛水
■主食用米作付け前、収穫後の湛水
■その他の作物の作付け前、収穫後の湛水で協議会が営農の一環として推奨する湛水
※湛水とは水田などに水を張ることをいいます。

※湛水状況【営農上の効果】
湛水は連作障害の防止や土壌病虫の駆除に効果があるとされ、地力の向上、農薬使用量の低減による経費節減及び地下水汚染の防止など様々な効果やメリットがあります。
また白川の河川水はミネラルに富み、湛水によって土壌中のミネラルが増えていくことがわかっています。
【お米の地下水かん養効果】
白川中流域でお米を1キログラム作ると、約20立方メートルの地下水かん養効果があります。
1キログラムのお米を食べると、一人が使用する生活用水使用量の3ヶ月相当分をまかなったことになります。
「水の恵み」は地下水をかん養した白川中流域の農地で栽培された安全かつ高品質な農産物で、地下水保全にも大きく貢献しています。
「豊かな地下水を育むネットワーク」の会員が水張りした水田で生産するにんじん、さといもなどは「水の恵み」のブランド名で販売されています。
また、「水の恵み」ブランドの野菜を用いた料理の試食会をイベントの中で開催するなど、地下水を育む農産物の地産地消の促進に取り組んでいます。
