胎児期及び妊娠期
妊娠中は女性ホルモンの急増、だ液分泌量の低下、食事回数の増加、つわりによる不十分な歯みがきなどが原因で、むし歯や歯周病にかかりやすくなります。お母さんが重度の歯周病にかかっていると、低体重児出産(出生体重2,500g未満)や早産(22〜36週で出産)を引き起こす恐れがあります。妊娠する前よりもお口の中のキレイを保ちましょう。
〔実践ポイント〕
✤出産前後は歯科医院に行くことが難しくなります。つわりがおさまり、体調が安定してくる妊娠中期(5〜7か月)に歯科健診を受け、必要な治療は済ませておきましょう。熊本市では各区役所保健子ども課で妊産婦健康相談日に歯科衛生士による歯科相談を実施しています。詳しくは「妊婦歯科健康診査について
」をご覧ください。
✤つわりで歯みがきがしづらいときは、歯ブラシのヘッドが小さいものを選び、気分が良いときに丁寧にみがきましょう。こまめにうがいをすることも良いでしょう。
✤デンタルフロスや歯間ブラシを使って歯と歯の間の汚れも落としましょう。
✤赤ちゃんのむし歯予防のために、家族みんなのお口をきれいにしておきましょう。
乳幼児期
熊本市は3歳児のむし歯有病者率が20政令指定都市の中でワースト1であり、むし歯が多い地域です。乳歯のむし歯は永久歯に影響するため、乳幼児期のときからお子さんのむし歯予防に取り組みましょう。
〔実践ポイント〕
✤仕上げみがきを毎日しましょう。
✤おやつは糖分が少なく栄養があるもの(果物、野菜、おにぎり、乳製品など)を与え、「だらだら食べ」にならないようにしましょう。
✤フッ化物配合歯磨剤を使用し、歯を強くしましょう。うがいができない年齢のときは、ジェルタイプやスプレータイプを使いましょう。
歯が生える前から、生えてきたら
✤子どもを仰向けに寝かせ、手足やお腹を触り、徐々に頬や唇を触りましょう。そのまま口の中を触り、少しずつ口の中を触られることに慣れさせましょう(口の中は清潔な手で触ります)。
✤濡らしたガーゼでやさしく歯の周りや歯肉、頬の内側等を触るのも良いです。

歯の長さが3mmくらいに伸びてきたら
✤歯ブラシは本人用と仕上げ用の2種類を準備し、仕上げ用の歯ブラシで仕上げみがきをしましょう。本人用は柄が太くて短いもの、仕上げ用はヘッドが小さく柄が長いものを使います。
✤寝かせみがきの姿勢で、両手を使ってみがきます。歯ブラシを持っていない手で唇をめくったり、頬を膨らませたりしながらみがきます。上唇の裏にある上唇小帯(すじ)に歯ブラシが当たると痛がるので気をつけましょう。
✤歯と歯肉の境目、歯と歯の間、奥歯の溝が汚れやすくむし歯になりやすいところです。注意してみがきましょう。歯と歯の間には子ども用のデンタルフロスを使いましょう。
✤仕上げみがきを短時間で終わらせ、たくさん褒めてあげましょう。ただ、汚れを確実に落とすことが大切です。そのためには寝かせみがきの姿勢で行うことが一番です。
【動画で学ぶ仕上げみがきの方法】
仕上げみがきの動画は、こちら
(外部リンク)をご覧ください。
学童期
この時期は乳歯から永久歯に生えかわる大切な時期です。乳歯と永久歯が混在するため歯ブラシが届きにくい場所が多くなり、むし歯になりやすいです。また、あごの成長のためにも、好き嫌いなく何でもよく噛んで食べる習慣づくりが大切です。
〔実践ポイント〕
✤6歳臼歯(乳歯の奥歯の後ろに生えてくる大きな永久歯)は本人あるいは保護者が気付きにくくむし歯になりやすいです。完全に生えきるまでは丁寧にみがきをしましょう。
✤小学校3〜4年生までは、仕上げみがきを毎日しましょう。
✤おやつは甘いものを控え、時間と回数を決めて「だらだら食べ飲み」にならないようにしましょう。
✤フッ化物配合歯磨剤を使用し、歯を強くしましょう。
✤生えかわりの時期は、食べ物が噛みにくくなります。ゆっくりよく噛んで食べるようにしましょう。
中・高生期
思春期は「第二次性徴期」といわれ、ホルモンバランスが大きく変化する時期です。
このホルモンの変化で歯周病菌が増加し、歯肉炎を起こしやすくなります。
また、部活動や勉強で食生活を含めて不規則な生活を送ることが多く、歯みがきもおろそかになりがちです。
規則正しい生活を送るように心がけましょう。
〔実践ポイント〕
✤歯と歯肉の境目の汚れを歯ブラシの毛先を使って落としましょう。
✤デンタルフロスも使って歯と歯の間の汚れを落としましょう。
✤定期的に歯科健診を受け、歯と口の状態を確認しましょう。
✤規則正しい食生活を心がけましょう。
✤コンタクトスポーツ(サッカー、ラグビー、バスケットボール等)や野球などを行う場合は、マウスガードを装着し、歯の外傷を防ぎましょう。
成人期
元気で生き生きと生活するためには、おいしく食べることも大切です。歯や歯肉にトラブルがあると食べる楽しみが減ってします。
歯を失う原因の約3割はむし歯、約4割は歯周病です。大人のむし歯は治療したところから再びむし歯になる「二次う蝕(しょく)」と、歯周病や加齢により歯肉が退縮して歯の根本がむし歯になる「根面う蝕」があります。
また、歯周病は成人の約8割が患っているといわれています。
歯を失わないためにもむし歯と歯周病の両方に注意しましょう。
〔実践ポイント〕
✤歯と歯肉の境目の汚れを歯ブラシの毛先を使って落としましょう。
✤デンタルフロスや歯間ブラシを使って歯と歯の間の汚れも落としましょう。
✤詰め物やブリッジなどの処置を受けた歯は、より丁寧に汚れを落としましょう。
✤たばこは歯周病の最大のリスク因子になります。禁煙に努めましょう。
✤よく噛んでだ液をたくさん出すようにしましょう。
✤間食回数や夜食、「だらだら食べ」に気をつけましょう。
✤定期的に歯科健診を受け、歯と口の状態を確認しましょう。熊本市では歯周病検診を行っております。令和2年度の対象者は、新型コロナウイルス感染症の影響により昨年度受診できなかった41歳・61歳の方が、受診できるように、年度内に40・41歳、60・61歳になる方です。詳しくは「歯周病検診を受けましょう!
」をご覧ください。
高齢期
加齢とともに飲み込みがうまくできない、食べこぼしが増えた、よく噛めない等、歯と口の機能が低下することを「オーラルフレイル」といいます。
オーラルフレイルの状態が続くと、食べる量が減ることで低栄養状態になったり、誤嚥性肺炎を招いたりすることにつながります。
いきいきとした健康ライフを過ごすために、お口のケアとお口のトレーニングを実践しましょう。
〔実践ポイント〕
✤部分入れ歯の方は、入れ歯を外してから、自分の歯をみがきましょう。入れ歯もキレイに洗い、入れ歯洗浄剤を使用しましょう。
✤歯を失ってしまったら、入れ歯を入れて噛む力をできるだけ回復させましょう。
✤歯と口の機能を保つために、口のトレーニングをしましょう。トレーニングの方法は「リンク」のページから、日本歯科医師会テーマパーク8020の動画を参考にしてください。
✤年齢とともにだ液の量も減ります。食事の前に唾液腺マッサージで口の中を潤しましょう。
✤定期的に歯科健診を受け、歯と口の状態を確認しましょう。後期高齢者医療制度に加入されている方は「後期高齢者歯科口腔健診(後期高齢者医療被保険者対象)のご案内
」をご覧ください。
歯みがきの基本
✤歯ブラシの選び方
・ヘッドの大きさは自分の親指の幅くらいか、もしくはそれより少し小さめ。

・毛の硬さはふつうを選びましょう。
・むし歯予防には「デッキブラシタイプ」の歯ブラシを、歯周病等で歯肉に炎症がある方は、毛先が細くなっている「テーパード毛タイプ」の歯ブラシを使用しましょう。(歯肉が改善したらデッキブラシタイプに切り替えましょう。)

デッキブラシタイプ テーパードタイプ
・毛束の列は3列タイプが歯と歯肉の境目に当てやすいです。
✤歯ブラシの持ち方
・歯ブラシは鉛筆を持つように握ると、力が入りすぎることなくみがけます。

ペングリップ パームグリップ
✤歯ブラシの当て方、動かし方
・歯ブラシは歯と歯肉の境目に、歯の面に対して垂直に当て、小刻みに動かし1本ずつみがきましょう。

・歯肉に炎症がある時は、「テーパード毛タイプ」の歯ブラシを斜め45度にあて、振動させるように動かしましょう。

✤その他
・歯磨剤(歯磨き粉)をたっぷりつけてしまうと、それだけでみがいた気分になってしまうので注意しましょう。
・歯ブラシは月1回を目安に交換しましょう。
フッ化物について
フッ化物は、以下の働きによってむし歯予防に効果があります。
(1) フッ素が歯に取り込まれ歯の質を強く丈夫にする
(2) むし歯菌の働きを弱める
(3) 歯の表面の再石灰化を促進し、初期むし歯を修復する
フッ化物の利用方法と予防効果
フッ化物の利用方法 | むし歯予防効果 |
フッ化物配合歯磨剤(1000ppm以下) | 20~30% |
フッ化物歯面塗布(9000ppm) | 30~40% |
フッ化物洗口(250~900ppm) | 50~80% |
参考:医歯薬出版(株)「新フッ化物ではじめるむし歯予防」
◇フッ化物配合歯磨剤
・フッ化物配合歯磨剤使用後のうがいの回数は軽く1~2回にすると、むし歯予防の効果がアップします。
・使用量は下記のとおりです。
年齢 | 使用量 | 歯磨剤のフッ化物濃度 |
歯の萌出〜2歳 仕上げ磨きに保護者が行う | 切った爪程度の少量 | 500ppm (泡状歯磨剤ならば1,000ppm) |
3歳〜5歳 | 5mm以下 | 500ppm (泡状またはMFP歯磨剤ならば1,000ppm) |
6歳〜14歳 | 1cm程度 | 1,000ppm |
15歳以上 | 2cm程度 | 1,000ppm~1,500ppm |
参考:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット

◇フッ化物歯面塗布
・歯科医院で歯にフッ化物を塗るむし歯予防法です。定期的(年3~4回)に受け、継続することでむし歯予防の効果があります。
◇フッ化物洗口
・適量のフッ化物が入った洗口液を口に含み、約1分間ぶくぶくうがいをするむし歯予防法です。
・熊本市では保育所等や小学校で実施しています。保育所等での実施については、熊本市健康づくり推進課「保育所・幼稚園・認定こども園におけるフッ化物洗口事業について」をご覧ください。
リンク
◉日本歯科医師会テーマパーク8020
各世代のポイントを動画で分かりやすく学ぶことが出来ます。
リンク先はこちら
(外部リンク)です。
◉厚生労働省 e–ヘルスネット
「歯・口腔の健康」からデンタルフロスと歯間ブラシの使い方の動画を閲覧することができます。
リンク先はこちら
(外部リンク)です。