【市長発表:一年を振り返って】
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それでは、年末の記者会見をはじめさせていただきます。本日は、この1年を振り返りましての所感などのお話しさせていただきたいと考えております。
今年は、市長就任後丸2年が経過をいたしまして、任期4年の折り返し点を迎えたところであります。初登庁以来、「初心」を忘れることなく、六十七万熊本市民の負託に応えるべく、新たな対応や迅速な決断に努めてまいりましたが、一日一日を市長という重責を感じながら、気がついたら2年が経っていたという感想でございます。
とりわけ、国の三位一体改革の全体像もまだまだ不透明でございますし、さらには、現下の厳しい財政状況の中で、地方自らの知恵と工夫によりまして独自のまちづくりを行うことが強く求められますなど、地方を取り巻きます環境は依然厳しく、それだけに市政運営もますます難しくなってきているのではないかと実感をいたしております。
また、今年は新潟県中越地震をはじめといたしまして、記録的な集中豪雨また台風の上陸など全国的にも大きな自然災害が多発をいたしまして、本市でも台風18号などによりまして大きな被害を受けたところであります。一瞬のうちに生命財産を奪い取る自然災害の怖さを改めて感じますとともに、災害に対する日頃からの取り組みの必要性を痛感をいたしまして、防災体制及び危機管理体制のさらなる徹底を図らねばならないと意を新たにしたところでもございます。
このような厳しい状況の中ではございましたが、今年は、本市にとりまして、新しい熊本づくりに向けまして、本格的な取り組みをはじめた年でもありまして、将来の市政発展を左右するような重要事業にも確実な一歩を踏み出すことができた年ではなかったかと感じております。
本日は、皆様のお手元にお配りしておりますが、今年3月に「自然と調和した市民が主役の活気あるくまもとの実現」を目指しまして策定いたしました、「まちづくり戦略計画」それと「行財政改革推進計画」に沿って、今年取り組みました主な事業等をお示ししながら、今年を振り返らせていただきたいと考えております。
まずは、「まちづくり戦略計画」におきまして、重点的に取り組む3つのターゲットの一つとして掲げております「良好な環境を未来へと引き継ぐまち」であります。
新年早々今年1月でございましたが、本市と大津町、菊陽町との間におきまして、全国で初めてともなります「水田湛水推進協定書」の調印を行いまして、本市の貴重な財産であります地下水を守りますために、市域を越えまして、水田を活用いたしました湛水事業への取り組みをはじめたところであります。また3月には「熊本市ごみ減量・リサイクル推進基本計画」を策定いたしまして、市民・事業者・行政の三者協働での取り組みとして、106店舗に環境にやさしい店「よかエコショップ」の認定証を交付いたしましたほか、節水パートナーシップ会議の開催など、市民協働による環境保全施策を推進してきたところでございます。
そして、このような取り組みが高く評価されまして、今月、環境大臣表彰をお受けしたところであります。清れつな地下水や豊かな緑は、熊本ブランドとして、本市が誇る魅力のひとつでもございます。この受賞を励みに、今後も市民の皆様方と一緒になって「良好な環境を未来に引き継ぐまち」に取り組んでまいりたいと考えております。
次に「子どもたちが健やかに成長するまち」でございます。
子育て支援につきましては、「まちづくり戦略計画」にも掲げ強力に推進していくことといたしておりますが、今年6月には、先駆的総合的取り組みが評価されまして、厚生労働省から「子育て支援総合推進モデル市町村」の指定を受けたところであります。今後この指定による補助事業等を活用しながら、さらに取り組みを進めていきたいと考えております。
また、今年は、地域での子育て支援のために、新たに、小島、西里子育て支援センターを開所いたしましたほか、保育園の待機児童解消を図りますために、21年ぶりになりますが、新たな保育園の設置認可をすることといたしまして、平成20年度までに5ヶ所の保育園の設置を進めてまいります。早速、今月には第一次分といたしまして、2ヶ所の設置を決めたところでございます。また、児童虐待への対応といたしましては、6月に、市内の全保健福祉センターにおきまして児童虐待相談員を配置いたしましたが、11月末現在におきまして、電話相談やまた面接などで、延べ250件の児童虐待や育児不安などの相談があっているところでございます。
そのほか、市立横手保育園におきまして、県内の公立保育園で初の障害児デイサービスを開始いたしましたほか、ネットワーク型療育体制に向けまして、療育ネットワーク連絡協議会代表者会議の設置などの取り組みもはじめたところであります。
今後も、引き続き、このような事業を積極的に進めますとともに、先月答申を受けました次世代育成支援行動計画策定委員会からの「熊本ひびけ!子ども未来プラン」に沿いまして、今後、子どもたちを安心して生み育て、子どもたちが個性や能力を発揮できる環境づくりに向けまして具体的な取り組みを進めていきたいと考えております。
また、今年は、少人数学級のモデル校での実施を踏まえまして、少人数学級に関する検討委員会から「最終報告」をいただきましたが、その報告書で示された今後の具体的方策の趣旨を尊重いたしまして、県事業として導入されている小学校1,2年生への35人学級の実施に加えまして、市単独で小学校3年生の35人学級を実施してまいりたいと考えております。その実施時期につきましては、経費面の問題や指導方法の検証などを総合的に検討する必要がありまして、現在、教育委員会と協議しているところでございます。
そのほか、安心して学校生活が送れるように、全国で始めて、市内全小学校に学校安全対策緊急警報システムを配備したところであります。
次に、「人々が集う元気なまち」であります。まず、新幹線全線開業の2年前倒しが正式に決定されまして、熊本駅周辺整備は急務の課題となっております。鹿児島・八代間の新幹線開業は予想をはるかに上回る効果が顕れておりまして、市民の皆様の開業への期待や関心が高まりますなど、本市といたしましても、熊本駅周辺の整備は、早急に、そして着実に進めていかなければならない最重要事業であると改めて認識をしているところでございます。
このような中で、今年5月には、副知事・副市長をトップといたします「新幹線新駅周辺整備推進会議」を設置いたしまして、熊本駅周辺の将来ビジョンを明確にいたしますとともに、開業までに整備を完了する事業を定めますなど、具体的な整備計画の策定を着実に進めているところであります。
また、この計画の策定に当たりましては、市民の皆様はもとより各界各層から広くご意見を伺い、それを反映させていきますために、「熊本駅周辺まちづくり推進協議会」、並びに、新熊本合同庁舎建設に伴う周辺地区の整備等についての検討を行いますための「新熊本合同庁舎及び周辺地区整備協議会」を設置いたしまして、皆様をはじめ国・県関係団体と一体となって取り組んでいるところであります。
このほか、熊本駅の正面に位置し、熊本の玄関口にふさわしい景観の形成と都市機能面での充実が必要とされます熊本駅前の東A地区市街地再開発事業につきましては、準備組合をはじめ関係者の方々にご了解をいただきまして、熊本市施行で進めることといたしました。
先般、新幹線新駅周辺整備推進会議におきまして駅周辺整備についての中間発表がまとめられまして、その全体像が見えてきたところでありますが、現在、市民の皆様方からのご意見をいただいているところでもありまして、今後、事業費の積算などを行いまして、来年3月末までには整備方針を決定する予定でございます。
限られた時間の中で、2010年度の新幹線全線開業に向けまして、今後も、熊本駅周辺整備に全力を傾注してまいりたいと考えております。
また、中心市街地での賑わいの創出につきましても、今年は、これまで実施してまいりました事業の見直しや、また新規の事業を行ったところであります。まず、「くまもと夏のお城まつり」につきましては、その実施時期、内容等の見直しを行いまして、1ヶ月間のロングランで開催いたしますとともに、今回初めての試みといたしまして「午後5時以降に浴衣で来園された方は無料入園」とする企画も実施し、大変好評を得たところでございます。一方、「秋のお城まつり」では、城下町とお城の連携として、開催期間中に、シンボルロードの一部を歩行者天国にして、「城下町大にぎわい市」を開催いたしました。またその夜には「熊本城400年と熊本ルネッサンス県民運動本部」の皆様による「みずあかり」が開催されますなど、官民一体となった取り組みにより相乗効果を生みまして、多くの来場者に好評をいただき、2日間で4万8千人もの市民や観光客で賑わいを見せ、経済波及効果も2億5千万円を記録したところであります。
また、11月には市街地中心部に600人の雇用が見込まれます大型コールセンターの誘致が決定をいたしまして、雇用創出や中心市街地の活性化など、本市の経済浮揚に大きく貢献できるものと期待をしているところでもあります。
次に、「まちづくり戦略計画」とともに、市政改革の柱となっております「行財政改革推進計画」についてでありますが、国においては、三位一体改革による地方財政制度の大幅な見直しが進められておりまして、今後さらに厳しい財政運営が予想されるところであります。
本市におきましても、国の改革の影響を受け厳しい財政運営が続くものと予想されますが、景気の動向に配慮しながら、財政健全化に向けて計画的に取り組んでいるところであります。現在の財政状況といたしましては、平成14年度決算と比較をいたしまして、15年度決算で公債比率が21.6パーセントから20パーセントへ、市債残高が一人当たり450,727円から433,702円、総額として108億円の減少となりまして、着実に健全化に向けて成果がみえつつあるところであります。
また、行政改革の取り組みといたしましては、市民と市政情報の共有化を図りますための市政情報プラザを4月に開設いたしましたほか、7月には100名を超える市民の皆様からなる「協働のまちづくりをすすめる市民会議」から、「(仮称)熊本市自治基本条例」素案の提言書をいただいたところであります。その後、市民会議素案を広く市民の皆様に知っていただきますために、シンポジウムや地域説明会等を開催いたしまして、ご意見をいただきますとともに、行政内部での検討、法的整理などを行いまして、来年の第1回定例市議会への提案を目指して、現在パブリックコメントを行っているところであります。今後、市民の皆様の意見を受けまして、修正すべき点は修正を加え、よりよい条例にしてまいりたいと考えております。条例素案の全文は、市政だより1月号やまたホームページでも公開いたしておりますが、できるだけ多くの市民の皆様からご意見をいただきたいと思っておりますので、報道機関の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。
次に、市民サービスの改革といたしましては、市民の利便性及びサービスの質的向上を図りますために、まず4月に、やさしい窓口づくりへの取り組みといたしまして、市庁舎1階にフロアマネージャーを配置したほか、7月には市庁舎1階市民課窓口に、高齢者の皆様に特に好評となっておりますローカウンターを設置をいたしたところであります。そのほか、市民の個人情報の保護を図りますために、「住民基本台帳に係る個人情報の保護に関する条例」を制定したところであります。この条例は、全国に先駆けまして制定したということで、視察を含め30を超える都市から問い合わせがありまして、本市同様に条例の策定を検討している自治体もあると伺っており、本市の先駆的な取り組みに一定の評価をいただいているものと考えております。
また、将来にわたって継続できる制度といたしますために「さくらカード」の運賃の一部負担や、また事業の拡充を進めますための「児童育成クラブ」の有料化などを実施させていただいたところでもあります。特に実施にあたりまして、様々なご意見をいただきました「さくらカード」の運賃の一部負担につきましては、一定のご理解をいただいているものと考えておりますが、今後も障害者へのパス券方式も視野に入れまして、利便性の向上につきまして検討を重ねてまいりたいと考えております。
また、熊本都市圏における交通渋滞の緩和と公共交通の利便性確保に向けた取り組みといたしましては、バス網の再編の中で、今年は、市営バスの川尻帯山線(市道経由)の民間バス会社への移譲を行ったところであります。また熊本電鉄の市電結節につきましても現在、国において調査が行われておりまして、今後も国・県・関係自治体と一体となって都市圏全体の交通網整備に取り組む必要があると認識いたしております。
そのほか、指定管理者制度の導入や土地開発公社の廃止、さらにはアウトソーシングの推進として、本市中心部の10小学校区での燃やすごみなどの収集運搬業務、日吉・藤園の2つの共同調理場の民間委託など、準備に着手いたしたところであります。
また、財政負担の平準化や民間のノウハウを活かしますために、本市ではじめてPFI手法を、(仮称)総合保健福祉センターに導入することといたしました。
そのほか、新しい行政課題に即応するために、観光やITなどの分野におきまして、専門的知識や経験を持つ人材を広く民間から求めますために、「任期付職員の採用等に関する条例」を議会に上程いたしましたが、残念ながら否決をされたところであります。しかしながら、今後、市民ニーズや時代の変化に対応してまいりますためには、様々な手段によりまして専門的知識を持つ人材を確保していくことが必要であると考えております。
次に、政令指定都市への取り組みについてであります。先般、相模原市長・姫路市長と共に、政令指定都市の指定の弾力化について、国に対して要望を行いますとともに、県知事に対しましても、新法の下で県が策定する新たな合併の構想に、本市を含む枠組みを位置づけてもらうことなどを要望したところであります。その後、総務大臣とお会いする機会がありまして、政令指定都市移行に向けて激励をいただいたところでもあります。今後、市民の皆様、経済団体、そして近隣自治体の皆様にも、政令指定都市の必要性についてご理解をいただきますとともに、その機運の醸成に努めてまいりたいと考えております。
最後になりましたが、政策推進体制を強化し、これまで述べてまいりました様々な事業を効果的かつ円滑に推進いたしますために、4月に各局に「政策調整班」を置きますとともに、経営戦略会議を設置したところであります。特に、経営戦略会議では,重要案件につきまして審議をいたしまして、これまで23回に及ぶ会議を開催いたしまして全庁的な事業推進に努めてきたところであります。
以上、今年実施をいたしました主な事業を中心に、1年を振り返ってまいりましたが、新しいくまもとづくりは着実に進んではおりますものの、まだ本格的な取り組みはこれからというものもございます。いずれにいたしましても、新幹線の全線開業や政令指定都市移行などを見据えながら、来年も引き続き、市民の皆様とともに、市政発展のために職員一丸となって取り組んでいく覚悟であります。
報道機関各位におかれましても、今年、賜りましたご協力に心から感謝申し上げますとともに、来年も同様のご理解、ご協力をいただきますようお願い申し上げまして、一年を振り返っての所感とさせていただきます。それでは、質問をお受けいたします。