【市長発表:大規模商業施設の出店に向けた、開発行為の事前審査申出書に対する結果について】
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緊急にお集まりいただきまして感謝を申し上げます。
昨年10月20日付けにおきまして、イオンモール株式会社から本市開発指導要綱第3条の規定に基づきまして、本市佐土原地区における大規模商業施設の出店に向けました開発行為の事前審査申出書が提出された件につきまして、本日、相手方に対しまして事前審査の結果を通知いたしましたので、皆様方にお知らせをいたします。
その内容といたしましては、本事前審査申出にかかわります開発予定区域は、熊本都市計画区域内の市街化調整区域でありまして、都市計画法第34条におきまして、市街化調整区域にかかる開発行為につきましては、当該申請にかかる開発行為が同条1~10号のいずれかに該当すると認める場合でなければ許可権者は開発許可をしてはならないと定められております。
本申出にかかわります開発計画の内容から該当の可能性がある条文といたしましては、同条10号のイでありますが、これにつきまして、国土交通省の「開発許可制度運用指針」及び本市開発許可申請の手引きの「市街化調整区域における大規模開発行為の取り扱い方針」に従いまして審査をいたしました結果、「本市都市マスタープラン」におけます土地利用の基本方針との整合性、あるいは広域交通拠点へのアクセスなど、当該開発計画が及ぼします熊本都市圏の交通影響などから「熊本都市計画区域における計画的な市街化を図る上で支障がないと認められるもの」とはいえないと判断をいたしまして、その結果、都市計画法第34条各号のいずれにも該当しないことから、当該事前審査にかかわります開発行為につきましては許可できない旨を申請者に通知をいたしたところであります。そこで今後、イオンモール株式会社が、本事前審査申出にかかわります開発行為につきまして許可申請を行なわれましたとしても、本市としては同様に取り扱うことといたしております。
本件に関しては、基本的には開発行為の問題ではありますが、本案件が都市計画はもとより、重要な広域交通拠点である空港とのアクセスなどへの影響をはじめといたしまして、市民生活、地域経済、環境保全など、幅広い分野に様々な影響を与えることが予想されますとともに、賛成、反対の立場から私や議会に対しまして、多数の請願や陳情が寄せらますなど市民の皆様方に高い関心がある問題であります。
更に、今国会におきまして関連法案が議論されますなど、いわゆるまちづくり三法の見直しが進められている中であることなどを鑑みまして、幅広い観点から慎重な審議検討が必要であると判断をいたしまして、昨年7月に副市長を議長といたしまして、庁内関係部局による対応会議を設置し、協議を重ねてきたものであります。
具体的には、当該地の農業の現状と将来方向、立地に伴う交通予測・解析、既存の郊外大型ショッピングセンター来店者へのアンケート調査、中心商店街や地域商店街への影響調査、地下水や大気などに対する環境影響調査、他都市の事例調査などを実施いたします一方で、同時期に設置をいたしました学識経験者などからなります「中心市街地活性化に向けた土地利用研究会」での議論等を踏まえながら、検討を行ってまいりました。
その中で、最終的には、当該開発予定区域に隣接をします市街化区域では第一種低層住居専用地域の良好な住宅地が形成をされておりまして、本市都市マスタープランでも当該地域は、良好でゆとりある住宅地としての土地利用を維持、又は促進するとしておりますことから、事前審査申出書で提出されたような、7万㎡を超えます大規模な商業施設の計画は、周辺の土地利用状況、将来的な土地利用の観点から、本市都市マスタープランとの整合性が図れず、計画的な市街化を図る上におきまして支障がないとは認められないと判断をいたしたものであります。
ここで、各分野におけます検証結果について概略を説明させていただきますと、まず、交通問題に関しましては、当該予定地が本市のみならず、熊本都市圏の骨格を形成いたします放射環状道路のひとつであります第2空港線に隣接をいたしておりまして、この道路は現状でも混雑傾向にありますが、大規模商業施設が立地をいたしました際には、大変な渋滞を引き起こす恐れがあり、本市が実施をいたしました交通予測調査結果によりますと、現在、都心部から空港までの所要時間約35分が、出店後には約60分になりますなど、バスの定時性確保など、本市のみならず、熊本都市圏、さらには熊本県域全体に極めて大きな影響を及ぼすことが予測をされます。
さらに、環境保全の観点からは、本地域の年間地下水かん養量は約26万立方メートルと推計をされまして、本市域内の貴重な地下水かん養域であります。加えてまして、本地域は砥川溶岩が分布をしておりますために、地下水汚染が発生した場合には短期間、広範囲に拡散する恐れがある区域であることなど、地下水の水量及び水質の保全の観点から慎重な対応が必要とされております。
加えまして、本市商業への影響についてでありますが、平成16年度に行ないました通行量調査では、中心商店街の通行量が約12%減少いたしております。このような中心部での通行量の減少は、大規模商業施設の立地だけがその要因ではありませんものの、このような状況を見ますときに、近年の郊外大規模商業施設の出店が、中心市街地やあるいは地域商店街へ大きな影響を与えておりますところは間違いのないことでありまして、今回の施設計画規模が九州最大規模ということを考えますと、その影響はこれまで以上に大きいと予想されまして、この点からも慎重な対応が必要であると考えております。
その一方におきまして、大規模商業施設の出店による効果といたしまして、地域の活性化、消費生活の利便性向上、雇用の拡充、税収の増加等が考えられるところであります。
この中で、一般消費者にとりましては、利便性の向上や選択肢の拡大が期待でき、消費生活の向上に寄与するものと考えておりますが、一方におきましては、交通手段が基本的に自家用車に限られる施設でありまして、大規模商業出店によります地域の商店街やスーパー等が疲弊をいたしますと、今後、少子高齢化が進みます中で、高齢者などのいわゆる交通弱者にとりましては、日常の買い物の場が無くなる可能性も懸念をされます。
また、雇用面から申し上げますと、これまでの実績等から、パート等の臨時雇用を含めまして2,000名を超える規模の新規の雇用が見込まれますが、その一方におきましては、既存小売業界の廃業、縮小による雇用の減少も指摘をされているところであります。
加えまして、税収面から申し上げますと、本商業施設の出店によりまして固定資産税など数億円程度の市税収入の増加が見込まれますが、一方におきましては、既存小売等の廃業、縮小等による減収の可能性も指摘をされておりまして、このように、消費生活の利便性向上、雇用の拡充、税収の増加等に対する出店効果につきましては、一概に言えないと考えております。
最後に、本件に関連いたしまして、本市の今後の取り組みにつきまして簡単にご報告を申し上げます。
今、地方自治体には、地方分権の進展に伴いまして、自立した都市経営が求めらます中で、本市におきましては、九州新幹線の全線開業への対応、さらには将来の道州制移行時の州都を見据えまして、熊本都市圏の連携協力の下で政令指定都市の実現等を図り、九州中央の拠点都市としての位置づけを確立することを最も重要な都市戦略として掲げているところであります。
このため、本市まちづくり戦略計画等におきましては、新幹線新駅となります熊本駅周辺から中心市街地に至ります一帯を重点的に整備する地域として捉えておりまして、特に、西日本最大級のアーケードを持ちます中心市街地は本市の顔でもありまして、今後、商店街関係者とともに、更なる魅力向上に努めていかなければならないと考えております。
現在、商店街の方も、大規模商業施設の出店や今回の開発計画等を契機に、例えば、四季折々のまつりを企画実施されますなど、商店街が自ら連携し魅力づくりに取り組まれつつありますが、今後は、さらに、このような商店街の自助努力が強く求められております。本市といたしましても、このような自主的な取り組みを積極的に支援いたしますとともに、さらには市民の皆さんと協働で、本市のみならず九州の顔となるような中心市街地づくりも進めなければならないと考えております。
このようなことから、今後本市におきましては、改正が予定されております中心市街地活性化法に基づく中心市街地活性化基本計画の策定に向け、官民共同で取り組むこととしております。
加えまして、中心市街地のみならず、日常の消費活動はもとより地域コミュニティ等を醸成する役割等も担っております地域商店街につきましても、それぞれの地域特性を活かした魅力作りに商店街の方々とともに取り組んでまいりたいと考えているところであります。
また、今回の出店計画に際しましては、地元の方々から当該申請の早期許可を求める陳情も頂いているところでありまして、私としてもこの地域の開発促進を望んでおられる方が多数いらっしゃることは十分認識をいたしているところであります。
この地域は地下水保全や自然環境の保全などの多面的機能も有しておりますが、周辺の市街化地域におきましては都市化が進んでおりまして、本市といたしましては、将来的にはこのような多面的な機能への配慮や周辺環境や都市計画との整合性を図ることを前提といたしまして、良好な住宅地などの農地以外の土地利用が可能な地域と捉えているところであります。
そこで、今後は、本市におきまして、都市計画法の改正等を睨みまして、現在の都市マスタープランに基づきます土地利用計画の策定に取り組むことといたしております。その中で、中心市街地では、多様な都市機能の拡充・展開の観点から、そしてその他市街化区域におきましては、地域商店街及びコミュニティ施設等、それぞれの拠点性を生かしたまちづくりの観点から、さらには、市街化調整区域におきましては、将来にわたり保全すべき地域と、将来の市街化の動向によっては計画的な市街化を許容する地域とに区分したところでの今後の展開方針を定める観点から、それぞれの土地利用方針を定めていくことといたしております。
最後に、繰り返しになりますけれども、今回の判断につきましては、多方面から慎重な協議、検討を重ねた上での結論でありまして、開発許可の陳情を頂いた住民の皆様方、さらには申請された事業者の方には、ぜひご理解を賜りたいと存じます。私からの発表は以上でございます。何か質問があればお受けをいたします。