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令和7年第1回臨時市議会 市長提案理由説明

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令和7年第1回臨時市議会 市長提案理由説明

 提案理由の説明に先立ちまして、熊本市電の脱線事故についてお詫びと御報告を申し上げます。
 昨年十二月三十一日に、熊本城・市役所前停留場付近におきまして、低床電車が脱線する事故が発生いたしました。幸いにも乗客の皆様に怪我はありませんでしたが、発生当日から一月二日までの間、水道町から辛島町までの区間を運休し、年末年始の外出にご不便を生じさせる事態となりました。
 このように、利用者や市民の皆様に多大なご迷惑をおかけしましたことに、議員各位をはじめ市民の皆様に対しまして、深くお詫び申し上げます。
 昨年の度重なる事故やインシデントを踏まえ、安全対策を最優先課題として取り組んでいる中、さらに脱線事故という重大事故を生じさせたことは、熊本市電の信用を大きく失墜させる事態であり、大変重く受け止めております。
 原因は、レールの変位によるものであると報告を受けていますが、施設の適切な維持管理は安全運行の根幹をなすものであることから、交通事業管理者に対し、当該脱線箇所はもとより、全線にわたり再発防止に向けて適切な対応を図るよう、厳しく指示をいたしました。
 今後とも、市民の皆様が、熊本市電を安心してご利用いただけるよう、安全管理体制の再構築に努めてまいります。

 それでは、提出議案について、説明に入らせていただきます。
 ただいま上程されました議 第1号 「熊本市役所の新庁舎建設の賛否を問う住民投票条例の制定について」につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。

 地方自治法第七十四条第一項の規定に基づき、有権者の五十分の1以上の署名をもって、去る令和六年十二月二十五日に熊本市役所の新庁舎建設の賛否を問う住民投票条例の制定請求がありましたので、本条例を付議するものであります。
 この議案につきましては、同条第三項の規定により、条例制定請求に対する市長の意見を付して議会に付議することになっておりますので、ここで私の意見を申し述べます。

 熊本市役所の新庁舎整備事業は、これまで長きにわたる市議会議員の皆様との議論はもとより、多くの市民の皆様からご意見をいただきながら、慎重に検討を重ねてまいりましたので、はじめにその経緯について触れたいと思います。
 現庁舎は、昭和五十六年の竣工以来、一度も大規模な改修を実施しておらず、建物全体の老朽化が進み、長寿命化に向けた検討を進める中で、平成二十八年に熊本地震が発生したことを受け、平成二十九年度に、大規模改修の手法検討調査と併せて、重要な防災拠点施設である現庁舎の耐震性能調査を実施いたしました。
 その結果、現行の建築基準法等が求める耐震性能を有していないことが判明したため、今後の庁舎整備の考え方について検討を進め、令和元年度に「本庁舎等整備に関する基本構想」を取りまとめました。
 その後、当該耐震性能調査の結果について、一部の専門家から疑問が呈されるとともに、市議会からも様々なご意見をいただいたことから、令和二年度に更なる調査を実施したところ、現行の建築基準法等が求める耐震性能を有していないという結果が再び示されました。
 これに対して更なる検証を行うべきとのご意見も示されたことから、改めて耐震性能の有無を含め多角的な視点で審議を行うため、令和三年に本庁舎等整備の在り方に関する有識者会議を設置し、本庁舎等の整備の在り方について諮問いたしました。


 有識者会議では、予断を持たず、現庁舎の建て替えの是非を含め、耐震性能の有無だけでなく、防災、財政、資産マネジメント、まちづくりなどの多角的な視点で本庁舎等の整備の在り方について審議が行われました。
 その結果、令和五年五月三十日に、有識者会議から「現在の本庁舎は、現行の建築基準法等が求める耐震性能を有しておらず、周辺への影響やアスベストの含有などの要因により耐震改修の実現性が低く、機械設備が地下に配置されているなど、防災拠点としての機能を果たすことができないリスクがあること、また、来庁者の待合スペースが狭く、様々な市民の相談室が不足していること、さらには、職員の執務環境が狭あいであり、周辺の民間ビルを賃借していることなど、様々な課題を解消し、市民サービスの向上並びに、職員の働き方にも配慮した適切な庁舎規模を備え、将来の社会情勢の変化にも柔軟に対応し容易に機能転換ができるよう、建て替えるべきである」との答申が示されました。
 この答申を踏まえ、令和五年第二回定例会において、あらゆる災害から市民の皆様の生命・財産を守ることに加え、市民サービスの更なる向上を図るため総合的に勘案し、現庁舎を建て替えるという市の方針を示しました。
 その上で、市民の皆様との意見交換の場である「市長とドンドン語ろう!」、市民アンケート、サウンディング型市場調査及び市民説明会を行い、社会情勢の変化や技術の進展等を踏まえた新庁舎の機能及び規模、建設候補地等について検討を進めるとともに、市民の皆様の代表である市議会議員の皆様にも御議論いただいてまいりました。

 これらの検討等を踏まえ、熊本市役所の新庁舎の目指すべき姿、規模、概算事業費、建設地等の新庁舎整備の基本的な考え方を「熊本市新庁舎整備に関する基本構想」として改めて策定し、令和六年第三回定例会において、新庁舎整備に係る基本計画の策定並びに基本設計及び実施設計の実施に必要な予算について議決をいただきました。

 次に、新庁舎整備に係る今後の方針ですが、基本構想におきまして、新庁舎の目指すべき姿として、「あらゆる災害に対応できる庁舎」、「市民が利用しやすく、質の高い行政サービスが提供できる庁舎」及び「まちの賑わいに貢献し、まちづくりの核となる庁舎」の三つを掲げております。
 とりわけ、本市では、平成二十四年七月に発生した九州北部豪雨、平成二十八年四月に発生した熊本地震等、市民生活に甚大な被害を及ぼす自然災害が多く発生いたしました。今後も、熊本地震以上に大きな地震、気候変動の影響による水害その他の大規模な自然災害がいつ発生するか分かりません。そのため、あらゆる災害に対応する防災拠点施設として、安全かつ継続的に機能する新庁舎を整備することは、行政の責務であると考えております。
 併せて、年齢、障がいの有無等にかかわらず、誰もが利用しやすく、効率的で質の高い行政サービスを提供できる新庁舎を目指すとともに、市民の皆様に親しまれ、様々な世代の方が気軽に集うことができるにぎわいと憩いの場所となるよう整備を行いたいと考えております。
 また、市民の皆様がこれまで以上に愛情や誇りを持てるまちとして、さらには、国内外の人々をひきつける魅力的なまちとして、本市が持続的な発展を遂げるためには、この新庁舎整備を、単なる施設の更新ではなく、新たなまちづくりの好機としていかなければなりません。このようなことから、現庁舎跡地については、本市の一等地にふさわしい利活用を通じて、多様なにぎわいを生み出すとともに、その周辺においても、民間企業の経済活動を後押しするような多面的な支援策により、新たな都市機能の誘致、老朽建築物の建て替えの促進を図り、これらのにぎわいを中心市街地全体に波及させてまいります。
 このように、新庁舎整備はもとより、これを契機としたまちづくりを通じ、災害に強く、にぎわいにあふれ、本市の歴史や文化と調和した、強くて魅力的なまちの実現に不退転の決意で取り組みます。

 次に、条例案の問題点につきましては、住民投票の成立要件に関する規定がないことなど、議案別紙に記載のものや、それ以外にも散見されると考えております。

 最後に、条例案の制定に対する私の意見ですが、本庁舎等は、重要な防災拠点施設であり、災害時において、市民の生命及び財産を守るために必ずその機能が維持されなければなりません。
 また、合併による市域拡大及び政令指定都市への移行に伴い、市役所が担う事務の量とこれに従事する職員の数がともに増加し、本庁舎等内の執務スペース、待合スペース等の不足・狭あい化が進んだ結果、市民の皆様から御不満の声をいただいております。
 そのため、現庁舎の建て替えは重要な施策であり、その実施については災害リスク、事業費、長期的な視点での本市の財政負担、まちづくり等の様々な情報からなる複雑多岐にわたる論点を踏まえて、総合的に判断されるべきであります。そして、その判断を行うのは、市民の皆様の代表であり、重要な意思決定に関する事件を議決する役割を担っておられる市議会であると考えております。

 一方で、条例の制定の請求をはじめとする直接請求制度が、市長及び議会による間接民主主義を補完するため、重要な意義を持っていることは理解しております。しかしながら、現庁舎の建て替えにつきましては、六年以上にもわたる市議会における議論はもとより、「市長とドンドン語ろう!」や市民説明会、市民アンケート等を通じて、広く市民の皆様から御意見をいただき、その意見を反映しながら検討を進めてきたものであります。
 また、現庁舎の建て替えには、一定の財政負担が生じるため、その負担を可能な限り軽減することも重要です。有利な財源である合併推進債を活用することにより、市の財政負担を大幅に軽減することができますが、その活用条件は、令和六年度中に新庁舎整備に係る実施設計に着手することであり、活用期限が迫っております。この機会を逃せば、この軽減分について将来の世代に負担を強いることとなります。

 現庁舎の建て替えは、これらの議論等を踏まえて基本構想を策定し、新庁舎整備に係る基本計画の策定並びに基本設計及び実施設計の実施に必要な予算について、市議会による十分な審議を経て議決をいただき、事業を進めております。
 これまで広く市民の皆様から御意見をいただきながら、市民の皆様の付託を受けた私と市議会議員の皆様とで多くの議論を重ね、まちづくりを含めた多角的な観点から総合的に検討を進めてきた中で、熊本市役所の新庁舎建設について単に賛否を問う住民投票を行うことは、この六年以上にも及ぶ熟議を顧みないものであり、認めがたいものであると考えます。

 以上のことから、本庁舎の建て替えにつきましては、今後もより積極的な情報発信に努めるとともに、アンケート、ワークショップ、パブリックコメント等を実施し、広く市民の皆様の御意見をいただきながら、地方自治制度の根幹をなす議会制民主主義の手続に沿って進めてまいりますので、私は熊本市役所の新庁舎建設の賛否を問う住民投票条例を制定する必要はないと考えます。

 熊本市役所の新庁舎建設の賛否を問う住民投票条例の制定についての説明及び条例制定の請求に対する私の意見は以上です。

 以上で説明を終わりますが、何とぞ御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

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