【記者】令和7年当初予算に関してお伺いします。当初予算のテーマを、「心をつないで くまもとの未来へ」と掲げられたことや、様々な課題がある中で、特に3つの項目に重点配分されることとされた、市長の思いやねらいを改めてお聞かせください。
【市長】年明けの記者会見において、私の今年の漢字を『心』とさせていただきましたが、これは本市が抱えている様々な課題について、市民の皆さまと心をつないで共に乗り越えたいという思いを込めて、掲げさせていただきました。
特に重点項目として掲げておりますこども施策につきましては、688億ということで過去最大の予算となっております。こどもは熊本の未来を担う宝であるということ、そして子育て支援も含めてですが、未来に希望を持てるような熊本、皆さんの心を繋いで未来に向かっていきたいと、そういう決意を込めて「心をつないで くまもとの未来へ」というテーマといたしました。
目玉として掲げていますこども施策の充実強化ということに関しては、688億円の予算を上程させていただいております。子育ての支援等々もありますが、前回の記者会見で発表させていただきました、熊本出会いサポートセンターKumarryのような結婚支援という事業もありますし、特にこども誰でも通園制度に関しては、昨年まで試行的に進めてまいりましたが、利用しやすいという声をたくさんいただきましたので、本格的に実施しようということで、今回予算を上程させていただいております。それから児童育成クラブも、非常にニーズが高まっている一方で、現場は大変な状況になっておりますので、こういったところの体制の強化、そして子育て応援サイトはリニューアルを行います。
それから、保育所等におけるこどもの安心安全な環境整備に向けた、こどもの性被害防止の対策支援事業やこどもの居場所の支援事業など、こどもの居場所が非常に重要だということは、昨年市長とドンドン語ろうでいろいろと意見交換をしていく中で、重要性を増しているなと考えたところです。それから、一時的に家庭での養育が困難となった方々を支援する、子育ての短期支援事業など、こうした取組を非常に充実させたということです。
その他にも、未来という意味ではTSMCの進出によって、シリコンアイランド九州の中心都市として、熊本都市圏は今後どんどん集積が増えていくだろうと見込まれているわけですが、今後、誘致強化と共に環境保全ということで、良質な地下水を守る。ここに対する不安感が非常に大きいですよね。産業が今から発展していくと農地が減ったり、それから地下水が汚染されたり量が減ったりするんじゃないかなど、こういったところにもしっかりと対策を打ちながら、未来に繋いでいくということが非常に重要になってまいります。
それから、当然のことながら企業誘致をすれば、交通渋滞等の対策をさらに求められるということとなりますので、今回112億円の渋滞対策に関する予算を計上しておりますが、公共交通の利用促進を促すための民間事業者への支援は、非常に重要になってくると思いますので、ここにかなり重点化をさせていただいているということでございます。大まかなにはこういうことです。
【記者】当初予算の重点ポイントについてお伺いします。先ほど3点挙げられましたが、市民の関心が高い新庁舎整備や市電の安全対策についても予算を計上されていると思います。そのあたりの重要性について、市長のお考えをお聞かせください。
【市長】特に、市民の皆さんの関心が高い新庁舎整備に関しては、今回約2億の予算を計上させていただいていますが、これは皆さんと一緒に基本計画基本設計を作っていくという、具体的な作業がこれからスタートをしていくということになります。
多くの皆さんにワークショップに参加していただいたり、それからシンポジウムを開催して、いろいろなまちづくりの関係者の皆さんからのお話を聞いたり、他都市の事例等も聞きながら、熊本がこれから未来に向けて、どういうまちづくりをしていけばいいのか、これは庁舎だけではなく、庁舎が例えば移転した時、その跡地をどうするかということについても、今後いろいろな検討が必要になってきます。そういったことに対する経費というものも、今回予算を計上させていただいております。
それから市電についても、延伸に関しては一旦予算も減額させていただきますが、やはり安全対策については交通事業の中でしっかり行っていくということ、それから、いろいろな設備が老朽化したり、更新の費用等も必要になってまいりますので、そうしたものについてもしっかり重点的に対応していきたいと考えています。まずは安全安心、ここを市民の皆様に確実なものとしてご提供させていただけるように、全力で頑張りたいと思っています。
【記者】新庁舎整備に関してお伺いします。新庁舎建設の賛否を問う住民投票を求める声もある中で、説明会の費用も計上されていると思います。今後市民への理解の浸透をどのように図っていくのか、もう少し詳しく教えてください。
【市長】これまでも、議会においていろいろと議論をさせていただいたわけですが、今後、また新たなステージに新庁舎の問題が移っていくという中で、市民の皆さんには、これまでの経緯、それから疑問点もたくさん出されており、既にいろいろと説明は申し上げているのですが、なかなかご理解をいただけないとか、そこは知らなかったということがあるかと思いますので、分かりやすく、例えば市政だよりのような形で皆さんに情報を提供したり、それからそういうワークショップ等々でも、お話をさせていただいたりということで、しっかりとした説明責任を果たしていきたいと考えております。できるだけ分かりやすくを心掛けていきたいです。
【記者】議員全員会議において市長は、学校給食費の無償化について検討したいと述べられました。市としてはこれまで、負担軽減について検討して来られたかと思いますが、それを前進させるという理解でよろしいのでしょうか。併せて、無償化の予算規模やスケジュール感についても教えてください。
【市長】給食費に関しましては、これまで全国において負担軽減など、いろいろな声がございました。地域によっては、無償化を実施している自治体もあります。政令指定都市では、大阪市が実施しておりますし、現在福岡市が検討に入っているということですが、小中学校の給食費を完全無償化にしようとした場合の財源が、約35億円かかるということになり、かなり大きな予算となります。
完全無償化がなかなか大変な状況の中で、国に対してこれまで市長会等を通じて、他の地域との差が出ないように検討していただけるようお願いをしてきたわけですが、今、食材(の価格)が高騰しているということもあって、皆さんの負担感は非常に強くなっていると思います。今回、給食費の食材費について、料金を改定するという提案をさせていただくことになっているのですが、この分についても今後は、国のいろいろな支援を使いながら、保護者の皆さんの負担は軽減したいと思っています。
一方で、全体としての給食費のあり方について、この無償化について我々熊本市としても検討していこうということで、今回舵を切ろうということとなり、こうして全員会議の中で発表させていただきました。今後、2月議会で活発な議論になると思います。これまでも具体的にどのような検討をしていくのか、35億円の財源をどうするのかということも含めて、個別にいろいろな議論がなされているところですが、今後、給食費の無償化をどう位置づけるのか、どういう形がいいのかということに関して、議会でも真剣にご議論をいただいて、これからの我々の方針を固めていこうと考えているところです。
【記者】福岡市では2025年度中のスタートを表明されているかと思いますが、熊本市でのスタートの目処は立っていますでしょうか。
【市長】これから議論をスタートさせるということを、今回議員全員会議の場で表明をさせていただきました。具体的なスケジュールについては、財源が一定程度の目処が立ちませんとスタートできませんので、実施時期については、この場で具体的に申し上げるような状況にはありませんが、今後、実施時期についても、議会とご相談をしながら早く皆さんにお知らせできるように検討していきたいと考えています。
【記者】学校給食費の無償化についてお伺いします。これは熊本市として、小中学校の給食費の全面無償化を目指していくという理解でよろしいでしょうか。
【市長】(無償化を)目指して検討していくということです。これまでは、国からの一定程度の補助等々で、給食の食材費が高騰した部分に対して抑えるような措置など、そういったことはやってきましたが、抜本的に給食費の無償化について、具体的な検討を始めるというようなご理解をいただければと思います。
【記者】学校給食費無償化の必要性について、市長はどのようにお考えなのか、改めてお聞かせください。
【市長】無償化は、例えば低所得者の方々に対しては就学援助などの措置もありますので、貧困対策ではないということを明確に申し上げておきたいと思います。
学校給食は、教育を受ける権利に紐づいた普遍的なユニバーサルサービスでもありますので、所得の多い少ないを問わずに、無償化について検討をする必要性があると考えています。そして、子育て世代の皆さん方に対しては、経済的にも一人当たり月約6000円で、毎年7万円弱ぐらい費用がかかりますので、経済波及効果が非常に大きいのではないかなと考えております。ただ一方で、財源をどうやって確保するのか、この35億円は毎年捻出しなければなりません。ですので、ビルドアンドスクラップということで、いろいろと考えていく中で、どういうあり方があるのかというのは、全庁的に検討していかなければなりません。
ですので、すぐに給食費完全無償化です、とここで言えれば1番いいのですが、なかなかそういう状況でもありませんので、いろいろな検討をしていく中で、できるだけこどもたちに安全でおいしい給食を満足して食べてもらい、そして経済的な負担も軽減させていきたい、そういった思いを持っているということです。
【記者】大腸がん検診の無償検診についてお伺いします。全国初の取組になるという事ですが、改めて実施に踏み切った市長の思いをお聞かせください。
【市長】まず、熊本市はがん検診自体の受診率が極めて低いということです。
熊本市は、市民10万人あたりの医師数や医療機関が非常に多いので、恵まれた環境にあると思いますが、一方で、何かあったときには病院にかかるとは思いますが、何かある前に予防しておけば、医療費も非常に少なく済みますし、皆さんが何よりも健康であることこそ人生が非常に豊かなものになるわけですから、早く予防していただきたいという思いを持っています。
ですが、これまでどれだけ積極的に勧奨してもなかなか受診に繋がらずに、我々としては何かインパクトがあることをしっかりやっていきたいなという思いを持っていました。ただ、なんでも無料にすればいいということではなく、きちんと効果があるものに対して無償化する。今回の大腸の内視鏡の検査というのは、55歳から60歳の期間に受けていただくと、かなりがんのリスクが低減できるということが、医師会やそういった関係の皆さんからいろいろとお話を聞く中で方向性が見えてきたということがあります。 そのうえで、1回でも検査を受けていただくと、ポリペクといって、ポリープ等が見つかった場合には検査を行いながら切除することもできるということで、かなりこれは効果が高い。
先ほど申し上げましたように、死因の中のトップに入るぐらいこの大腸がんは非常にリスクの高いものですが、逆に良性のポリープを早めに見つけておけば、その後に例えば便の潜血検査等々でもある程度経過がわかりますし、あるいはご本人が定期的に、その後自分で気をつけて検査を受診していただければ、大腸がんに罹患するリスクを格段に減らす効果があるということから、全国で初めてとなりますが、こういう形での取組をすることといたしました。
検査1回当たりの費用が結構かかるものではありますが、私も何度も受けていますし、ポリペクもやったのですが、非常に効果が高いと思います。ただ、時間をかけて検査を行う必要がありますので、通常の検査よりも長く時間はかかりますが、ぜひ皆さんには受けていただきたいなと思います。
【記者】西区二本木の道路陥没に関してお伺いします。下水管の老朽化との因果関係に関して、現時点で分かっていることがあれば教えてください。
【市長】現時点では、わかっていません。事務局からご説明いたします。
【事務局】現在原因を調査中ですので、原因が分かり次第対応させていただきたいと思います。
【市長】このように、いつどこで、こういう陥没等が起こってもおかしくないのが、今の日本全国の状況だと思います。もちろん、我々は定期的に検査をしていますし、調査も今回かなり重点的にやっていくことにしています。ですので、皆さんには冷静にしていただきたいと思います。
これから非常に老朽化が進んでいきます。これまで計画的に我々もやってきましたので、今のペースでいけばなんとか対応できる状況で、今ずっと更新をかけていっています。ですが、どうしても先ほど申し上げたように、大きな財政的な支出も伴うということで、時間もかかりますから、できるだけ計画的に進めていくということです。
そして、今回のような大きな事故につながらないようにするために、我々も最大限の要望をしていきたいと考えております。
【記者】更新には費用と時間がかかるということで、現時点で水道料金の値上げを検討しているのでしょうか。
【市長】現在、水道料金の値上げに関しては検討していません。
今まで実は値下げもしていません。水道料金は据え置きしていますので、必ずしも潤沢に財源があるわけではありませんが、値下げをしなかった分こうした投資に回しています。熊本市では今、水道に関して言えば耐震性の高い管路に更新した割合は80%を超えていますので、全国でもトップレベルの更新をさせていただいております。今後、上水道、下水道ともに一定の費用が必要になってくるということが出てきますと、やはりそういったことをお願いせざるを得なくなるかと思います。全国的に料金を値下げしたり据え置いたりということで、そこに充分な投資をしてこなかったということは、ある程度負担をお願いしていくこともおそらく全国的に今後出てくるだろうと思います。
管路を敷設するときに、かなりの経費がかかります。例えば、過疎地域みたいなところに管路を敷設していきますと、人が少ないが経費がかかる。それを簡単に料金に乗せてしまうと、その地域の皆さんは非常に負担感が強くなるということで、結構抑えて全国的にはやっているケースが多いと思います。
ですから、料金的には本当に必要な予算に対して、実はかなり低く設定されていると見ていただいた方がいいのではないかと思います。ただ、そうは言っても急激に料金を上げるというわけにもなかなかいかないでしょうし、その辺は、いろいろと料金の政策もあるでしょう。これからの計画で、こういうことが必要になってきてこういうことをお願いせざるを得ないとなれば、しっかりと説明して、料金の値上げについてもお願いしていくべき時期が来るのではないかと考えております。現在はそういうところまではまだいっておりませんが、今後、精査していくということになるかと思います。
【記者】市電の延伸について、今回、予算を取り下げるということで、2026年の着工、2031年度の開通に関しての影響や今後の進め方について見通しを伺います。
【市長】市電の延伸に関しましては、今回、お認めいただいた予算を減額するという極めて異例なお願いを議会にするということで、大変申し訳なく思っております。ただ、今、安全対策を最優先に考えるということで全力を挙げておりますが、市電の延伸の方針については変わらないということです。延伸に関しては進めていくのですが、そのスケジュールについては、高度化計画等々も再度申請するということでもあり、それから安全対策についても、国に対して報告もしっかりしていくという必要がありますので、それらを見た後ということになります。現時点では、目標としている開通時期等については当然見直さざるを得ないという状況にあるということですが、それがいつ頃になるのかについてはまだ述べられる状況ではないとご理解いただければと思います。
【記者】時期は遅れそうだが、目処がいつなのかはまだ決まってないということでしょうか。
【市長】そうです。実際に、目標としていた時期の開業は、困難であることは間違いないと思います。
【記者】自動運転バスの実証実験に関して伺います。1月30日の追突事故によって延期ということですが、今回の事故についてどのように分析をされているかということと、今後の見通しを教えてください。
【市長】ちょうど実証実験の前段階のテスト走行という形で走行していました。1月30日の午後に自動走行でテスト走行中に、厩橋付近の熊本城稲荷神社の方に曲がるところで歩行者が来て検知をしたため、減速し停車していましたが、後方から来た右折中の電鉄バスのサイドミラーが自動運転バスの後方に接触して、自動運転バスのリアガラスなど車体の後ろの部分を破損したということが事故の状況です。
詳細については検証して調査をしているところですが、自動運転バスには不自然な動きやシステムの異常は確認されていません。私自身も実際にドライブレコーダーの動きを見せてもらいましたが、後ろから来たバスが急に走り出したということでしたので、後ろのバスに過失があったと私自身は見ております。これは後から警察やいろいろな関係者の皆さんの調査の結果が出てくると思います。
今、神奈川県の平塚市にある工場で、その車両のセンサー類や車体の破損状況の調査と修理を行っておりまして、センサーなど他の問題に影響がないかということで全て調査をして、修理をして問題がないということであれば、改めて現地で自動走行の調整や運行トレーニングを行い、そのうえで熊本にまた持ってきて本格的な運用・実証実験をスタートするということになると思います。ただ、その修理も含めてまだ日程がはっきりしていませんので、一般運行についてはまた改めて確定次第お知らせしたいと思っております。
自動運転に関して、今回事故があったので余計に皆さん認識されたとは思いますが、バスの運転手さん、普通に営業している運転手さんたちがちゃんと自動運転バスを認識しているかどうか。事故が発生した地点は普通のバスも左折をし、停まるので、自動運転だろうが一般の運転車両だろうが問題はないと思いますが、自動運転バスをバスの事業者の皆さんや他の交通で事業されている方など、そういった車両を運転される方にも認識をしていただかなければいけませんので、そういったことに対する周知はもう少し徹底する必要があると思いました。副市長を通して各交通事業者に対しては改めて、そういった周知をさせていただくことにしております。