熊本市都市政策研究所では、新型コロナウイルス感染拡大による熊本市の経済・市民生活再建のためには、市民の中にどのような不安や意見・要望等の課題があるのかを分析することが必要であると考え、熊本市が令和2年(2020年)3月上旬に実施したヒアリング調査により得られたテキストデータについての計量テキスト分析を行いました。
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分析対象データの内容
令和2年(2020年)3月9日~13日に、熊本市が関連団体(268団体)を対象として実施した訪問・対面によるヒアリング調査を各担当が要約してテキスト化したデータ(文字数約45,000字)
分析手法
分析者の主観や恣意性を極力排除し客観性を高めるため、テキストデータを単語に分解し、数量(語の使われている回数(頻度)や共起の相関等)から分析する手法である計量テキスト分析を用いた。本分析では、分析ソフトウェアであるKHCoderを用いて分析を行い、共起ネットワーク図に表した。
分析結果
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共起ネットワーク |
【共起ネットワーク図】
分解した語と語が同じ文脈中に出てくる関係にあることを共起関係という。本分析では、KHCoderを用いて語間の共起関係を分析し、共起ネットワークとして図示した。共起ネットワークとは、共起関係がある語同士を線で結んだ図であり、線が太いほど共起関係が強い(共起している回数が多い)ことを示している。本分析では、10回以上出現している語について分析し、共起関係上位300位以内(共起の組み合わせとして、出現頻度が高い上位300ケース)を図示している。また、語の周りの円の大きさは語の出現頻度を示しており、大きいほどその語が出現する回数が多いことを示している。
【声の大きさ(出現頻度)に着目した分析※主体・分野を問わず大きな声】
(1)広範な活動中止に対する声
集会・イベントの中止 / 会議、遠足を中止した / 行事や会合等がすべて中止となり など
(2)時期の見通しが立たないことに対する声
いつまで継続できるか不安 / いつまで続くのか見通しが持てない / 終息の見通しが立たず新年度の事業計画も立てづらい など
(3)物資(マスク・消毒液など)の不足に対する声
マスク不足が深刻である / マスクやガウン、ゴーグル、衛生材料等の不足 / 消毒は必須だがマスクも、手に入りづらい など
(4)感染者が発生した場合等の対処法に対する声
陽性者が発生した場合の対応が不明 / 休園や職員が感染した場合の職員の確保 / 介護施設が閉鎖となった場合は など
【主体を表す語に着目した分析※特定の主体に関連して大きな声】
(1)医療機関に関する声
衛生材料・医療材料の供給不足 / 大流行となった場合の医療機関の応対力 / 施設によっては医療の継続が困難になる など
(2)店舗(経済の落ち込み)に関する声
賃貸の店舗では売り上げがなくても家賃が発生し大きな負担 / 所得の減少が懸念される / 売上が大幅に減少している業者への対応 など
(3)子どもに関する声
子どもたちの日常の過ごし方や新学期 / 育成クラブに子どもを預けるのに不安 / 子どもたちの居場所や学習補助等の対策
行事や会合等がすべて中止となり子どもたちの楽しみの場が失われた / 休校等に対応し従業員をやすませる場合 など
(4)高齢者に関する声
運動する機会が減っているため高齢者の体力低下が心配 / 楽しみに来ている高齢者の居場所がなくなり心配 など