「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が改正され、令和3年10月1日に「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されたことに伴い、同法第12条第4項の規定に基づき、「熊本市建築物等木材利用促進基本方針」を策定しました。
背景
国における法律改正の趣旨
脱炭素社会の実現への貢献が求められる中、これまで公共建築物を対象として木材利用の促進を図ってきた「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」について、より一層の木材利用の促進を図るため、民間建築物を含めた建築物一般に対象を拡げることとし、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に改正されました。
〇国における主な改正内容(抜粋)
・法律の目的に「脱炭素社会の実現に資すること」を追加
・木材利用の促進に関する基本理念を新設
・基本方針等の対象を公共建築物から建築物一般に拡大
・林業・木材産業の事業者に対して建築用木材等の適切かつ安定的な供給に努める旨を規定
・「建築物木材利用促進協定」制度の新設
これまでの経緯
平成22年10月「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」施行
平成25年3月 法第9条第1項の規定に基づき、「熊本市公共建築物等における木材利用推進基本方針」を策定
令和3年10月 「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」施行
木材利用推進本部(国)において「建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」策定
令和4年1月 熊本県において「熊本県建築物等木材利用促進基本方針」を策定
令和5年4月 国及び県の基本方針に即して、「熊本市建築物等木材利用促進基本方針」を策定
なぜ、木材を利用する必要があるのか
森林には、山地災害防止機能、水源涵養機能、生物多様性保全機能等の多面的機能を有していますが、この他に、近年では特に地球温暖化を防ぐ森林の働きが重要視されています。これは、木々が光合成することによって、温室効果ガスである二酸化炭素を吸収して蓄えることにより、大気中の温室効果ガスを減少させることにつながるためです。
これら森林の有する多面的機能を十分に発揮させるためには、森林を適切に手入れすることが必要です。森林の手入れをする担い手達は、伐採した木を売ることで収入を得て、それを元手にして苗木を植え、森林の手入れを行っています。このため、もしも木材を使わなければ、せっかく伐採した木が売れず、担い手達は収入を得ることができなくなるため、森林の手入れができなくなることに繋がります。
木材を有効利用することにより、「伐って、使って、植えて、育てる」という持続可能な森林のサイクルがうまく循環し、林業の生産活動も活発になり、森林の有する多面的機能も十分に発揮されるようになります。しかし、樹木の生長スピードには限界があるため、それを上回るスピードで木を伐採すると、最後には山に木がなくなってしまいます。つまり、木材を使わなさすぎてもだめ、使いすぎてもだめ、ということになります。日本の森林は、全体的にみると「使わなさすぎてだめ」な状態になっています。
国内における木材利用の意義
・森林資源は人工林を中心に蓄積が毎年約6千万㎥増加し、現在は約54億㎥。
・人工林の半数が51年生以上となり、主伐期を迎えつつある中、「伐って、使って、植えて、育てる」持続可能な森林経営のサイクル構築が必須。
・木材利用を促進し、山元へ再造林のための資金を還元することが必要。
・森林は二酸化炭素を吸収し、固定するとともに、木材として建築物などに利用することで炭素を長期間貯蔵可能。
・『2050年カーボンニュートラルの実現』に貢献するためにも、森林の適切な管理と森林資源の循環利用を促進することが重要。

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■人工林の齢級別面積 | ■伐って、使って、植えて、育てる(森林経営サイクル) |
若い森林を増やす必要性について
・樹木は、光合成により二酸化炭素を吸収し酸素を放出する一方、人間と同様、生きていくための呼吸もしているので、酸素を吸収し二酸化炭素を放出します。
※光合成による二酸化炭素吸収量>呼吸による二酸化炭素排出量 差し引きすると樹木は二酸化炭素を吸収していることになります。
・成長期の若い樹木は二酸化炭素をどんどん吸収して大きくなりますが、成熟した樹木は、吸収量に対して呼吸量が多くなり、差し引きの吸収能力は低下していきます。
従って、若い森林を増やすことは、『2050年カーボンニュートラルの実現』に大きく貢献できます。
熊本市建築物等木材利用促進基本方針の概要
第1 建築物等における木材の利用の促進のための施策に関する基本的事項
1.木造建築物の設計及び施工に係る先進的な技術の普及の促進等・市は建築物における木材の利用の促進のために人材育成や関係者への情報提供に努める
2.住宅における木材の利用の促進
・市は木造住宅の設計に関する情報の提供、担い手の育成等に努める
3.建築物木材利用促進協定制度の活用
市は協定制度を活用し、事業者等における木材の利用を促進するとともに、協定制度周知を実施
第2 市が整備する公共建築物等における木材の利用の目標
1.木材の利用を推進すべき市等施設及び市等工事
・対象
広く市民の利用に供される学校施設、社会福祉施設(老人ホーム、保育所等)、病院・診療所、社会教育施設(図書館、公民館等)、運動施設(体育館等)、公園施設、道路や公共交通機関に係る施設、農林水産業関係施設、公営住宅、庁舎等の公共性の高い建築物及びその附帯施設及び公共工事で設置する施設(仮設物を含む)
2.市等施設及び市等工事における木材の利用の目標
・木材利用を促進するため、市等施設で低層の公共施設は原則木造化を検討
※ただし、コスト面や技術面で木質化が困難な場合を除くことを盛り込み、木造化に対して総合的に判断
・建築物の構造に関わらず木質化が可能な床、壁等は木質化を促進。特に、市民の目に触れる機会が多い施設の内装は木質化により整備
第3 建築用木材の適切かつ安定的な供給の確保に関する基本的事項
1.木材の供給等に携わる者の役割
・木材の利用が促進されるよう、木材の適切かつ安定的な供給体制の整備に努める
・発注者や設計者との情報共有に努める
2.市の役割
・県と連携を図りながら、木材製造高度化計画(林業・木材産業改善資金の特例等に関係)の適切な運用に努める
・市等施設におけるJAS
製品及び合法木材の使用による普及、供給体制の整備の促進
・木材製造事業者への支援
・安定供給に向けた木材関係団体への助言
・無秩序な伐採の防止、再造林の促進
第4 その他市の建築物等における木材の利用の促進に関し必要な事項
1.木造計画・設計基準等の活用
・国が定める木造計画・設計基準(国土交通省)及びくまもと県産木材による木造建築物普及の手引き(熊本県)の活用
2.木材の地産地消の促進
・県内で生産又は製造された県産資材の優先使用
3.公共建築物の整備等において考慮すべき事項
・コストを考慮した効率的な木材の利用
・メンテナンス、廃棄等等も含めたライフサイクルコストを考慮
・CLT
やBP材(接着重ね材)など新たに開発された技術の活用
・建築基準法の改正(平成26 年法律第54 号)により、一定の条件を満たせば準耐火構造等での建築が可能となったことを考慮
・木造建築物は他の構造と比較し耐用年数が短期であるが、適切な措置を行った場合、長期にわたり利用が可能なことを考慮
・木質バイオマス燃料の処理経費等のコスト縮減及び燃焼灰の有効利用
関連情報(国、県関係)
林野庁HP
● 脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律
https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/koukyou/index.html
(外部リンク)
● 建築物における木材の利用の促進に関する基本方針等
https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/kidukai/kihonhousin.html
(外部リンク)
● 木づかい運動でウッドチェンジ!
https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/kidukai/top.html
(外部リンク)
熊本県HP
● 熊本県建築物等木材利用促進基本方針
https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/92/143811.html
(外部リンク)