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発掘調査中の江津湖遺跡群で、1600年前(古墳時代中期)の方形周溝墓とその埋葬施設である石棺が出土しました。石棺は2基で内部からは人骨と副葬品が出土しています。
1.発掘調査の概要
(1)調査種類 埋蔵文化財の発掘調査
(2)遺 跡 名 江津湖遺跡群(水源地遺跡)
(3)所 在 地 熊本市東区水源1丁目1番1号(熊本市上下水道局健軍配水場敷地内)
(4)調査期間 令和7年(2025年)6月9日から現在調査中
(5)調査面積 約140㎡
(6)調査主体 熊本市文化市民局文化創造部文化財課
[江津湖遺跡群とは]
下江津湖東岸を中心に広がる、縄文時代から近世にかけての遺跡です。遺跡群内の水源地遺跡では、昭和47年(1972年)に方形周溝墓の調査が行われ、昭和48年(1973年)の配水池建設の際にも7基の周溝墓が調査され、周辺の民間開発に伴う発掘調査でも複数の周溝墓が出土するなど、現在の動植物園東側の丘陵上に1600年前の周溝墓群が存在することがわかってきました。今回の調査区東側でも平成7年(1995年)に発掘調査が行われ、8基の周溝墓が出土しています。
[周溝墓とは]
埋葬施設(主体部)の周りを溝で区画した古墳時代の墓です。いわゆる古墳のように高い盛土を持ちません。区画の溝が円形であれば円形周溝墓、方形であれば方形周溝墓となります。全国的には弥生時代に作られ始めますが、熊本県内では4世紀から5世紀にかけて作られています。埋葬施設(主体部)は、箱式石棺・木棺が大半を占めます。
[今回の調査成果]
配水池につなぐ配管工事に先立ち、発掘調査を実施しました。調査の結果、平成7年(1995年)の調査から続く方形周溝墓が2基出土し、うち片方から安山岩板石を組み合わせた残存状態が良好な箱式石棺が2基出土しました。石棺が出土したのは現地表下180㎝。石棺は西側が1号石棺、東側が2号石棺で、1号石棺が内法で長さ170㎝、幅42~48㎝、2号石棺が長さ170㎝、幅34~43㎝で、内部から人骨・副葬品が出土しました。人骨の遺存状態は悪く頭骨の他は不完全な状態で、両棺ともに1体分確認されています。1号石棺には短剣・ヤリガンナ・手斧・刀子が副葬されていました。2号石棺からは、副葬品は出土していません。両石棺ともに蓋石や棺内は赤色顔料(ベンガラ)が塗られています。
〔今回調査の注目点〕
・後世の破壊を受けず両石棺ともに良好に保存されていたこと。
・1号石棺に副葬品があること。4点の鉄製品が副葬されている箱式石棺の例は少ない。
・両石棺ともに内部に炭を敷いていること。事例として少ない。本遺跡では初めて。
・残存状態が良好なため、石棺を作る際や葬送の様子が復元できること。
∴今回の方形周溝墓は、古墳時代中頃の江津湖周辺の有力者の墓と考えられます。一地域の有力者の葬送を復元し、周溝墓群の変遷を検討するための重要な成果です。他地域と比較分析することで、熊本平野の古墳時代の有力者のあり方を考えることができます。