ご注意いただきたいこと
ダニが媒介する感染症は、基本的にウイルス等病原体を保有するマダニ類やツツガムシに刺咬されることによって感染します。
咬まれないように以下のことに注意しましょう。
マダニ類やツツガムシに咬まれないように注意しましょう
特にマダニの活動が盛んな春から秋にかけては、マダニに咬まれる危険性が高まります。草むらや藪など、マダニが多く生息する場所に入る場合には、長袖・長ズボン(シャツの裾はズボンの中に、ズボンの裾は靴下や長靴の中に入れる、または登山用スパッツを着用する)、足を完全に覆う靴(サンダル等は避ける)、帽子、手袋を着用し、首にタオルを巻く等、肌の露出を少なくすることが大事です。服は、明るい色のもの(マダニを目視で確認しやすい)がお薦めです。
忌避剤の併用も効果が期待されます。DEET(ディート)やイカリジンという成分を含む虫除け剤の中には服の上から用いるタイプがあり、補助的な効果があると言われています。(記載された使用上の注意を守って使用してください。)
屋外活動後は入浴し、マダニに刺されていないか確認して下さい。特に、首、耳、わきの下、足の付け根、手首、膝の裏などがポイントです。マダニに咬まれた場合、吸血中のマダニに気が付いた際、無理に引き抜こうとするとマダニの一部が皮膚内に残って化膿したり、マダニの体液を逆流させて病原体が体内に入りやすくしてしまう恐れがあるので、医療機関(皮膚科など)で処置(マダニの除去、洗浄など)をしてもらってください。
マダニに咬まれた後、数週間程度は体調の変化に注意をし、発熱等の症状が認められた場合はすみやかに医療機関で診察を受けて下さい。 その際、マダニに咬まれたことを医師に説明して下さい。
野生動物は、どのような病原体を保有しているかわかりませんので、野生動物との接触は避けてください。
関連情報
国立感染症研究所ホームページ「マダニ対策、今できること」
(外部リンク)

マダニ対策、今できること (PDF:999.2キロバイト) 
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肌の露出は避けましょう!! | 長袖長ズボンで肌の露出を避け、忌避剤の併用も効果が期待されます |
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)患者発生について
SFTSは平成25年(2013年)3月4日、届出対象疾病となってから、熊本市では2018年に1名、2020年に1名、2021年に3名が報告されています。
熊本県内では2014年~2017年各1名、2018年5名、2019年2名、2020年6名、2021年9名、2022年5名、2023年7名が報告されています。
(2023年10月22日現在)
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とは
SFTSは、平成23年に初めて特定された新しいウイルス(SFTSウイルス)に感染することによって引き起こされる病気です。
SFTSは、主にSFTSウイルスを保有するマダニに咬まれることで感染します。
春から秋にかけて、マダニの活動が活発になりますので、森林や草地などマダニが多く生息する場所に入る場合には、長袖、長ズボンを着用するなどマダニに咬まれないよう十分にご注意ください。
これまでのところ、SFTSの患者は、西日本を中心に発生していますが、徐々に患者発生が確認された地域が広がっています。これまでに患者が報告された地域以外でもSFTSウイルスを保有するマダニや感染した動物が見つかっていますので、SFTS患者の発生が確認されていない地域においても注意が必要です。
症状
潜伏期間は約5~14日です。主にSFTSウイルスを保有するマダニに刺咬されることで感染しますが、マダニに咬まれた痕が見当たらない患者もいます。発熱、消化器症状(食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)がみられます。時に頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)、リンパ節腫脹、呼吸不全症状、出血症状(歯肉出血、紫斑、下血)がみられることもあります。致死率は10~30%程度です。
予防と対策
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などのダニ媒介性疾患の感染予防対策としては、ダニに咬まれないようにすることが重要です。
具体的には、上記に書いてある
「ご注意いただきたいこと」
を参照してください。
こちらもご覧ください。
SFTSウイルスに感染し、発症している動物や患者の血液などの体液に直接触れた場合、SFTSウイルスに感染する可能性があります。
飼育動物が体調不良の際には、咬まれたり、なめられたりしないように細心の注意を払いながら、動物病院で診てもらいましょう。
また、野生の動物はどのような病原体を持っているかわからないので、接触を避けましょう。
関連情報
(2024年度)

【事務連絡】「SFTS診療の手引き 2024」の周知等について (PDF:61.8キロバイト)

(別添)SFTS診療の手引き2024年版 (PDF:5.64メガバイト)
(2023年度以前)
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A
(外部リンク)(厚生労働省ホームページ)
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について
(外部リンク)(厚生労働省ホームページ)
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
(外部リンク)(国立感染症研究所ホームページ)

【別添1】重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に係る注意喚起について (PDF:288.7キロバイト)

【別添2】重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に係る注意喚起について (PDF:59キロバイト)
つつが虫病とは
つつが虫病は、つつが虫病リケッチアを保有するツツガムシ(ダニの一種)に刺されることによって感染する疾患です。
潜伏期間は約5~14日です。全身倦怠感、食欲不振とともに頭痛、悪寒、発熱などを伴って発症します。体温は段階的に上昇し数日で40℃にも達することがあります。刺し口は皮膚の柔らかい隠れた部分に多く、刺し口の所属リンパ節は発熱する前頃から次第に腫脹します。第3~4病日より不定型の発疹が出現しますが、発疹は一般的に顔面、体幹に多く四肢には少ないです。重症になると肺炎や脳炎症状を来します。北海道を除く全国で発生がみられます。
発生時期は春~初夏及び晩秋から冬ですが、媒介ツツガムシの生息地域によって異なります。
予防と対策
ツツガムシ(ダニの一種)に刺されないように気を付けましょう。具体的には、上記に書いてある
「ご注意いただきたいこと」
を参照してください。
関連情報
つつが虫について
(外部リンク)(厚生労働省ホームページ)
ツツガムシ病とは
(外部リンク)(国立感染症研究所ホームページ)
日本紅斑熱とは
日本紅斑熱は、病原体(リケッチア)を保有するマダニに咬まれることにより感染するダニ媒介感染症です。
近年、国内で年間400件を超える発生報告があり、死亡者も報告されています。
潜伏期間は2~8日です。頭痛、発熱、倦怠感を伴います。発熱、発疹、刺し口が主要三徴候であり、ほとんどの症例にみられます。
予防と対策
ワクチンはないため、媒介ダニの刺咬を防ぐことが極めて重要です。具体的には、上記に書いてある
「ご注意いただきたいこと」
を参照してください。
日本紅斑熱は、ヤマアラシチマダニ、キチマダニ、フタトゲチマダニなど野山等に生息しているダニが媒介すると考えられています。しかし、全てのダニがリケッチアを保有しているわけではなく、リケッチアを保有するダニに刺咬された場合にのみ感染します。患者の発生は媒介ダニの活動が活発化する4月~10月に見られ、特に9月、10月に多くなっています。
関連情報
日本紅斑熱について
(外部リンク)(厚生労働省ホームページ)
日本紅斑熱とは
(外部リンク)(国立感染症研究所ホームページ)
ダニ媒介脳炎とは
ダニ媒介脳炎は、ウイルスを保有するマダニに刺咬されることによって感染する疾患で、げっ歯類とマダニの間でウイルスが維持されています。ダニ媒介脳炎は日本ではあまり知られていませんが、世界では決してまれな病気ではありません。感染したヤギやヒツジなどの未殺菌の乳を飲んで感染することもあるとされています。
日本では1993年以降、北海道において発生が確認されています。
症状
潜伏期間は通常約7~14日です。ヨーロッパ亜型による感染では、そのほとんどが二相性の経過をたどります。第一相では発熱、頭痛、眼窩痛、全身の関節痛や筋肉痛が1週間程度続き、解熱後2~7日間は症状が消え、その後第二相には、痙攣、眩暈、知覚異常、麻痺(まひ)などの中枢神経系症状を呈します。致死率は1~2%、回復しても神経学的後遺症が10~20%にみられるといわれています。
極東亜型による感染では、ヨーロッパ亜型のような二相性の病状は呈しませんが、極東亜型に感染した場合、徐々に発症し、頭痛、発熱、悪心、嘔吐が見られ、さらに悪化すると精神錯乱、昏睡(こんすい)、痙攣および麻痺などの脳炎症状が出現することもあります。致死率は20%以上、生残者の30~40%に神経学的後遺症がみられるといわれています。
シベリア亜型に感染した場合も徐々に発症しますが、その経過は極東亜型と比較して軽度であり、脳炎を発症しても麻痺を呈することはまれです。その致死率は6~8%を超えることはないと報告されています。しかしながらシベリア亜型と進行型慢性ダニ媒介脳炎との関連が示唆されており、進行性慢性ダニ媒介脳炎では1年を超える長期の潜伏期間あるいは臨床経過をたどります。
予防と対策
病原体を保有するマダニに咬まれないようにすることが最も重要です。具体的には、上記に書いてある「ご注意いただきたいこと」
を参照してください。
ダニ媒介脳炎の流行国では、マダニが生息する森林地帯に入るなど、感染する危険性のある方に対して、不活化ワクチン(我が国では未承認)の接種が行われることもあります。日本から流行地に行って野外活動を予定されている場合は、全国の検疫所で渡航前の健康相談を行っておりますので、ご利用ください。また、帰国時に発熱などの症状がある場合は、検疫所の検疫官にご相談ください。
発生状況
日本国内では、北海道において平成5年(1993年)に1例、平成28年(2016年)に1例、平成29年(2017年)に2例及び平成30年(2018年)に1例、発生が報告されています。
世界では、ダニ媒介脳炎の患者は、毎年1万から1万5千例が発生していると推計されています。中央ヨーロッパ、東ヨーロッパの多くの国々およびロシア、中国で流行しています。
関連情報
ダニ媒介脳炎について
(外部リンク)(厚生労働省ホームページ)
ダニ媒介脳炎とは
(外部リンク)(国立感染症研究所ホームページ)
主なダニ媒介感染症
ダニを媒介する感染症は他にもあります。詳しくは、各リンクをご参照ください。
1.熊本でも感染の報告があるダニ媒介感染症
ツツガ虫病とは
(外部リンク)(国立感染症研究所ホームページ)
日本紅斑熱とは
(外部リンク)(国立感染症研究所ホームページ)
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
(外部リンク)(国立感染症研究所ホームページ)
2.北海道で感染の報告があるダニ媒介感染症(日本国内での感染)
ダニ媒介脳炎とは
(外部リンク)(国立感染症研究所ホームページ)
回帰熱とは
(外部リンク)(国立感染症研究所ホームページ)
マダニ媒介性の回帰熱に関するQ&A
(外部リンク)(厚生労働省)
エゾウイルス熱
北海道におけるエゾウイルス熱を発見~マダニが媒介する新たなウイルス感染症~ (PDF:1.18メガバイト)(現時点で全数報告の4類感染症には入っていません。)

3.熊本では感染の報告がまだないが、海外で感染する可能性のあるダニ媒介感染症
クリミア・コンゴ出血熱とは
(外部リンク)(国立感染症研究所ホームページ)
医療機関の皆さまへ
感染症法において「クリミア・コンゴ熱」は1類感染症、「回帰熱」、「重症熱性血小板症候群(SFTS)」、「ダニ媒介脳炎」、「つつが虫病」、「日本紅斑熱」は、四類感染症に指定されていますので、該当するダニ媒介感染症を診断した場合は、速やかに最寄りの保健所へ連絡、届出を行ってください。
患者の症状や所見等からダニ媒介脳炎を疑う場合には、保健所を通じて地方衛生研究所・国立感染症研究所に検査を依頼することができます。
依頼の際には、流行地等への訪問・居住歴、予防接種歴等に関する情報も併せて御提供願います。
感染症に基づく医師の届出基準・様式集(医療機関向け)
(内部リンク)(熊本市ホームページ)
感染症法に基づく医師の届出のお願い
(外部リンク)(厚生労働省ホームページ)
熊本県に生息する主なダニについて
熊本県内には、フタトゲチマダニ、タカサゴキララマダニ、キチマダニ、ヤマアラシチマダニ、オオトゲチマダニ、タカサゴチマダニ、ヤマトダニなどが生息しています。
タカサゴキララマダニ
キチマダニ ※ダニの写真は、国立感染症研究所昆虫医科学部提供