【記者】市電延伸について、日程の目標のようなものがあれば、ご説明いただける範囲で教えていただけますか。
【市長】昨年の第3回定例会において、実施設計に係る補正予算が成立いたしました。昨年末には、都市計画審議会で都市施設としての必要性が了承され、着実にこの事業を進めるところまで来ていました。そういう意味では、おおよそ予算化もできて、これから実施設計で進めていくという状況だったのですが、今、申し上げましたとおり、安全対策を最優先すること、そこに徹底的にリソースを含めて集中していこうということで、今回、見直すように指示をいたしました。
今後、延期になってどのくらい遅れるのかを皆さんお聞きになりたいところであると思いますが、現時点では未定です。今、市電の安全・安心の確保については、先ほど申し上げました、1月1日に発足した安全対策チームを中心に全力で取り組んでおります。この取組の結果、例えばレールの点検などの設備点検はきちんとできたのか、また、運転士の確保をはじめ、処遇の改善や安全教育など、いろいろなものの対策をしっかりやっていくという外部検証委員会からの最終報告書を踏まえて、取組を始めているところです。
こうしたものが確実に実行されていくこと、それから、高度化計画についても、上下分離も含めて見直しの作業を行っています。これを安全対策も含めた形で精査をして見直しをしたうえで、九州運輸局へ最終報告書等を提出することになります。当然、延伸事業についての今後の在り方については、国からもいろいろな補助をいただきますので、最終的な調整をしながら決めていくことになります。ですので、現時点でいつ頃まで延期するのかについては、はっきりお示しすることができません。
市民の皆さんが本当に安心して市電に乗れるように、いろいろなチェックをしたり、体質改善も含めて対策を行ったということを皆さんに認識していただいて、信用・信頼していただくことが最優先ですので、今はとにかく、そこに全力を尽くすことで頑張っていきたいと思っています。
【記者】自動運転バスについてお伺いします。いろいろな自治体で取り組まれているかと思いますが、概ね地方都市の買物弱者を対象としているケースが多いように感じます。今回、大都市である熊本市の中心部で実証実験を行う目的や意義、狙いをお聞かせください。
【市長】自動運転全体の意義としては、運転士不足への対応や、自動運転が可能になることで、いろいろな地域で公共交通を充実させていくことができるという意味で、地域公共交通が抱える課題を解決する方法として、全国のいろいろな自治体で取組が進んでいます。
熊本市においては、ルート選定も含めていろいろ考えたわけですが、熊本は非常に渋滞が激しい街であり、しかもクランクもあり、市電も走っていますし、なかなかルート設定のハードルが高いです。しかし、利用者がある程度集まるような地域でなければ、実験になりませんし、実証実験の中で課題も見つけていって、より安全で確実な自動運転を行っていくために、いろいろなデータも集めていきます。
そのように考えますと、熊本城周辺は観光客の方もいらっしゃいますので、比較的観光以外の、例えば物流のトラックがどんどん通る道ではなく、このエリアであれば、観光客の皆さんにご乗車していただき、駐車場と二の丸や城彩苑等が自動運転で結ばれることによって、熊本城域の回遊性を良好なものとします。現在は、しろめぐりん等も走っていますが、運転士不足で減便せざるを得ないことになっています。そういう意味では、全国の自動運転の中でも、レベルの高いといいますか、結構ハードルの高い実証実験になるのではないかと思っています。
少し道が狭い箇所もありますが、技術がかなり進んでいますので、この実証実験には大きな意義があると思っており、これから実際に走行をしばらく続けていきますので、報道の皆さんにも、いろいろな検証や関心を持っていただければと思います。
【記者】市電に関してお伺いします。安全最優先ということで、先日も九州運輸局から行政指導があったかと思いますが、その中の全線の軌道の安全確認をせよという点について、どのようにして確認していくのか、また現時点の対応と今後でまた変わってくるのかも含めてお聞かせください。
【市長】市電のインシデントに関しては、本当に市民の皆さんにご迷惑をかけております。点検についても、できるだけ運行に支障がないように、運行を止めてしまうと非常に皆さんにご迷惑をかけますので、いろいろなチェックをしながら、バランスを見て、例えばレールの幅のこのくらいの変位であれば、徐行をすれば何とか安全に走れるだろう、といったことがあったかと思うのですが、今はもっと安全面を見て、細かく全てのレールについてチェックすることが非常に重要だと思います。
今回、いろいろとご指導をいただきましたので、年度内に改めて全線の軌道検測を行い、安全性の再確認を行います。ここは問題ないですよということを、市民の皆さんにきちんと言えるように、丁寧に全線やりますということを、まずは最優先してやっていくということです。
【記者】年度内に全線をチェックすることを目標としているという理解でよろしいですか。
【市長】はい、そうです。
【記者】市電に関してお伺いします。市電延伸のスケジュール変更の見通しということですが、今後のスケジュールについて、来年度には測量を実施し、さらには用地交渉等も行われる予定だったかと思います。その辺りのことについてはどのように対応されるのか、市電延伸室の動きはどのようになるのでしょうか。
【市長】市電延伸室については、今後も継続して事業に取り組んでいきますが、スケジュールが変わっていくということです。
全体として、安全対策を優先するために、マンパワーもリソースも注いでいきますので、いろいろな計画をしていく中で、例えば測量等も含めて、今進めていることを全部一旦見直して、スケジュールを精査し、安全対策にどの程度力を注がなければいけないのか、その余力でと言うと変ですが、どれだけのことができるのかということも、当然見なければいけません。今、個別に測量がいつぐらいになりますとか、用地交渉がいつぐらいになりますということについては、これから内部的に検討が進められていくと思います。
予算をどうするのかということについても、これから財政局と協議していきます。それから議会にお諮りをしますので、そこで皆さんに延伸についてのスケジュールに関して、議会の皆さん方がどのように考えているのか、早くやってくれという方もいらっしゃると思いますが、安全が大事だという事もおっしゃっていただく。その辺もご理解をいただきながら、例えば予算を減額することや、国に対していつのタイミングで改めて申請するのかなど、そういったこともこれからの作業になります。その辺りは、地域公共交通に関する特別委員会もございますし、本会議も2月に始まります。こういった中で我々からも現状をご説明させていただき、議会の中で十分にご審議いただきたいと考えております。
【記者】先ほどの表現は、延期も含めて見直すというお言葉だったかと思いますが、延期は前提として考えていくという理解でよろしいでしょうか。
【市長】例えば、議会において、延期するな、予算も通っていてできるじゃないかという話になれば、それはまた変わってきますが、恐らく、今は安全対策を十分にやるべきだと我々が判断していることについては、ご理解をいただけるのではないかなということで、そういう表現をしたということです。
当然、これは執行部だけで決めることではなくて、議会の中でご審議いただいて決めていきますので、2月の議会の中できちんとした方向性を、最終的に議決を経て決断されることになるかと思います。
ですので、延期も含め、スケジュールの見直しを指示したというのが、今日の一つの大きな発表になります。
【記者】災害時における備蓄物資についてお伺いします。政府が、災害に対する自治体の備えを促すために、年1回の物資の備蓄状況の公表の義務化を検討しているということですが、それに伴い、熊本市において、備蓄品の見直しや新しい備蓄品などを増強した、もしくは今後増強する予定があれば教えてください。
【市長】備蓄に関しましては、熊本地震の時に非常に困りました。いろいろな災害備蓄品を防災倉庫など、いろいろな拠点で備蓄をしていたのですが、熊本地震の発災前は2日間で約22万食の備蓄をしておりました。これはおよそ3万6500人、人口の大体5%ぐらいの避難者数を想定しており、地域防災計画の中でそう定められていました。3万6500人が3食、2日間を何とか耐えしのげるようにということでの備蓄でした。
ところが実際は、前震で備蓄物資を全部吐き出しまうと、その28時間後に本震が起こりました。本震が起こったことで、避難場には11万人を超える方々が殺到し、そこには食料や備蓄物資がないという状態に陥ってしまいました。前震、本震と、地域防災計画の中でそこまで想定していなかったことは、今になってみれば反省しなければいけないことですが、11万人という、実際に避難された皆さん方に、2日間何とかしのいでいただくような計画を作成し、備蓄を用意するように指示をして、平成30年度に約40万食、11万人の方々に2日間、2食を何とか届けられるようにするということで、備蓄食糧の見直しを既に行っています。
熊本地震当時、備蓄食糧は熊本市の防災備蓄倉庫や指定避難所の備蓄倉庫など、そういった所にしかありませんでした。しかし、当然これでは賄えませんし、保管する場所もなかなかありません。全国の自治体では、この記事が出て、政府の方針もありますが、たくさん用意しろと言ったって、どこにどうやって確保するのかと、管理することについての問題もあります。
2日間で約40万食の備蓄食糧というよりも、備蓄と供給がちゃんとできるようにするということで、熊本市の備蓄食料だけではなく、スーパーやコンビニなどと連携協定を結び、約10万食を協定企業からの流通備蓄として確保しています。ですので、いざ熊本で大きな地震があっても、流通備蓄をきちんと活用できるようにすることで、熊本市が備蓄している食糧等々と、卸売のスーパーやコンビニなどの企業からの流通備蓄、また国や県、関係市区町村など各行政機関で備蓄している分とあわせて全体で40万食ということで、我々はこれまで計画をしてきております。
何故2日間なのかということですが、熊本地震の際は3日目ぐらいから何とか政府のプッシュ型(の支援物資)届き始めました。あの時の経験からしても大体そう予想されますので、熊本地震クラスの災害が起こったときに、これで何とかしのげるかなということで、このような計画をつくっています。
しかし、我々行政だけの備蓄では(とても足りず)、指定避難所だけではなく、いろいろな避難所がたくさんあり、熊本地震のときも1週間ぐらいは、全てには行き届きませんでした。公園で2時間も3時間も並んで、やっとバナナ1本もらえましたと、1週間後ぐらいだったと思うのですが、地域の方からメールをもらいました。「このような状況だけれども、我慢してくれと市長から言ってくれ、そうしたら我々も我慢する。あなたも大変だろうけど、これが現状なんだ」と言われました。
つまり、熊本市の備蓄は、今申し上げましたとおり増強していますが、いつ何どき大きな地震が起こるか分かりませんので、やはりご自宅で、水やカップラーメン等を食べながら備蓄するローリングストックも併せてやらないと、国が幾ら備蓄に関して自治体にいろいろと義務づけて、報告をさせて管理していくにしても、それが必ずしも被災者の皆さんに届くとは限らないんです。それを我々は経験していますから。例えば、熊本地震で被災した協定企業のスーパーマーケットから物資を全部出してもらって、支払い等々については、災害救助法等の中できちんと後からお支払いしますということで、お店と協定を結びました。
そういったことを、全国の自治体が行ったとしても、災害が発災した直後に、避難した皆さんに何とか生き長らえてもらうための物が届くかどうかだからこそ、皆さんには自分たちでも備蓄してくださいよ、と。
もし、南海トラフや首都直下地震が起こったりした場合は流通が止まります。そうすると、被害がなかったところの物流も止まってしまうんです。先日、コンビニ各社が発表していましたが、災害等で道が寸断されたりなど、1週間から2週間は品物が届けられないだろうということでした。そうなりますと、皆さんはストックで何とか生き長らえなければなりません。そういうことを、日本全国で考えなければならない。
今回、国が備蓄状況の報告を義務づけることについて、自治体がちゃんと備えていこうよと促す意味では、非常に大きい取組であると思っています。ですので、国会においてしっかりご審議いただいて、我々地方の意見、あるいは被災自治体の状況等もある程度国が把握されていますので、そういったことも踏まえて、現実的な対応をお願いしたいと思います。
それから、財政措置は必要不可欠です。備蓄をすると言っても、なかなかお金がかかることですので、自治体の財政力によって備蓄状況が変わってしまいます。私は今、全国市長会において防災対策特別委員長を務めていますが、熊本市のように政令指定都市であれば、人員も物資もなんとかこういう形がとれていますが、小さな自治体では、そこまでできないところは必ずあると思います。財政力の差で災害対応が変わってしまうということはあってはならないと思います。
だからこそ、防災庁を設置する際には、こういったところもしっかり考えて、国の防災対策や災害救助の在り方については、法整備も含めて、あるいは財政制度も含めて十分に検討していただきたいと思っています。
【記者】市電の延伸について伺います。予算の減額も含めて市議会で議論していただくとのことですが、この予算減額という部分についてもう少し具体的に教えてください。
【市長】予算については、国からの補助をいただいていますので、もし執行できないということになりますと、手続もいろいろと複雑になります。スケジュールを一旦見直すことになりますと、国に返還するという手続もありますので、そういったことを今、財政当局と詰めています。
仮にこうなったらこのお金は返さなければいけないとか、あるいはこの辺を減額して一旦再開する、あるいは延伸の実施設計の部分を進めていくことになって、予算が必要になったときには、このタイミングでこのぐらいの予算を計上しようということになります。そこは今、財政当局と事業部門との間で、これからの方針次第で決まっていくことになります。それを議会にお諮りするかどうかということです。ただ、もう年度末になりますので、予算をいただいた部分に関しては国への返還手続等々も出てくるかと思います。そこについては、今、いろいろな形で調整しています。ですから、2月の議会でそういう予算が提案される可能性があるということが今の状況かと思います。
【記者】延伸を含めたスケジュールの見直しは、最終的に、予算の議案が議決されたときに判断が固まるという理解でよろしいですか。
【市長】そうです。安全を最優先にしてスケジュールを見直すと、判断をさせていただいています。この延伸事業を今後どう進めるべきかについては、議会で一回お認めいただいていますので、しっかりご議論いただきたい。そのうえで、現時点の状況を踏まえて、議会も市民の皆さんの民意を受けて判断していただけると思っています。議会の判断をお待ちしたいと思います。
【記者】市電の延伸事業については、これだけ運行トラブルが続く中で、まずやるべきことがあるのではないかと市民から疑問の声も上がっていると思います。改めて、延伸事業の必要性についてお話しいただければと思います。
【市長】市電のトラブルがあることによって、公共交通の充実が遅れてしまってはいけないと思っています。ただ、ご指摘のとおり、公共交通の充実は大事ですが、それよりも前に、基本となることは安全に安定的に運行できる市電の体制で、それを市民の皆さんは一番求められています。ですので、その点をまず揺るぎないものにすることが101年目の熊本市電を再生していくために絶対に必要だ、ということで最終的にはいろいろなことを考えながら判断しました。
16件ものインシデントやトラブル、事故が昨年引き起こされ、最終的に12月31日に脱線まで起こしてしまって、年末年始に市民の皆さんに本当にご迷惑をおかけし、部分的にですが運休する状況になってしまいました。今年、レールの点検や補修等々も行いましたが、そういうことを確実に行っていくことが、市民の皆さんにとって一番の優先事項であり、そして信頼を取り戻すため、我々が取り組まなければならない最大のことだと感じております。
そのうえで、基幹公共交通軸をしっかり充実させていくことには変わりありません。渋滞が非常に多い状況の中で、市電の延伸によって東部地区エリアの渋滞の緩和にもつながるし、利便性の向上にもつながっていきます。そうつながっていくように、これから高度化計画や全体を見直していく。新たな計画といいますか、今後の動きについては、安全対策等々の経過も、市民の皆さん、議会の皆さんにお示しさせていただきながら、丁寧に、そして確実に進めていきたいと思っています。
【記者】市電の延伸について、延期するとなった場合、最短でどれぐらいの延期になると想定されていますか。
【市長】例えば、レールの確認は年度内に全部やってしまって安全対策をしますが、レールだけが安全であればいいということではなくて、この前、検証委員会から最終報告書をいただきましたので、できていないことは全部確実にやらなければいけませんし、上下分離の高度化計画を申請するということが出てきます。こういったことの道筋がある程度できる時期ということでありますので、最短でというのは、今、申し上げられないスケジュールかと思います。
ただ、安全対策について、安全対策チームの中でこれだけのことをやってきましたと市民の皆さんに確実にご報告するということが一つ、そして、高度化計画については、こういう形で見直しをして申請していきます、これは、国からの指導や、国に対して最終報告したことをきちんとこういう形でやっていきます、と確実に言えるということ。そしてもう一つは、これから進めていくうえで、本当にこういう状況で進めていいのかということも含めて、議会にもしっかりお諮りして、最終的に、例えば国への予算の申請であるとか、補助の申請であるとか、そういったことにもつなげていくことになると思います。
ですから、延伸で運行が開始する時期はこれから詰めていきます。恐らく、どのくらい遅れるかについても出てくると思います。スケジュールは、安全対策をある程度やりながらきちんとまた精査していくということで、現時点では未定としか言いようがないのですが、そこは安全対策を最優先する姿勢を、まずは市民の皆さんにお示しすることしか熊本市電が復活する道はないと私は思っています。期待していた方々には本当に申し訳ないのですが、ご理解いただきたいと思います。
【記者】上下分離については1年程度の遅れという見通しを以前示されていたかと思いますが、これが後ろ倒しになる可能性も出るのでしょうか。
【市長】上下分離に関しては、高度化計画の関係もありますので、明確にその時期は言えません。だいたい1年ぐらいではないかということで、今年の4月だったのが、来年の4月には上下分離に移行できるのではないかと思っています。これは運転士の処遇改善、要は身分をきちんと正社員にする意味では、急ぐべきことだと思っています。当然、安全が最優先なのですが、それは安全にも含まれるということもありますので、1年程度と私の頭の中にはございます。
現場でいろいろな作業をしていく中で若干の変更はあると思いますが、その都度お示しさせていただいて、高度化計画をきちんと申請して、国のほうでもいいとOKサインが出ないと手続的にはできません。そういう意味では、今年のうちに、早くいろいろなことをやっていきたいと思っています。安全対策をとにかく急いでやって、その次の段階ということになります。
【記者】延伸に関して、今、実際に進めていることや、実施設計、用地の取得等これらのスケジュールを一旦見直すということですが、延伸計画の内容自体、例えばルートや停留所の数等に変更が生じる可能性があるのでしょうか。
【市長】基本的には、まずスケジュール全体を見直すということですので、まだそこまでの検討には至ってないということです。
【記者】現在計画している中身についても、改めて検討していくことになるのでしょうか。
【市長】今回のスケジュールの見直しは、安全対策を最優先にするために行うことですので、市電の延伸の中身、例えば停留所、線路をどうするのかということに関しては、その次のステップになると思います。まだそこまでのことが決まっていないということです。
【記者】予算の減額が認められた場合は、今年度内の実施設計は行わず、来年度以降に先送りになるということですか。
【市長】そういうことになります。
【記者】市電について伺います。第三者委員会の最終報告書で一つの区切りを迎えたと言えると思いますが、年間16件という前代未聞の運行トラブルが続発しました。その原因として、長年の経営優先のツケが一気に噴出したというような分析も出ています。実際、軌道の補修等が遅れていたことや、単年度任用・非正規の運転士の問題などが影響したと思います。その結果、市民への大きな迷惑や延伸事業の延期も含めた再検討まで至りました。これだけ大きな影響が出ましたが、誰も責任をとっていない、ということが言えるのではないかと思います。覚悟を持って最優先でいくと市長はおっしゃいましたが、誰かが何らかの形で責任をとるべきではないかという指摘もあるのではないかと思います。市長の考えを聞かせてください。
【市長】交通事業管理者が以前申し上げたと思いますが、それが責任をとったということになるかどうか分かりませんが、給与の減額等は行っております。ただ、責任をどうするか、誰かが辞めればいいのか、そういうことではなく、安全性を確実なものにしていくことをきちんとお示しすることが、私は責任を果たすことになると思います。その結果、市民の皆さんの信頼を得られるのではないかと思います。例えば、人事的な懲戒処分ももちろん状況に応じてこれまでも対応してきていますが、実際に責任を果たすということは市民の皆さんに本当に信頼していただける、安心していただけるものをきちんと構築することが何よりも職責を果たすことだと思っております。
それから、マネジメント上の問題という意味では、私も含めて、これまで長年経営を優先して、こういう状況に陥ってきたことは本当に強い責任を感じています。これから予算措置も含めて公共事業・公共交通に対する投資の在り方や、これから上下分離もしていくことになり、より安定して運行してもらうために財政的な支援も含めてどうあるべきかということでも。皆さんへけじめがついたなと思っていただけるように、いろいろな事業を執行していくことが重要だと思っておりますので、しばらくお時間をいただきますが見守っていただきたいと思っています。それが責任を果たすことだと私は思っています。
【記者】市電延伸でスケジュールの見直しをされるということで、見直しをした上で、新しいスケジュールを公表されると思いますが、その時期はいつ頃でしょうか。
【市長】見直しをすることを今回発表させていただきましたが、まず次の議会でさまざまな詳しいことをご審議いただきます。議会でのご判断を受けてどうなるかということですので、それ以上のことは今申し上げられないと思います。
【記者】渋滞緩和を目指す中で公共交通へのシフトについての取組も続けていらっしゃるかと思いますが、市電や電鉄電車の減便もありますし、バス各社においても厳しい状況が続いています。渋滞緩和と公共交通へのシフト、そして減便の状況を、今、どのように整理されていますか。
【市長】減便は運転士の確保(が困難で)、そして、余裕がないということです。かなり余裕がない中で運行してきた。ぎりぎりの状態で目いっぱい運転士を動かして市電もバスもやってきた。そのうえどんどん人は辞めていく状況が続いていた。全てがどんどんネガティブに回って今のような状況、これは熊本だけのことではなくて全国各地で起こっています。それでまた減便をすれば、利用者にとっては公共交通機関がどんどん使いにくくなる。どうやってこの負のループを改善していくのか。
運行費補助も沿線の各自治体が出して路線を維持していますが、当然財政が厳しくなれば先細る。そして、利用者の方々がどんどん減っていく。全体のどこかの部分の路線だけではなくて、公共交通全体をきちんとマネジメントしながら、効率よく人の配置、路線の計画、運行のマネジメント、こういったものが統一的にできるようにするために、以前から申し上げている「運輸連合」のような形、ヨーロッパや韓国のソウルあたりもやっていますが、そのような形でみんなが一体となってやるしかないと思っていましたので、私は2期目のマニフェストで各バス会社の経営統合まで踏み込んで書きました。バス事業者の皆さんにはかなりハレーションがあったと思います。株主さんもいるし、会社の状況はみんな違うし、それぞれのポリシーでやっておられる。しかし、もう背に腹はかえられない状況が来るというのを私は2期目のマニフェストの時に見越していたので早くやりましょうと、かなり強く押して「共同運行」という形ができました。これはバス会社の皆さんのご理解、ご協力、そして国や県などの皆さんのご支援もいただきながらやっとできました。これで効率性を高めようと、今、同じテーブルでバス会社の皆さんが危機感を共有しながら取り組まれています。これがさらに進んで運輸連合という形になり、各社のいろいろなリソースを最大限生かせるようにして、例えば運転士さんを融通し合うとか、教育やいろいろなマネジメントをしていくとか、路線も統合したりしていますが、よりユーザーの皆さんが使いやすい体制にするためのマネジメント組織を早く構築していくことが絶対に必要だと思って、今進めています。
それぞれの細かい現状分析等々、今、共同経営推進室等でされていますし、うちの交通部門でも取り組んでいます。新年度も含めて、今年1年公共交通を将来の姿としてどうやって残していくのか。取組を強化していきたいと思います。
【記者】公共交通を利用していただくことが前提になってくるということですか。
【市長】そうです。お客さんが増えて収益が上がる、ということ。当然、公共がこれから支えていくことももっと出てくると思いますが、利用者の数が増えないといけません。今は不便だから乗らないという選択肢になっています。どんどん減便していたら、もうあてにできない。まずはあてにできるようにするために、市電も運転士の確保を一生懸命やっています。バス会社さんもいろいろな努力をしながらやっています。そのリソースの中でできることで、どんどん利便性を高めていこう、あとは、市民、利用者の皆さんの協力が非常に重要になってきます。ちょっと乗っていただいてお客さんが何%も増えれば、その分いろいろなサービスを充実させていくことができます。
そういう好循環に早く回していきたいということが、私も含めて交通事業者の皆さんの共通の願いだと思っています。交通事業者や行政だけがどんなに頑張っても解消しないと思います。利用者がいないと公共交通は絶対に充実しない。だから、利用者の皆さんが本当に利用しやすい環境をいち早く構築していくこと。ここに尽きるので、バス会社や交通事業のそれぞれの会社は、いろいろな改革も進めながら、経営効率もどんどんやらなければならない。その中でも、最大限のユーザーオリエンテッド。とにかく利用者目線に徹底的に立ってこれからいろいろなものを構築していく、料金体制、ダイヤ、環境整備、そういったことに行政も一緒になって取り組んでいきたい、そこは私も強いリーダーシップを発揮したいと思っています。