市長発表
はじめに、第4回定例会を終えての所感を述べさせていただきます。本定例会に提出いたしました予算案及び条例案等につきましては、議会において慎重にご審議いただきました結果、原案どおり全て可決いただきました。これにより、新型コロナウイルス感染症対策や原油価格・物価高騰の影響を受ける事業者の皆様への支援等に速やかに取り組んでまいります。
一般質問では、3期目の市長就任直後であったこともあり、マニフェスト実現に向けた取組として、交通渋滞対策等の交通問題や子育て支援をはじめ、防災、教育、デジタルトランスフォーメーションの推進など、いずれも本市の将来に関わる大変重要な政策課題について、議員各位から大変熱心にご質問をいただきました。議論を通じていただきましたご意見・ご要望については真摯に受け止め、市政運営の糧として取り組んでまいります。
次に、新型コロナウイルスの感染状況等についてご報告します。本市の新規感染者数は、全国と同様に拡大傾向が強まっており、直近1週間(12/14~20)で11,047人と急増しています。また、各入院受入医療機関の確保病床数を超えた一般病床での入院患者数を除いた、実質的な最大確保病床使用率は、昨日時点で69.5%となっており、医療提供体制への負荷も強まっている状況です。
また、季節性インフルエンザの感染者も増加しており、本格的な流行を迎えたことから、今後発熱外来もひっ迫する可能性が考えられます。このような状況から、高齢者の皆様や重症化リスクが高い皆様を守るためにも、あらためて市民の皆様へお願いいたします。
現在、流行の主流となっているオミクロン株BA.5に対応した2価ワクチンは、インフルエンザワクチンとの同時接種も可能であり、従来型ワクチンを上回る入院予防効果と一定の感染予防・発症予防効果も期待されています。ワクチンは効果が出るまで一定の期間がかかりますので、接種を希望される方は、お早めにワクチンを接種いただきますようお願いいたします。また、今一度、こまめな換気や手洗い・うがい、手指消毒などの基本的な感染防止対策の徹底をお願いいたします。
これから年末年始を迎え長期休暇に入りますが、帰省や旅行の際には事前に検査を受けていただき、体調が優れない場合には、無理せず計画を見直すこともご検討ください。また、年末年始は医療機関の休診等により、身近な医療機関では受診できなくなることも考えられますので、医療機関の情報を事前にご確認いただき、抗原定性検査キットや自宅療養に必要な市販の解熱剤、食料品など、それぞれのご家庭において事前にご準備いただきますようご協力をお願いいたします。熊本市のホームページでは、事前の備えに関する具体的な内容や療養の流れ、お子さんが感染した場合の対処法など、様々な情報を掲載しておりますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
なお、12月24日に予定しております「バス・電車無料の日」につきましては、車両の換気など感染防止対策を徹底した上で実施することとしておりますので、ご利用の方は、マスクの着用や車内での会話を控えめにするなど基本的な感染防止対策にご協力いただきますようお願いいたします。
次に、新たな子育て支援の取組となる「ようこそ赤ちゃんプロジェクト」についてご報告します。「ようこそ赤ちゃんプロジェクト」とは、子育て家庭の経済的支援とともに、妊娠、出産、子育てに関して、伴走型で相談支援を行うものです。面談を通して、お一人お一人の状況を把握し必要なサポートにつなげるとともに、現金5万円を2回、合計10万円を給付します。
具体的には、妊娠届を提出される際、区役所で面談を行い、母子手帳をお渡しした後、1回目の給付を行います。その後、継続的に伴走型の支援を行いながら、出産後に助産師・保健師等がご自宅を訪問し、面談を行った後に2回目の給付を行います。対象者は、令和4年4月以降に出産をされた方、これから妊娠・出産をされる全ての方で、所得制限はありません。すでに出産がお済みの方については、1月中旬から受付を開始できるよう現在準備をしており、早い方には1月末に振り込みを行う予定です。
なお、できるだけスピーディーにお届けするため現金での給付とし、手軽に申請していただけるよう「電子申請サービス」を活用する予定です。対象となる方には、順次ご案内をいたしますので、しばらくお待ちください。
本市では、年間約6,000人の赤ちゃんが誕生しております。今後も、赤ちゃんを迎えるすべてのお母さん、ご家族が安心して出産、育児ができるよう支援してまいります。
最後に、本日の会見が本年最後となりますので、この1年を振り返っての所感を述べさせていただきます。
本年は、新型コロナウイルス感染症の、いわゆる第6波の急拡大とともに幕を開けました。その後も、第7波、第8波と拡大と収束を繰り返し、今なお、市民生活に大きな影響を与えておりますが、ウィズコロナにおける日常も一定程度定着した1年であったかと思います。また、国際社会に目を向けますと、ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮によるミサイル発射など不安定さが増す中、急激な円安の進行や資材・物価の高騰など、刻々と状況が変化する中で、適切でスピーディーな対応が求められた1年でもありました。
このような中で、本市においては、市民の皆様の命と健康を守るため、保健所体制や医療提供体制の強化、ワクチン接種の推進など、感染拡大防止に全力で取り組んできたところです。加えて、飲食店に対する家賃支援や中小企業者への利子補給など事業者に対する支援のほか、プレミアム付き商品券の発行、旅行商品割引などの消費喚起策など、市民目線でこの厳しい状況に置かれた地域経済の回復に向けた取組も進めてきたところです。今後とも、市民生活や地域経済の状況を的確に把握し、国の動向も見据えながら、より効果的な施策を実施してまいります。
改めまして、本年の取り組みの中で、特に感慨深いトピックを3つ挙げさせていただきます。
1つ目は、「第4回アジア・太平洋水サミット」についてです。4月23日・24日に開催した本サミットは、日本を含む30カ国の首脳・閣僚級にご参加いただき、開会式では、天皇皇后両陛下にもオンラインでご臨席賜りました。
本サミットで採択された「熊本宣言」は、来年開催される「国連水会議」において世界に発信される予定であり、アジア太平洋地域のみならず、世界の水の未来にとって、希望の道筋となると確信しているところです。また、これだけの大規模な国際会議を本市で開催するのは初めてであり、本サミットを成功裏に終えた実績をもとに、国際的な閣僚会合や学術会議などの誘致活動を積極的に行い、開催へとつなげてまいります。
2つ目は、「全国都市緑化くまもとフェア “くまもと花博”」についてです。3月中旬から65日間の日程で開催した「くまもと花博」は、期間中、約168万5千人と沢山の方々にお越しいただくなど、市民や企業・関係団体等の皆様の多大なるご支援とご協力により、成功裏に終えることができました。メイン会場となった花畑広場は、180メートルに及ぶ大花壇で彩られ、沢山の方々に潤いと安らぎを与えることができました。また閉幕後は、「終わって寂しい」「続けてほしい」といった声が上がるなど、市民の皆様の心に残るイベントとなりました。そのレガシーを後世に引き継ぐため、次年度以降の開催についても検討してまいります。
加えて、新年度からは、都市建設局内に「森の都推進部(仮称)」を新設することとしており、この花博を通じて高まった機運を未来につなぐとともに、「森の都熊本」にふさわしい花やみどりを核としたまちづくりを推進してまいります。
三つ目は、内密出産についてです。内密出産については、慈恵病院において独自に導入されており、今年、全国で初めての事例が公表されました。国内に前例がない中、法令の解釈等をめぐり、国に照会するなど手探りの状態でのスタートとなりましたが、今年9月にはガイドラインが示されるなど、国においてはスピード感をもって取り組んでいただきました。
個別の事案については、個人の養育に影響を及ぼす可能性があるため、詳細をお伝えすることはできませんが、内密出産で生まれたお子さんは、現在、安全に養育されており、また児童相談所においては、フォスタリング機関等と連携し、特別養子縁組を前提とする養育も含め、里親委託等によって家庭的な環境下で養育ができるよう支援しているところです。
改めまして、慈恵病院における安全な出産と母子への献身的な取り組みについて感謝申し上げるとともに、母親の意向を尊重しつつ、生まれた子どもの利益を最優先に考え、今後も取り組んでまいります。
最後に、本市は、政令指定都市に移行して丸10年という節目を迎えました。引き続き市民の皆様との徹底した対話を通して、様々な地域課題に取り組みながら、「誰もが憧れる上質な生活都市くまもと」の実現に向けて、10年20年先の熊本の礎を築いてまいります。来る令和5年は、市民の皆様の安全安心な生活を守り抜くため、引き続き、感染防止対策や地域経済の回復に取り組むとともに、子育て支援や交通渋滞対策、TSMC進出への対応、市役所のデジタル化などに全力で取り組んでまいります。
年末の会見にあたり、市民の皆様をはじめ本日ご出席の報道各社から賜りました市政へのご理解とご協力に、あらためて感謝申し上げるとともに、来年も更なるご協力を賜りますようお願い申し上げます。
私からは以上です。
【記者】まず、発表がありました「ようこそ赤ちゃんプロジェクト」について伺います。これは、国の交付金を活用されるということですが、熊本市独自の取り組みということでしょうか。
【市長】これは、各地で国の交付金を使った様々なこういった事業がありますが、今回の給付金に関しましては、他の指定都市も含めた地域でも同じような形で行われるものでございます。ただ、熊本市としては「ようこそ赤ちゃんプロジェクト」と名前をつけまして、これから出産をされるお母さんやご家族をしっかりこういった形でサポートしながら、支えていこうということです。これは単に給付金をお渡しするという事業ではなく、こういった面談をはじめとした支援を行いながら、お子さんの成長に寄り添いながら支えていくという意味では、名称も含めて本市独自という形になります。ただ、財源については、国からの財源を活用して、国が3分の2、熊本県が6分の1、熊本市も6分の1ということで費用を負担し、全体としては約9億4200万円の予算を昨日可決いただきましましたので、速やかにこれを実行しようということで本日発表させていただいたということです。
【記者】妊娠したら妊婦1人につき5万円と、それから出産したら子ども1人につき5万円ということで、双子の赤ちゃんだったら5万円かける2人分ということになりますか。また、三つ子の赤ちゃんだったら5万円かける3人分ということでいいですか。
【市長】はい。そういうことです。
【記者】内密出産についてのお話がありましたが、今年、これまで7例が公表されていたと思いますが、それぞれのお子さんの現状について、例えば戸籍の作成等どのような状況かを教えてください。
【市長】各事例の個別の状況については、お子さんの事情もあり、一つ一つは公表を差し控えさせていただいておりますが、お子さんについては、特別養子縁組を前提とする養育も含めて、里親委託等により家庭的な環境下で養育ができるように現在支援をしているということです。先ほども、発表の中でお伝えしましたが、安全に健全に育成しているというような状況です。戸籍についても、問題なくそれぞれのケースに応じた対応をさせていただいています。
【記者】これからも、内密出産については、事例が出てくる可能性がありますが、例えば「こうのとりのゆりかご」の運用については、検証が行われ、一定期間ごとに預け入れの状況などが公表されることによって、社会においての検証にも繋がってきたかと思うのですが、内密出産の今後の検証についてはどのようにお考えでしょうか。
【市長】これについても、これまで申し上げてきたように、今、慈恵病院さんともいろいろな形でお話をさせていただいております。お子さんの個別の事例についていろいろと細かく公表するということはできませんが、内密出産についても、やはり「こうのとりのゆりかご」の検証が1つのモデルといいますか、参考にしながらこの内容出産についても、評価・検証をしていくべきだと考えておりますので、そこについては、今後また慈恵病院さんや関係の皆さん方ともしっかりとお話をさせていただきたいと思っています。今、具体的にどうするということを答えられる状況ではありませんが、内密出産の状況としては、国のガイドラインが示され、また、これまで7例が公表されていますが、そうしたことを踏まえ、今、慈恵病院の運用について、これからそのガイドラインに基づいてどういった形で内密出産への対応をしていくのかということについて、個別の項目について今いろいろとやりとりをさせていただいております。ですので、慈恵病院さんともしっかりと連携を取りながら、そして今後、どういった形での検証がふさわしいかということについて考えていきたいと思っています。
【記者】内密出産の件で、特別養子縁組を前提とした里親委託等のお話がありましたが、公表されている7例の内で1例は身元がわかって、ご家族が養育する意向を示している事例もありましたが、7例中6例が特別養子縁組を前提とした里親委託等に出されているということでしょうか。
【事務局】個別の事案についての公表はこちらからは控えておりますので、総じて適切な対応をしているということでご理解いただければと思います。
【記者】内密出産で生まれたお子さんの戸籍について、問題なく対応されているということですが、これまで公表された7例の内、戸籍が作成されていないお子さんはいますか。
【市長】それも含めて個別の状況一つ一つにはお答えできませんが、戸籍については、全体として問題なく対応ができているとご理解いただければと思います。戸籍については問題ありません。つまり、きちんと作成をされているということです。これは全ての事例において作成されているということです。ただ、個別にどういった状況かはお答えできないということです。
養育等については、お母さんの意向をはじめ、いろいろな事情がありますので、その個別の状況についてはお答えができません。ただ、内密出産ということでありますから、行政としても一緒に入りながら、いろいろと対応することになりますので、そういった意味では、お子さんの命とそれから養育環境をしっかり守っていくということが重要です。そして、お母さんのいろいろな意思、これは揺れ動いたりすることもあるかと思いますが、そういったこともしっかり、私たち行政が慈恵病院さんと一緒になって受け止めながら、安心した環境を作っていくということで、今、取り組んでおりますので、今後も、個別の事例についての詳細を慈恵病院さんや本市から発表することはないと思います。
ただ、先程もご質問がありましたように、様々な検証や(内密出産の)在り方について、いろいろな方針が一つ一つ積み上がってきた際には、皆さんにきちんとお知らせさせていただきたいと思っております。
【記者】内密出産について、6例の中で既に里親に預けられている事例があるという理解で良いでしょうか。
【市長】それも含めて答えはできませんが、しっかりとした養育環境の中で、それぞれ対応させていただいているということでございます。ですから、個別にどの事例と特定できないように今お話をさせていただいておりますので、その点はご理解いただきたいと思います。
【記者】個別にどの事例がということではなく、6例の中で里親に預けるまで至っているケースが生じているのかということについては、教えていただけませんか。
【市長】そういうことも含めて、きちんとした養育環境が整えられているということです。
【記者】内密出産で生まれた7例のお子さんたちは全て、家庭的な環境で安全に育っているということが今言えるということでしょうか。
【市長】そうです。いろいろなご相談を受けているようなこともあるとは思いますが、しっかりそういった形で対応できているということでご理解いただきたいと思います。
【記者】内密出産について、特別養子縁組の成立が家庭裁判所から審判されたケースがあるかということも、お答えいただくことは難しいでしょうか。
【市長】はい。それもお答えはできません。
【記者】先ほど市長がおっしゃった、内密出産の検証を今後考えていかなければならないという点について、「こうのとりのゆりかご」と同様に外部の識者を集めて検証を行うといった、ぼんやりした形でも良いので、現在考えていらっしゃることがありましたら教えてください。
【記者】先ほど申し上げたように、「こうのとりのゆりかご」の検証というのが1つの参考になると思っていますので、当然、客観的な立場でいろいろなお話を伺って評価をするということは必要だと思っています。ただ、どういったメンバーで、どういった構成で行うかということについては、今現在確定したものは何もありません。ですから、これから慈恵病院さんと様々な協議をしていく、あるいは課題を整理していく中で、客観的に評価・検証できるような仕組みをしっかり考えていきたいと思っています。
【記者】内密出産の検証に関して、いつまでにそういった体制を整えたいといったものはありますか。
【市長】それもまだ決まっていません。ただ、まずは今、現実問題としてはこの内密出産がガイドラインに基づいて、どういった形で運用されるかといったことについてもまだ整理しなければいけない課題がございますので、そこをまずは早急に詰めるということが非常に重要であると考えておりますので、それをまず急ぎたいと思っています。(検証や評価については、)それがある程度できてからということになろうかと思います。
【記者】熊本市の出生数について伺います。昨日、厚生労働省でも出生数が大分減っているというような報告もありましたが、熊本市の出生数の傾向について、例えば減少傾向にあるとか、また、それについての市長の受け止めを教えてください。
【市長】熊本市の出生数については、今の人口トレンドから考えても、年間7000人ぐらいのお子さんが出生するということを1つの目標といいますか、そういった数であることが望ましいといいますか、今の人口の状況から勘案してもそのように考えていました。現在、年間で大体6000人ぐらいのお子さんが出生ということで、当初の想定というか期待も含めた数字と比較しても、相当急激にお子さんの出生数が減っていると認識しています。ですから、先ほど発表しました「ようこそ赤ちゃんプロジェクト」も含め、これから私がマニフェストに掲げた子育て支援をさらに強化していくことによって、できるだけより多くの皆さんが安心して子どもを産み育てる環境をこの熊本市で作っていきたいと思います。そういった危機感があるからこそ、3期目のマニフェストにも最重要課題として取上げたということで、それが強い危機感の表れだと思っていただければと思います。
【記者】出生数自体は毎年減少しているのでしょうか。
【事務局】ここ数年は減少傾向で、昨年は6093人という出生数です。
【市長】詳細な出生数については、推移が分かるように、改めて皆さんへデータをお渡しさせていただきたいと思います。
昨年までの状況は今の事務局の説明の通りです。ですから、昨年の6000人を今年また切ってしまうということになれば、減少傾向に歯止めがかかっていないということになろうかと思います。ただ、これは新型コロナの影響をはじめ様々な影響があると言われていますが、この国やこの町でお子さんを産み育てることが希望に繋がっていくようなことに私たちはしていかなければいけないと思います。そういった意味では、子育てをしている皆さん方に、不安感が非常にあるのだろうということは、私も今回の選挙戦で市内を回っていて感じました。経済的な不安もそうですし、それから、今後お子さんたちをはぐくみ育てるという教育環境も含めてですが、そういったことに対する不安感というものを払拭できるような政策をしっかりと打っていかなければいけないと思います。
【記者】今議会の都市整備委員会で報告のありました、JR熊本駅の新幹線口の全面改装について伺います。あそこは確か、11年前にできたもので、完成より約10年しか経過していない中での改装ということですが、これについて、当初の見通しや計画が少し甘かったというようなご意見も、議員のほうからありましたが、その点についてはどのようにお考えですか。
【市長】計画値ということについて言えば、熊本駅周辺の整備を進める上では、その時点ごとでの交通量調査やパーソントリップ調査、将来の整備計画を含めた交通の推計といったものを出していますので、その当時で与えられたデータに基づいて、ある程度、整備されてきたと私は認識しています。
ただ、その後、様々な前提が変わっています。ここにいらっしゃる記者の皆さんはご存じないと思いますが、新幹線が開通する前というのは、新幹線口というのはありませんでした。熊本駅には東口しかなく、極端な話をすれば西側に駅の出入口はなく、線路や工場あるいは住宅が密集をしていました。そこを25年ぐらい前に、熊本県と熊本市が整備新幹線の計画を契機に、西側については、区画整理事業を行うとしたことが始まりです。そして、区画整理事業をしていく中で、住宅が非常に密集している中で、公共の用地も含めて用地を確保するというのは非常に難しかったと思うのですが、そうした限られた制限の中で、新幹線口というのは生まれたということを皆さんには、ぜひ今一度、25年ぐらい前からを振り返っていただき、もともと何もなかった所に出入口を作ったと考えますと、当時はすごいことだったと思います。
それを作るに当たっては、先ほど申し上げたような交通量調査や将来の推計といったものを見ながら計画したとありますので、そう考えますと、新幹線口というのは、限られた範囲の中でかなり工夫を凝らしてできたものだと思います。できた姿からしかご覧になってない方からすると、例えば、記者さんでも転勤して来られた方などは、「何でこんなに狭いのだろう」と思われている方も多いのではないかと思いますが、元々そういった事情で、あの辺りには住宅が非常に張りついていたということです。ですから、今、駅前にも関わらず、一軒屋の民家がいくつか並んでいるのは、そういった区画整理事業にご協力をいただいた皆さん方が、減歩したりといろいろな協力をしていただいて、今のような形になっているということです。それが、駅前の成長とともに、大きく変化をしてきた。実は、その大きな変化として、どちらかというと駅前の東口側、今の白川口側の広場を整備して、そこにサブバスターミナル機能を入れたり、一般車両も含めた動線をそこに入れたりすることによって、交通処理がある程度できるだろうということで、おそらく熊本駅を整備するときに、そういった数値も含めて整理がなされたと思います。そこからさらに前提が大きく変わったのが、アミュプラザのオープンです。これは、整備当時には計画はありませんでした。これが発表されたのは私が市長に就任した後です。それだけ大きな開発が行われるということになり(状況が大きく変わり)、今、周辺ではオフィスビルや高層マンション等も建てられていますが、その当時は全くありませんでした。つまり、そこから駅の利用者も非常に増えており、新幹線の利便性を実感して新幹線で通勤をされている方も今は増えているということを考えますと、(整備当時の想定より)駅の利用者が非常に増えてきたということです。そうして、当初想定していたキャパシティを大幅に超える状況になったというのが今の状況ですので、そういった意味では、11年前の整備の際の見通しというよりも、この11年間の間に前提が大きく様変わりしてしまったとご理解いただくことが、一番良いのではないかなと思います。
平成26年頃から、徐々に一般車の利用台数が増えてきて、渋滞の発生が見受けられるようになっており、その後、平成30年にロータリーの改修等々を行っているのですが、それでも渋滞が解消されず、また、駅利用者の方から多くの苦情も入るようになったということもあり、再整備を急がなければいけないと判断したということです。
おそらく熊日新聞さんには、昔の出入り口など何もなかった頃の写真など、資料があるのではないかと思うので、ぜひ私たちも見せていただきたいと思いますし、報道各社の皆さんにも、資料映像はおそらく残っていると思うので、そういったことを一度振り返っていただけると、現状もかなり苦労している中、先人たちが苦労して新幹線口ができ上ったものの、今の需要に対してキャパシティを大きく超えているということですので、今、限られたスペースあるいは状況の中ではありますが、できるだけ頑張って、皆さんが快適に利用できるようにしたいということで、再度整備していくということですので、ぜひご理解いただきたいと思います。まだまだ駅周辺は民間の開発がかなり進んでいっていますので、これからも需要予測というのはかなり難しいと思いますが、そういう意味では、ある程度大きな規模の想定も行いながら、これからのリニューアルを検討していかなければならないと考えています。
【記者】内密出産に関して伺います。以前、1例目の処遇が決定された際は、まだガイドラインがなかったということもあり、家庭的な環境での養育の見通しがついた旨の発表まで半年ほど時間がかかってしまい、慈恵病院からも、もっと早く家庭的な環境での養育につなげて欲しいといった話も出ていましたが、2例目以降、何か改善された部分というものはあるのでしょうか。
【市長】改善というよりも、内密出産の場合は「こうのとりのゆりかご」と違い、お母さんから、ご意向等をいろいろと伺うということを病院でもしっかり行われてきたということもあり、そういった意向確認がある程度とれる中で、特別養子縁組や家庭的な環境での養育などお母さんの希望を踏まえ、しっかりと対応していくということになると思います。
そういったご意向や様々な状況を踏まえれば、児童相談所も含めてどういう形で措置をするかということに関しては、かなり連携がとれてきており、今のような形になっているのではないかと思います。
【記者】生まれたお子さんの処遇の決定やその後の養育のことなど、内密出産後の様々な手続きにも対応されていらっしゃると思いますが、その中で感じている課題や難しさなどがあれば教えてください。
【市長】(内密出産をなさった)お母さんから、できるだけお話を聞くことができれば、直接いろいろな選択肢をお示しすることができるかと思いますが、そういった関係がきちんと途切れないようにするということは非常に大切だと思います。
現在は、慈恵病院の相談室の室長さんがしっかりとその点を担っていただいているという状況ですが、そういう意味では、匿名で構いませんので、皆さんがお困りのことについてできるだけ早く相談ができる形をとれることが望ましいと思っていますので、そういった課題を少しでも解消したいという思いで「妊娠相談センター」を来年4月から立ち上げ、そして、病院とも連携をしながら、時にはそういったご相談に乗れるようにしたいと思っています。
今、内密出産を含めて迷っておられる方もいらっしゃると思いますので、そういった方々が早めにご相談くださることで安全な出産につながっていき、そして、お母さんとお子さんの最善の利益が得られるようにするために、行政としては、慈恵病院や関係機関と連携して取り組んでいきたいと考えております。
【記者】内密出産に関して伺います。「こうのとりのゆりかご」と同様に内密出産に関しても評価・検証の仕組みが必要だとおっしゃられましたが、何かしらの検証部会を立ち上げるという理解で良いのでしょうか。
【市長】それも含めて先ほど申し上げましたように、まだ何も決まっておりません。したがって、これから課題をしっかり検証し、部会という形にするのかも含めて、具体的なことについては、もう少し決まってから皆さんにお知らせしたいと思います。ただ、現時点で、全国で初めての内密出産という事例に取り組んだ医療機関があって、しかも、自治体が非常にそこに深く関わりながら、国のガイドラインを示していただくに至ったという状況でありますので、今後の課題をいろいろ考えていく上でも、こういった検証を行うことによって、より良い母子の環境に繋がっていくようにするということが、私たちの検証の目的であろうと思っています。
したがって、そういったものが必要だという認識ではありますが、どういった形で検証を行うかということに関しては、今現在決まっておりませんし、まだ担当部署と詳細を詰めているわけでもありません。それが今の正直な状況です。ただ、その必要性については、私も担当部署も、それから慈恵病院もしっかりそういった認識を持っておられると思います。
【記者】客観的な評価というのは、第三者や有識者による評価・検証が必要というお考えであるという理解でよろしいですか。
【市長】そういうことも含めて必要だと思っています。あくまでも、イメージとしては「こうのとりのゆりかご」の検証部会が大まかなイメージだと思います。
【事務局】現時点ではそういった認識です。
【記者】検証の狙いとしては、「こうのとりのゆりかご」のように、内密出産をめぐる様々な課題について検証を通して明らかにしていくということでしょうか。
【市長】まだ具体的なことは決まっていませんので、何とも言いようがないというのが現状です。ただ、少なくとも第三者を交えた検証の必要性があるということを市長として認識しているということは、この場でお伝えいたします。したがって、そういったことも含めてこれから担当部局、あるいは慈恵病院さんや関係機関の皆様としっかり連携をしながら検討してまいります。そして、それを評価することによって、望まない妊娠や様々な困難にある妊婦さんやお子さんの状況をより良くしていくために、どういったサポートや制度が必要なのかを考えるといった前向きな取り組みに繋がっていくと思っております。
現時点で、私たちも具体的にお示しできればいいのですが、今は内密出産の課題について、いろいろと整理している段階でもありますので、まずは運用面といいますか、ガイドラインを踏まえた運用面ではっきりさせなければいけないことがたくさんありますので、今はそちらのほうに全力を注いでいる状況だとご理解いただければと思います。
【記者】先ほどの内密出産に関連した質問に対し、「お母さんたちとできるだけお話をして、直接いろいろな選択肢を示せれば」というお答えをされましたが、これまでの7例の中で、児童相談所や市の担当部局の方が、直接相談に乗った事例というものはあるのでしょうか。
【市長】あります。
【記者】それは何例ですか。
【市長】それは個別の案件になりますので、お答えできません。しかし、行政との接触を拒まれない方(とはお話ができています)。行政に対する不信感があるということは、慈恵病院さんの発表からも、認識しておりますので、行政の人間が行くと全部暴かれるのではないかという不安感を持たれるような形での接触は控えております。したがって、その点については慈恵病院さんとしっかり連携をとって対応しているというのが現状なのですが、実際に接触していって、いろいろなアドバイスをさせていただいた事例はありますので、それはケースバイケースで今対応しているということです。
【記者】慈恵病院と内密出産に関する課題を整理していくということでしたが、スケジュールはもう決まっていますか。
【市長】今、担当部局でいろいろな調整をさせていただいていますので、例えば、情報をどのように扱うかということに関して、またどういった形で介助していくかということについても、病院でもガイドラインに基づいて、一定のルールを示す必要がありますので、そういったことを現在整理しながら、年明けぐらいには、ある程度いろいろなことができていくと思っています。
【記者】「ようこそ赤ちゃんプロジェクト」に関して伺います。今年4月から11月に既に出産した方に対する面談や振り込みなどについてはどのように対応されるのでしょうか。
【市長】そういった方へは、1月中旬頃に手続きについてのご案内と申請書を皆さんに送付させていただくことになります。この事業発表前の11月までに出産を終えられた対象の方については、順次それぞれの手続についてわかりやすくお示しをさせていただきますので、お待ちいただければと思います。
【記者】10万円まとめて振り込みなのか、面談などは既に出産を終えていてもできるものなのかといった、具体的なことを聞かせてください。
【事務局】11月でいったん区切っておりますのが、その時までに出産された方が出産後の面談として、「ようこそ赤ちゃん事業」という家庭訪問を既に実施している方が多くいらっしゃいますので、その家庭訪問をもって2回目の面談まで終了していると考えております。したがって、出産後の面談が終了されている方については、(妊娠届提出時の)5万円と(出産後の)5万円の合わせて10万円をまとめて振り込みを行う準備を現在行っております。それ以降の方々については、妊娠や出産の時期などがそれぞれ異なっていますので、個別にご案内をしていきたいと思っております。
【記者】TSMC進出に関して伺います。昨日、北区楠の市営団地旧棟跡地の売却発表がありましたが、売却の相手先は地場の企業となっていました。プロポーザル方式でどういった選定をされて、また住居の完成について、市として求めるものや期待などがあれば教えてください。
【市長】今回のプロポーザルについては、3社からのご参加がございました。これは地場企業を含めて3社ということになります。12月8日にヒアリング、それから審査を実施したということで事務方から聞いておりますが、提案の順位をそこで決定しており、そして、公共用地等評価委員会、それから市有財産審議会において、提案社より提示された価格等について審議を行い、売却相手方を決定したというプロセスです。そして、令和4年12月20日に売却価格2億7500万円で土地の売買契約締結を行ったというのが今までの流れです。
契約先については、代表法人が株式会社松濤、それから株式会社総合プラントの2社に決定をしたということで、地場の企業ということになります。
この件については、来年の7月までに望まれる住居がしっかり建設できるかどうかということが、1つ大きな期待としてあったのではないかと思います。1月以降、売却が済み登記等の手続が終われば、建設着工ということになろうかと思いますので、そこはしっかり見守りながら、来年の7月には、TSMC関連の皆さんを含めた方々の住まいがしっかり確保できるようにと(期待しています)。これは熊本県からもそういったことを求められており、今回こういった形になりましたので、契約相手方にはスムーズに確実に着工していただけるように、しっかりお願いしたいと思っています。
【記者】本プロポーザルにおいて、企画の提案の中で特に評価された点は、どういったところなのでしょうか。
【事務局】市長からお話がありましたとおり、売却の条件に、来年の7月までに建設という条件を付けておりますので、そういった短い期間の中での建設について、各社に検討していただきまして、各社の強みやノウハウを活かした提案をいただいております。
ただ、その提案の内容につきましては、今回がプロポーザル方式ということで、競争上の地位や財産権など、その他正当な権利に侵害を及ぼす恐れがあるため、お答えできかねます。
【市長】おそらく、住居を確保するための一番主要な部分というのは、確実にそれが建設されるかどうかということだと思いますので、その点に対する実現可能性が非常に高かったという部分が評価されたのではないかと私は思っています。
【記者】「ようこそ赤ちゃんプロジェクト」に関して伺います。出産に伴って、市から独自にこういった形で支援金を給付する制度の創設は今回が初めてということでしょうか。
【市長】妊娠・出産に関して支援金を給付する制度としては初めてです。産まれてきた赤ちゃんに対して、「こんにちは赤ちゃん事業」といった見守り事業のようなことは、今までも実施してきておりますが、給付を伴う形というのは初めてです。